break.
食堂にはすでに着替えを済ましてネクタイを締め、ベストを着たボルサリーノがいた。コーヒーを飲みながら片手に持った新聞を見ていた。その後ろにはナターリアが立っていた。
「ボス、例のハワイの件どうなさるおつもりですか?」
唐突にナターリアが尋ねる。ハワイ……それはボルサリーノの支配の及ばない地だった。観光業が主なその地はBREAKと名乗るギャング組織が牛耳っていた。度々、全国委員会の話題としても取り上げられ、問題視されていた。アメリカの裏社会は全国委員会によって統一されている。それは、しのぎを削り抗争に明け暮れるのではなく、皆で手を取り合ってビジネスを成功させていくためだった。
「向こうのボスと来週にでも協議する手筈になっている。話がどう転ぶかは分からないが、一戦を交えるつもりはないさ」
ボルサリーノは淡々と答えた。だが、この協定には1つだけボルサリーノを不安にさせる事項があった。それは、、、
「ただ、研二を交渉相手にするように向こうが指示してきた。妙なものだ、研二のことはファミリーでも一部の人間しか知らないはずなのに」
「ということはあの組織の関与が……?」
「その可能性も考えられる。ファミリー内の裏切りということは考えられないしな。なあに、心配することはない。念のため、ロイとレッジを同伴させる。それと一応狙撃班、戦闘要員も近くに待機させるさ。最も戦闘員100人よりもあの二人の方が手強いだろうけどな」
その時、着替えを済ました研二がやって来た。
「ああ来たか、研二。おはよう、では朝食にしよう」
△▼△▼△▼
研二は椅子に腰を下ろした。ボルサリーノの後ろに執事とナターリア、研二の後ろにロイとレッジが立っている。今、この二人の他に座っている人はいない。テーブルを挟んでボルサリーノと向かい合ったが、その距離は心なしか遠く思えた。
しばらくすると、メイドが朝食を運んできた。白い大きな皿の上にはブルベリーやラズベリーなどのフルーツ、緩く泡立てられた生クリームが盛り付けられている。そして、黄金に輝くシロップと濃厚なキャメルソースを纏ったそれはこんがりと焼き色を見せていた。
「パ、パンケーキ!!!」
研二の歓喜の声が響いた。そう、その正体は研二の大好物パンケーキだった!パンケーキが机の上におかれるや否や、すかさず研二のナイフとフォークが動く。
「……まさかこれほどに喜んでくれるとはな」
ボルサリーノは研二の食べっぷりに圧倒されていた。
「研二、実はちとお前に頼みたいことがある。一週間後、ハワイに飛んでくれないか?」
研二の手が止まった。




