プロローグ
かつて、我が国には国民的アイドルグループと呼ばれる存在がいた。そのグループはいわゆる王道。常に笑顔を絶やさず、何事にも全力で取り組む、誰しもが応援したくなるような、そんな女の子たちの集まりであった。
その絶対王者のような王道アイドルに抗うように、時代とともにアイドルのコンセプトは多様化の一途を辿った。バンド形態のアイドル、顔を全く見せないアイドル、別の職業の傍ら活動するアイドルなど、ひと昔前ではイロモノと呼ばれていたグループが、この時代では主となっている。
人気メンバーの卒業を皮切りに、独立政権から陥落した王道アイドルの首を取ったかのように、その対に存在するイロモノアイドルたちが正義だという風潮が生まれた。だが、イロモノアイドルたちは国民的アイドルにはなれずにいた。イロモノを好きになるということは、個人の好みにドンピシャで合う必要があるからである。例えるならば、王道アイドルは性癖で言えば、「綺麗系」「可愛い系」などと言えるだろう。これは、ほとんどの人に当てはまる性癖である。いや、むしろ、癖と言えるほど珍しいものではない。誰しもが、綺麗であったり、可愛いであったりを好むのはごく自然でなのである。それに対しイロモノアイドルは、「SMプレイ」「コスプレ」「熟女」などで、さらに言えば、口外してはいけないようなものまで指すこともあるだろう。もちろん、これらの性癖を好きな人は多くいるだろう。だが、決して万人受けではない。強い言葉で言ってしまえば、マイナーな好みである。イロモノアイドルたちは、自分たちのマイナーなコンセプトに合致するファンを紡いで、いち集合体として、現在のアイドル人気を支えている。それが、今、国民的アイドルを損失してからの、日本のカルチャーとなっている。
そんな時代を切り開くべく、新たに結成された王道アイドル。彼女たち自ら勝ち取ったアイドルという夢。清楚で、可憐で、お淑やかな、万人が求めるそんな偶像は、彼女たちを生かすのか、殺すのか。
「私たちー!」
「Day Dreamersです!」