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パラレルワールド4 消
「…くそぉ…!」
漆が小さくそうつぶやいたのを、俺はかすかな意識の中で聞いた。時間的にいうと、一瞬のことだったのだろうけど、俺はその短い一言が長く、重く聞こえた。
漆が何を考えようと、俺が何を考えようと、俺たちが落下していくのには変わりはない。
もう死ぬのかとか、俺の人生はここまでだとか、たぶんいろいろ考えていたけど、落下していくスピードが上がるごとに、その考えは消えていった。
俺は消えかけた意識が完全に消えるのを待たずに目を閉じた。
そうして俺と漆は、深い底に消え始めていた。




