夢の中へと
「メガイラ様。」
「は、はいっ…アルギュロス様。」
アルギュロスにメガイラと呼ばれる度に、私は返事に困ってしまう。
「少しは落ち着かれましたか?…しかし、先程から私ごときになぜ丁寧語を…?…いつもの調子はどうなされました?まさか…。やはり…先程の戦闘でどこかお身体を……」
「ち、違う。大丈夫…だから。その、少し混乱していて…ねぇ、そのメガイラ様って呼び方、辞めてくれないかな?」
私がそう言うと、アルギュロスは少し悲しそうに目を細めた。
「メガイラ様…いや、本名ネアンと言いましたよね。貴方…もしかして記憶を失ってしまったのでしょうか…?」
ネアン?このヘイロタイの名前なのだろうか。
でも、記憶を失ったと言うアルギュロスの推測には、賛同しといたほうが良いだろうか。取り敢えず、アルギュロスから今の状況を聞き出す事が先決だ。
「えっと、実はそうなんだ。僕、記憶が…曖昧で…さっきの戦いの後から、僕の身分がヘイロタイなのと、名前がネアンて事しか分からないんだ…。地形や貴方の事は何となくわかるんだけれど…。」
ネアンはアルギュロスの言葉で知ったのだが、話を合わせておく。そして『私』から『僕』へと自身の呼び方も変えた。
「ネアン…。一時的な記憶喪失でしょうか?私は医術は心得てませんから。近くの街に行くまではそのままでしょう…。」
申し訳なさそうにアルギュロスが言う。
「いや、僕こそごめん…。その、僕の状況を話しては…くれないか………な…………」
アルギュロスに説明してもらおうとした途端、私の意識が突然遠のいていく。
「ネアン…!?……どうしました?ネアン…」
咄嗟に支えてくれたアルギュロスの驚いた顔を見ながら、視界が徐々に閉じていく。急な眠気が襲った感覚だった。