琴美 〜悪魔のクロワッサン編〜
ほのぼの読んで欲しいです。
良かったら、感想をお願いします( ;´Д`)
私には不思議な友達がいる。
琴美という名前で、少し考え方が普通の人と違っていた。いわゆる電波ちゃんというやつだ。
ある日学校が終わって、琴美の家に遊びにいった時の事だ。
「ねー、あかり。お腹すいてない?」
面白いものがないかと、琴美の机を物色していた私に向かって、背中に何かを隠しながら琴美が言ってきた。
こいつ絶対なにかあるなと思い、私はあえて
「いや、すいてないよ。大丈夫」と、言った。
まさかの返事に琴美は、隠していた物を私に見せながら
「いや、でもあれじゃん。食べよ」
と言ってそれを床にお皿ごと置いた。クロワッサンだった。
「これ、クロワッサンよね?何故、隠しながらきた?」
「いやいや、あかり殿これは普通のクロワッサンではないんですよ。なんと!悪魔のクロワッサンなのです!」
「悪魔のクロワッサン?」
「そうなのです、お皿のうえにクロワッサンが二つありますね?そのどちらから一方は、悪魔の呪いが練りこまれたクロワッサンなのです!」
琴美は誇らしげに喋った。いやいや、見た感じ普通のクロワッサンだよ?なにその呪いって?などと、いろいろな疑問が浮かび続けている私に向かって、満面の笑みを発している。
「さっ、食べよ!選択権はあかりにあげるから」
「ちょっと琴美、その悪魔のクロワッサンって食べて大丈夫なの?」
「さぁ?」琴美は怪しげな顔をした。口のはしを釣り上げ、上目遣いで私を見てくる。魔女気取りかこいつ。
「あんたこれどこで買ったの?」
「さぁねー?ウッヒッヒッ」ちくしょー、完全に楽しんでいる。
まあ所詮は、そこら辺で買ってきた物を悪魔のクロワッサンとか言って、ビビらせようって根端なんだろうからな。
私は逆に琴美を驚かせてやろうと思い、光の速さで右手をのばし、向かって右側のクロワッサンを掴み、頬張った。
「ほうよ!わにがはふまのふおわっはんよ!」私は琴美に言い放った!
一応、通訳を書いとくわ。
どうよ!なにが悪魔のクロワッサンよ!
って言ったのよ?わかったわよね?
琴美を見ると、目を見開き驚いていた。ビビることなく食べた私の勝ちね!
クロワッサンをなんとか飲み込み私は言った。
「驚いたでしょう?私はやればできる子なのよ!」私はスカートの裾を掴みながら、TVで見たどっかの民族ダンスを披露した。大概、適当だったが。
しかし、私の華麗なダンスを見ても琴美の表情が変わる事はなかった。
というか、身動き一つしていない、まばたきさえ、いや!呼吸もしてないじゃん!
「琴美?どうしたの!?」どんなに揺すっても琴美は動かない。石のように固まっていた。
「ど、どうしよう。」
その時、琴美の左手に何か紙が握られているのが見えた。何かと思い取って広げてみた。
手紙だった。
(あかりへ、あかりがこの手紙を読んでいるという事は、おそらく、あかりが私の言葉を最後まで聞かずに、卑しく悪魔のクロワッサンを頬張り、私が石化してしまったのでしょうね。まったく、でもそんな所も好きですよ。
あ、そうだ。このクロワッサンはね、悪魔の呪いのかかったクロワッサンで、二人の人間が向かい合って座ったら悪魔のゲームが始まるの。先に食べた方が勝ちってルール。本当はあかりを騙してビビってるすきに、私がクロワッサンを食べて、石化したあかりにあんなことやこんなことをする予定だったんだけど。まったく、なんて卑しい子!復活したらお仕置きね!
そして、肝心の復活方法だけど、簡単よ。クロワッサンを作ればいいの。クロワッサンを作ったら、悪魔がでてくると思うから、詳しくは悪魔に聞いといて。でわでわ)
いやいや!もう、ツッコミ所が多すぎるよ!しかも、肝心の復活方法の文が一番少ないって!悪魔と初対面でフレンドリーにはいけないよ。
「はぁ、クロワッサン作ったことないしー、材料もわかんな・・ん?手紙の裏なんか書いてある。えーと、ベッドの下を見るが良い??なんだ、なんだ?」
私はベッドの下を覗いた。スーパーの袋がくしゃくしゃっと、押し込んであった。取り出して中を確認してみると、小麦粉とかいろいろパンの材料らしきものが入っていた。それと、一冊の本も。
「えっと、おいしいパンの作り方・・って!準備よすぎだ!」
まったく、琴美にはやられたぜ。まさか、こうも私の行動が読まれているとは、でも作るのめんどくさいな。帰っちゃおかな。
とかなんとか思いつつ、やっぱり友達だからな。クロワッサン作りましたよ。人の家のキッチンで、琴美の両親居なかったからいいものの。約六時間かかったよ。始めてだしいいよね!琴美は発酵のこと絶対考えてなかったな。確実に。
そして琴美の部屋に戻った私は、お皿の上にクロワッサンを置いた。
「いよいよ悪魔とご対面か。緊張するな、殺されないよね?」
その時、天井からぬるりと、足が生えてきた。おしゃれなブーツを履いている。
「えっ!?なになに!?悪魔!?」
戸惑っている私に向かって、足だけの悪魔は言った。
「貴様の作ったクロワッサンが下手くそだから、足しか呼び出せなかった。」
「なっ!ちょっと!?どうしたらいいのよ!?」
「やりなおして」
「えっ」
「作り直し。きれいにできなきゃ、おれ完璧に復活できないから」
「ちょっ、まぢ?」
「うん、時間は止めといてあげるから、ゆっくり焦らず作って、いい?」
「・・・はい」
それからどのくらい経ったかはわからない。たくさんのクロワッサンを作った。もう、訳がわからなくなっていた。私はクロワッサン屋さんなのだろうか?悪魔もちょっとずつ姿を現してはいるが、レザージャケットを着ている。あとは首から上だけだが、本当に悪魔なのだろうか。
疑った私は、頭だけ天井に埋まった状態の悪魔の腹にパンチしてみた。
「呪うぞ」って言われたから、またクロワッサン作りに励んだ。
そうしてようやく、悪魔の全身が現れた。もうなんていうか、すごいイケメンだった。惚れたわ。ガチで。
カッコよすぎたから、勢いで抱きついたよ。そしたらまた、「呪うぞ」って言われた。
「で!話を戻すわ!琴美を元に戻しなさい!」
私は今までの事はなかったように、言い放った。
「そいつなら、私が完璧に現れた時点で呪いは解けているぞ?じゃあ、おれは次の仕事あるから、クロワッサン返してもらうね」
そういうと悪魔はクロワッサンを持って、天井に消えて行った。
琴美を見た。
顔を真っ赤にして、笑いを堪えている。
私は琴美に言った。
「呪うぞ」