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片恋  作者: ゆず
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高木美弥子たかぎみやこは幼い頃から愛らしい子どもだった。

ものすごく美人という訳ではなかったけれど、その大きな目ところころと変わる表情が可愛らしい。

両親や兄はもちろん、親戚一同にも愛され可愛がられて育ってきた。


そんな美弥子が中学3年になったある日「好きな人ができたの」と、従兄弟であり実の姉のように慕っている晴香はるかに打ち明けた。

晴香は頬を染めて恥ずかしそうに俯く美弥子をぎゅっと抱きしめ、なんでも協力してあげると約束したのだ。


美弥子の片思いのお相手は大河たいがくんというらしく、その日から毎日のようにその名を聞くようになった。


中学3年の時「大河はロングヘアが好きらしい」と聞き、さらつやロングを目指してヘアケアをしてあげた。

高校1年の時「大河は大人っぽい子が好きらしい」と聞き、まだ早いと喚く兄の智哉ともやを説き伏せてメイクの練習に付き合った。

高校2年の時「大河は料理の出来る子が良いらしい」と聞き、一緒に料理の練習をして毎日弁当を作るようになった。


恋は女を輝かせる、なんて言うけれど24歳にもなって初恋もまだの晴香にはわからない。でも美弥子の成長を傍で見ていると、本当にそうなんだなと思わざるを得なかった。

それほどに美弥子はこの3年の間に努力し、可愛らしさに磨きをかけ美しくなったからだ。


これはもう大河くんが美弥子に落ちるのは時間の問題だな・・・なんて気楽に思っていた。

仕事をおえ、だるい足を引きずるように帰宅した家の前に、泣き腫らした顔をして立つ美弥子を見るまでは。





「晴ちゃんごめんね。たくさん協力してもらったけど、大河のこと追いかけるのもうやめる」





####





大河光輝たいがこうきは高校に入学当初から話題の人物だった。

新入生代表で挨拶をした、高身長で整った顔の男の子。話題にならない方がおかしい。

青山拓也あおやまたくやはたまたま同じクラスになり、席も近かったことでその話題の人物と話すようになった。


その後ずっと同じクラスで拓也は光輝とだいぶ仲良くなったつもりだったが、ここ最近の光輝はなんともいえない。



高校3年になってしばらくして、光輝が今まで接点のなかった女の子を気にしているのは気づいていた。

でも本人は隠しているようだったし、拓也もあえて追及しなかった。

夏休みに突入し、拓也は予備校、光輝はバイトとそれぞれに過ごしていた。

夏休み最終日、光輝に呼び出された拓也は思わぬ話に目を見張った。


「なに?どゆこと??」

話の内容は大方わかっていたけれど、突然のことに頭が付いてこなかった。


「だからさ、唯香(ゆいか)のこと気にしてて欲しいんだ」

なんども言わせんなと少しだるそうに答える光輝を、拓也思わず口を開けたまま凝視した。



光輝の話はこうだった。

同じ学年だが存在すら知らなかった高野唯香を、あるきっかけで意識するようになり、この夏休みに距離を詰め付き合うことになった。

夏休み中はよかったが、新学期が始まり2人の関係が知れ渡ると自分に今まで纏わり付いてきていた派手な女子たちが、唯香に何かしてくるかもしれない。

自分も唯香を守るようにするが、拓也にもなるべく唯香を気にして馬鹿な女が変なことをしているようなら教えて欲しい。


今まで光輝の女性関係はお世辞にもいいとは言えなかったし、光輝が懸念しているような事態も確かに起こりかねない。

だがしかし、今までその纏わり付かれる状況を甘んじて受け入れてた割にはなかなかの言い様だと思ったのも事実だ。

なんだかなぁ〜という拓也の思いが大きなため息となって口をついたが、それでも友人からの頼みごとには出来るだけ力になると約束したのだ。



新学期が始まり一週間。

光輝と唯香の仲は全校生徒の知るところとなった。

夏休み明け初日、2人が仲良く一緒に登校してきたことであっという間に広がったのだ。

今のところ唯香が嫌がらせにあっているような気配はなく、平穏な日々が過ぎてきた。



なのに、なぜか、光輝の様子がおかしい。



今度は一体なんなんだと、拓也は不機嫌そうな光輝を見ながら頭を抱えた。


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