封印と巨人
「ったく…ようやく見つけた人工物がこの一つだけ周りには一切何も無し、か…ようやく誰かに会えると思ったのに…」
一息ついて空を見る
空はすでにオレンジ色、日が沈みかけているし野宿決定だな
一応合掌、なんまんだぶなんまんだぶ
お化けが怖いのかって?あー怖いさ!
草原地帯に鎖で雁字搦めの石がポツンとあれば怖いに決まってる!
ここで野宿すると決めた自分に怖いのに頑張ってるね賞をあげたいくらいだ。
そもそもこの鎖で雁字搦めになった石はマジで暮石なんだろうか…?
「それにしてもなんでこんなとこに…ってうわっ!?」
ふと鎖に触れてみると鎖が光となって飛び散った
え?なになに?俺触っただけだよ?何もしてないよ!?
『緊急、緊急、緊急事態ハッセイハッセイ、第一及ビ第ニノ封印ガ破ラレマシタ、ハイジョ、ハイジョシマ、ス、空間作業員ハ直チニ避難、ヒナンヒナン』
と地面の下あたりから機械音声のような声が聞こえると石の後ろの地面が盛り上がり始める
「ちょ!?なになに!?」
『グオオォオォオオオォォオオ』
石の前の地面が盛り上がりそこからなんと俺の3倍はあろうかという巨躯の岩の巨人が唸り声を上げながら這い出ててきた。
「ちょっまっ!?えぇ!?ちょっと何もしてないっす!してないっすよ俺!?」
必死な否定も虚しく岩の巨人はこちらを見ていた。
『ハイジョ対象確認、確認、殲滅、殲滅シマス』
「あちゃあ…」
こりゃ終わったわあ、と言い終わる前に巨人の俺の体以上に太い腕を振り上げて殴り掛かってくる
これは終わったな、と記憶喪失が故に何も思い出せもしないので走馬灯すら出ない俺の人生がここで終わるのかしんみり…とか思った、その時だった。
【グハァ…反逆ノ盾】
「へ?うわっ!?」
何処からか男の声っぽいものが聞こえたその瞬間巨人の拳が俺の目の前で見えないバリアみたいなものに阻まれていた。
「な、なんだ?何がおこってんの!?」
【グワァァ……ファァァ……長い長い眠りから目が覚めたと感じれば耳元で不快に騒ぎたてる…だがどうやら吾が目覚めたのは貴様のおかげのようだなァ】
という男の声らしきものが巨人の後ろから声がする
というか先程の暮石から声がする
これって詰まる所………
「い…」
【イ…?】
「嫌アアアアアアアッ!!!オバケェエエェェエエエええ!?」
【お、オバッ!?おいフザケるなァ貴様!貴様が目覚めさせたのであろうがッ!チッ!話している暇は無い!早くもう一度吾に触れろ!死にたく無いならなァッ!】
「仏様、ゼウス様、どっかの神様になんまんだぶ、なんまんだぶ……へ?」
よく見ると巨人が見えない壁に向かって何度も何度も拳を叩きつけていた、そして見えない壁には若干のヒビが入り始めていたのである
「早くしやがれェッ!その盾はお前を追従して守る!だがもう保たんのだ!早く来いッ!」
「訳わからんけどオバケさんの言う通りにします!」
俺は立ち上がり墓石のある方へと向かう
巨人が俺に向かって振り下ろすデカイ拳は何度やっても見えない壁が立ちはだかり俺には届かない
だがその壁もヒビが全体へと走り始めガラスのように今にも壊れる寸前だ。
「ウオオオオオオッ」
俺は走った最早藁をもすがる思いとはまさにこの事だ
もう少し、もう少しで手が届く!
その時だった。
パリンっとガラスが割れたような音が響いた
その音に惹かれ後ろへと振り向いた瞬間巨人の拳が目の前まで迫っていた
【フンッ…やるじゃあねェか】
声が響いた。気の所為なのかもしれないがさっきよりクリアに聞こえた。
俺の手がいつの間にか暮石に触れていた瞬間石にヒビが入り中から赤黒い光が草原しかない世界を照らした
『グオオアアアアアアアアアアアアアアアアッ』
光受けた巨人は拳が溶け後ろへと下がっていく
俺は見ていた
石に触れた瞬間先程の鎖のようにヒビが入った石が光の粒子となって消え去ったかと思えば赤黒い光を発し巨人の腕を溶かしていった
『キケン、キケン、第三、最終封印ガ破ラレマシタ』