幼馴染み(?)
――運命は狂った。人生が変わった。見るもの全てが違って見えた。だが、そんなときまでもヤツら動いていた――。
《新たな登場人物》
・山内浩二
研二、千夏の幼馴染み。誰にでも優しく紳士的な性格。同じクラスの柊美雪と付き合っている。
・柊美雪
千夏の親友。山内と付き合っている。
・原田司
研二、浩二のクラスメート。
・尾暮説司
体育の教諭。授業に遅れることに異様な怒りをあらわにする。マジギレするととてつもなく怖く、悪くない子まで泣き出す。
いよいよ、第二章です!
第二章の始まりは、、、
翌日、テレビのニュースでは竜東会のヤクザ3名が何者かによって殺されたことが報じられていた。敵対勢力との抗争によるものと言われていた。
最上は学校に復帰に出来るそうだ。どうやら、最上のバイト先では、ヤクザがモデルガンと共に拳銃を扱っていたらしい。このことが公になるのを恐れたヤクザが、最上に高給と引き換えに学校に行かないよう、強要した。それが最上の不登校の理由だった。
(まあ、何はともあれ最上は無事だったし、よかったな)
例の贅沢な朝食を口にしながら研二は思った。チラッと父の方を見る。ボルサリーノもにこやかな表情でニュースを見ていた。
△▼△▼△▼
朝8:30分、城ヶ崎高校に授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。研二は窓側後ろから2番目の席に座っていた。机とにらめっこをしながら……。1限は数学。熱血教師の声が響く中、研二は一回も目を覚ますことなく、机に伏せたままだった。なかなかのものである。2限は世界史。これはゆっくりとしたしゃべり方をした、年老いた老教師の子守唄のような声……。クラスの3分の2は夢の国へ……。そうして3限の政治・経済の授業も過ぎていった。若い女の先生の授業。起きている人と、寝ている生徒は一対一くらいだろうか。3限が、終わったときだった。
「研二~、起きなさいよぉ~」
耳元で大きな声が響いた。続けて首筋にチョップが飛ぶ。はっと我にかえる研二。
「ちょっ、千夏てめぇー、人がせっかくいい眠りをしてるってのに!」
「はぁ~? 何いってんの? アンタそのまま寝てたら次の体育、遅れてるわよ!」
(た、体育だと……!)
時計に目をやる研二。その長針は、4限の授業開始5分前を差していた。
(はっ! マジかよ……もう3限終わってる……)
「ほら、見なさい。バカ研二っ!」
「あぁん? バカとは何だよ、てめぇー!」
「あら、か弱い女の子にそんな口の聞き方して。否定するなら、あなたのテストの点数大声で叫んであげてもいいわよぉ?」
「うっ…」
千夏の方が一枚上手だった。もはや、研二に反撃の余地はない。
(ちくしょー! つくづくムカつく! でも、か弱いってのは絶対違うッ!!)
「まぁまぁ」
間に入ったのは山内浩二だった。研二や千夏の幼馴染みだ。
「研二、千夏の言うとおり急がないとヤバイよ」
研二は辺りを見回した。浩二を含め、すでにクラスの全員は着替えを済ましていた。研二を除いて……。
(やっべぇ!)
横でケラケラ笑う千夏……。怒りを必死に押さえながらも研二は慌てて着替えた。すでに移動している人もいた。結果、ただ一人授業に遅れ、体育の鬼教師の説教をたっぷり受けるのだった。
△▼△▼△▼
授業が終わった後だった。額の汗を手でぬぐいながら運動場を後にする。
「そ~いや、研二ってさ、須堂さんと幼馴染みだよな?」
クラスメートの原田が聞いてきた。
「ん? まあな」
「研二は、須堂さんのことどう思う?」
「は? どうって? ただのうるさい暴力女だけど?」
(実際そうだしな……)
横で笑う浩二。どうやら、浩二にも心当たりがあるらしい……。
「え? でも俺は結構可愛いと思うけどな」
原田の意外な発言。
「いやぁ~、ないない」
すかさず否定する研二と浩二。
「でも、けっこー性格いいじゃん。それに胸デカいし」
「そんなこともねぇよ」
研二はそう返事した。
(そう、ヤツはただの幼馴染み……)
研二はそう自分に言い聞かせていた。
一方こちらは千夏たち女子の群れ。同じように授業を終え、戻る途中だった。
「そういえばさ、千夏って気になる人とかいるの?」
声を掛けたのは柊美雪。千夏の親友で、実は浩二の彼女。
「え~? 別にいないよ。なんで?」
少し首をかしげて千夏は答えた。
「いや、だってさ、千夏ほど可愛い子が彼氏いないっておかしいなって思って。優しいし、明るいし……」
「そんなことないわよ~」
笑って否定する千夏。
「あ、もしかして山下君のことが気になってるとかぁ?」
いたずらっぽく尋ねる美雪。
「はぁ? え、何でアイツが? チョー馬鹿だし、カッコ悪いし、ダサいし……」
光速並の速さで否定する千夏。
「ふ~ん、そうなんだ~」
美雪は少し残念そうに答える。
「そっ。アイツはあたしにとって幼馴染み意外の何でもないわ。あ、それかペットかしら?」
大きな声で笑う二人。
(そう。アイツは幼馴染み。それ意外の何でもないわよね)
千夏は自分にそう言い聞かせた。
研二は残りの授業も同じように過ごした。放課後、バイトもないので家に帰ろうとしたとき、ふと考えた。
(俺は、父と共に犯罪組織と闘うことになった。しかし、誰かをこのことに巻き込むことはないのか……。いや、そんなことはないよな。このことを知ってるのは俺と親父だけだもんな)
衝撃の事実、父の懇願……。次々と突きつけられた研二には、まだ心の中で整理しきれないものがあった。そんなことを考えているうちに、家に着いた。
「ただいま~」
「ああ、おかえり研二。待ってたよ」
父ボルサリーノがそっと声を掛けた。肩にかけたカバンを床に下ろす。しかし、その直後、父ボルサリーノは思わぬことを口にした。
「研二、イタリアに行くぞ」
最後、いきなり話が出ました。次回からは一人、ファミリーの幹部が出てきますよ!
お楽しみに!