頼み
すいません、今後はスペースの関係で新しい登場人物のみを載せることにします。
・デリート・ロイエルティー:チャールズ・J・ボルサリーノのボディーガード。表向きは秘書。
皮張りのシートはどこか落ち着かなかった。それは研二が高級車のシートに座り慣れていないのもそうだが、それ以上についさっきの一連の出来事が研二をまだ落ち着かせなかった。研二はベンツの後部座席に座っていた。隣にはまだ震える最上が、助手席には父アルバート・カルヴァン――いや、チャールズ・J・ボルサリーノが座っていた。車を運転しているのはまだ三十にはなってはいないだろう、若い男だった。
「ボス、ご無事で何よりでした」
「ありがとう、ロイ」
どうやら、ロイと言うのが男の名前らしい。趣味のよいツヤのある縞のスーツを着こなし、黒のサングラスをかけていた。
ベンツが商店街の角につくと、
「すまない、最上君だったかな。この辺で下りていただいてもよろしいだろうか?」
運転手が呟いた。
「あっ。はっ、はい……」
そう返事して、最上は慌てて車から下りようとした。
バタン、とドアを開け、最上が何か言おうとしようとすると、
「いいか、今回の件は誰にも言うなよ。君は犯罪に加担するところだった。我々のことは決して誰にも言わないように。さもなければ、また命を狙われるよ。いいね?」
「はっ、はい……」
運転手が念を押す。最上は返事をすると、車から下りた。研二も車から下りようとすると、
「すまん、研二。少しドライブに付き合ってくれ」
ボルサリーノの声が研二を止めた。
「う、うん……」
研二がそう答えると、ベンツはまたゆっくりと走り出した。
しばらくは沈黙が続いた。ベンツは少し込み合った、車道を走っていた。窓ガラスに映る街灯やら、車のヘッドライトやらは、やけにチカチカしているように研二の目には映った。研二の心臓は高鳴ったままだった。
「研二、気分はどうだ?」
助手席からの声が沈黙を破った。
「あなたは……、一体……?」
質問の答えになっていない答えだった。見たものが信じられなかった。本物の拳銃、突如現れた父親がマフィアのボス…。それも、アメリカを牛耳る組織だったなんて…。
「説明して下さい! そもそも、あなたは何者なんですか?てか、突然現れた外国人が父親なんて。しかも、それがマフィアだなんて信じられないし。本当のことを話してくださいよ!」
研二の言葉は強かった。その声は車の中一杯に広がる。
(……俺は一体、何を見たって言うんだ。メールを貰ってビルに行った。ビルには危なそうな男がいた。隠れていた最上を見つけたけど、男の気迫に圧倒されて姿を現した……)
「あっ!俺の自転車……」
ふと、研二は声に出してしまった。
(やべっ、そのまんま置いてきちまった……)
「あ、それなら心配することはないですよ。すでに、部下がご自宅まで届けましたよ」
運転手が答えた。
「部下?」
「はい。あ、これは失礼。自己紹介がまだでしたね。私、デリート・ロイエルティーと申します。ロイで結構です。ボルサリーノ・ファミリーの一員で、日本でのご父上の秘書兼ボディーガードをつとめせてもらってます。どうぞ、よろしくお願いします」
運転手は言った。研二はその流暢な日本語に圧倒される。
「ロイは先に日本に来ててね。秘書ってのは表向きの身分でのだよ」
ボルサリーノが付け加えた。
「研二。お前の質問に答えよう」
ボルサリーノは静かに言った。息を飲む研二。そして、、、
「俺はチャールズ・J・ボルサリーノ。表向きでは、イタリアン・レストランを展開するアルバート・カルヴァンだ。だが、その正体はアメリカの暗黒街を取り仕切る、マフィアの首領ってわけだ」
(嘘だろ……)
研二は思った。人生でこれほどにまで驚いたことがあったのだろうか?
(突然現れた父親がマフィアの首領……)
危うく気絶しそうになった。しかし、そんな研二の動揺は首領の一言で掻き消された。
「研二、お前に頼みがある。そのために俺はアメリカに仲間を残し、異国の地へと来た」
そのときのボルサリーノの声は、先ほどとは全く別物だった。どこか落ち着きのある声には、強い思いが感じられた。
ロイエルティーって序章でボルサリーノが言ってたロイのことって分かりましたよね?にしても、ボルサリーノ、何を頼むのでしょうかね……?
も、もちろん私は知ってますよっ!(ていうか、知ってないとおかしいですよねww)次回はアイツらのやってることが少し分かるかも……?
そしてそして、えっ?もう?ってなると思うんですけど、第1章完結です!少し間空いてからの更新になるかもですが、どうぞ、お楽しみに!v(^o^)