パラレルワールド 5進
俺は地面に転がっていた。
…ここはどこだろう…
俺は目を開けずにそう心の中で思っていた。そして何が自分の身に起きたのか思い出していた。
…俺は落ちたのか…
…俺は…死んだのか…
…だが俺は死後の世界なんて信じてないからな…
…だったら俺は…
「…生きてる!」
横でそう聞こえた。
「あっ、おい!喜永!俺たち生きてるみたいだぞ!」
「あぁ…俺もお前のその声で気がついたよ。」
俺は転がったままで、ふぬけた、どこか安心したように言った。
「しかしここはどこなんだろうな。さっきいた森の中にはかわりなさそうだけど…」
漆がそう言う前に俺はここがどこだか気づいていた。
俺は起き上がり、視線と同時にある方向を指差した。
「おお…?あれは確か…」
俺が指差した方には深い地面の割れ目があった。そう、俺たちが今いるのは、俺たちが落ちたはずの深い割れ目のすぐ近くなのだ。
漆は数秒考えたあと、納得と疑問を言い出した。
「なぁ喜永…俺たちはあの割れ目に落ちたんだよなぁ…。」
「ああそうだ。俺たちはあの割れ目に確かに落ちた。だがここは地面の底でもなければ死後の世界でもない。俺たちは地上にいる。」
「…それ普通に考えておかしいじゃねーか!だって俺たちはそこから落ちたんだろう?じゃあなんで俺たちは地上にいるんだよ!」
かなり焦ったように漆が話している。まあ焦るのは当たり前だ。通常こんなことはありえない。しかし俺は無理やり漆を納得させるために、漆の言っていることを無視するように、俺は言った。
「…いいか漆、いくら信じれなくとも、あり得なくとも、おかしくとも、目の前に起きた事が現実で、すべてなんたよ。」
「はぁ?お前俺の言ったことは信じてくれないのに、目の前で起こったあり得ないことは信じるのかよ…」
「俺はな、人から聞いた話は一切信じないが、自分で見たものは絶対に信じるんだよ。俺は…そんなやつだ。」
少し漆は黙りこんだ。いろいろなことを、頭で整理しているんだろう。
そして漆は強気に話し始めた。
「いいぜ喜永!お前がその気なら俺はぜってーお前に俺が見た搭を見せて信じさせてやる!俺はお前のそういうところが好きでお前についていってんだ!だから早くいこうぜ!覚悟しとけよ!」
「搭を見ることだけに覚悟なんていらないな。俺はただお前の言っていることを信じてないだけだよ。いいさ、俺にその搭ってやつをみせてみろよ。」
よくよく見渡すと、ここは地上というだけでなく、割れ目を越えていたようだ。だけど俺たちはそんなことは気にせずに、先へ進み始めたのだった。




