男子高校生、研二の日常
・パトリック・ベレー:ボルサリーノの無二の友人にしてファミリーのコンシェリエーレ(相談役)。専門は株式投資、経理、人材斡旋など。表向きはトスカーナ・リゴレットの副社長。
朝、母の用意するトーストとマーガリンの朝食を研二は食べた。豪華な朝食もよいが、これはこれで懐かしかった。朝食を終え、学校に行くとそこには最上がいた。
「おっ! 最上~。来れたんだな。よかったよかった」
「おう! おはよう、山下。お陰でな。お父さんにも、お前にも感謝してるよ。本当にありがとうな!」
そう言うと、最上は研二の耳元で囁いた。
「もちろん、他の人にお父さんのことは言わないからな」
それを聞いて少し安心する研二。
(ここは、血とも麻薬とも無縁の場所…。ただし、千夏の暴力とは隣り合わせだが。)
そんなことを考えたときだった。
「研二~、おっはよ~!」
そこには千夏の姿があった。と、同時に研二の腹にパンチが飛んだ。
「ぐほっ!」
腹を押さえてしゃがみこむ研二。
「相変わらずKO楽勝ね…。あれ?最上くん…? えっ、ウソっ! 来れたの!?」
話題は最上に変わった。大勢の群れが最上のもとへ駆け寄った。その場にしゃがみこんだ研二を残して。
△▼△▼△▼
その頃、ボルサリーノは車の中にいた。すでに夜中になっている。真っ黒な闇の中、ロールス・ロイスはラス・ベガスを目指していた。
「パトリック、俺の留守中は問題なかったか?」
パトリック・ベレー。ボルサリーノ・ファミリーのNo.2にして、ボルサリーノの無二の友人。組織の経理と資金運営、人材斡旋等を行っている。株式投資の天才で、組織の金を増やしこそするも、減らすことは今まだに一度足りどもなかった。
「ああ。チャーリー、特に何もないぜ。息子さんとはどうだった?久々の再会なんだろ?」
「大分打ち解けたかな……。一緒に旅行に行ったり、朝食を作ってやったり。あと、フェラーリに乗せて飛ばしたりもしたな」
「あれ? セルジオの助手席には女しか乗せなかったんじゃなかったのか?」
相手の頬をつねるボルサリーノ。その後、二人は笑った。
「そういえば、イタリアで厄介なことがあった。カルロス・サーメンデスは知ってるな?」
「ああ。シチリアン・マフィア最大派閥、《グラティムル・ファミリー》の首領にして、五大ファミリー《シチリア同盟団》の議長だ。ヤツとの同盟は失敗したのか?」
「ヤツが殺られた。それと、五大ファミリーのドンたちも」
「何っ! そんなことが……。モニカは無事なのか?」
「今、ホテル・カペーロの一室に匿っている。それより、問題は犯人だ」
「ヤツらか?」
「ああ。恐らくな。ヤツらはこれでイタリアを手に入れた」
「これから、どうするつもりだ?」
「まずは、アメリカの暗黒街の代表を集めて、委員会に承認を求める。その上で、世界裏社会連合会を招集するかな」
ボルサリーノは胸ポケットからシガレットケースを取り出した。蓋を開けて葉巻を取り出すと、スラックスのポケットから取り出したシガーカッターで葉巻の上部を切り落とした。吸おうと、口に加えたまま、ライターを探してポケットの中を手探りで探す。火を探すボルサリーノにパトリックはすぐさまガスライターを取りだし、火をつけた。葉巻を口にくわえたまま、ボルサリーノはありがとうと一言礼を言った。芳醇な香りは心を落ち着かせた。何せ硝煙の中を生きている人間だ、鼻につく匂いは忘れにくい。
「そういや、パトリック、モニカと俺らが離ればなれになってらか何年くらいたつかねぇ?」
「もう、10年は会ってなかったんじゃないか。ほら、モニカの結婚式に行っただろ」
「ああ。そして、その一ヶ月後に新郎は死んだ。モニカのヤツも本当にかわいそうだ……」
「でもアイツ、色んなこと乗り越えて、いい女になったよな?」
「否定はしない。にしても、あの頃が懐かしいな」
「そうだね、チャーリー。20年といえども、早いものだな」
二人は帰ることのない、懐かしき日々の思い出に浸った。決して色あせることのない日々に。
そうこうしていると、車はホテル入り口の前で止まった。ネクタイを直し、ボルサリーノ帽を斜めにかぶり直すと、ボルサリーノは言った。
「行くぜ、相棒っ!」
「おうっ!」
車のドアが開けられた。二人の男はゆっくりと車から下りると、ジャケットをバサッと羽織直した。そして、二人の男は会場へと急いだ。
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さてさて、少しずつ明らかになるボルサリーノ・ファミリー…。2章ではほぼ全員登場させる予定です!会合でボルサリーノは何を?そして、次回、研二に危機が…!?お楽しみに!