誰もいないない始まり+0
嫌いだった。何もかも、それはあの時の記憶から。
何かが私にいがみつく。那波姉様にひがみついて、私をイラ出せた。
何もかもが不快に見えた。何もかもが、私は避けた。
姉様、どうしてあんな嘘をついたの。みんな、みんな、苦しんでいるんだよ。
那波姉様……
幾多か同じ風景を見たかわからない。
地表が悪いか、何度か車体がバウンドする。運転する気になれば酔うことはないが、乗客の身分であれば、これは変わることはない。
遠くの風景が一点から、さびれた山がこちらから視点が変わるだけだ。
山頂からは朽木がいくつか寂しく生えている。その先の枝には、何羽かの烏が自分のテリトリーを守っている。
その一羽が、私をにらんだかのように思わず、背中に何かが泡立つようになった。
殺されたかのような風景を眺めるのはやめた。もう見つめるのは、私以外いない古きたったバスの車内。
あれからいくら時間が過ぎたかはわからない。
ただ、外の明るさが比例しているのかのようなのか、車内がひどく明るさが見当たらない。
一定の周期で振幅する薄汚れた手すり。
どこも、布面には黒くしみのようなものが張り付いていた。
今の空間床を向いていても、理不尽なところしかない。
まるでこの前までの私の生活のようだった。
いや、それよりましかもしれない。
両親の借金を背負い生き延びた自分がひどくばかばかしく感じさせたことはない。
到着までひと眠りするか。目を瞑るしか自分の面で助かることはない。
あれは、いつだったか、私の事務所に急な連絡だった。
ふだん私宛の連絡など、スパムか、請求書ぐらいの無機質な書類しか来なかった。
だが、その手紙だけは違う。封筒には少し古史の香りがする何か懐かしいようなものだった。
一般的な手紙は、百円程度の封筒に手紙を入れるのであるが、そんな現代的な方法ではない古紙を使っていた。
この香り、古い屋敷の匂いがした。
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