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全星空の大戦争  作者: 54
九章 こんな休日どうでしょう
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45、こんな休日どうでしょう《月面調査編》

 軍師が最近忙しいような気もします。たまには休みを与えたく……はなりませんね。

 宇宙ほど広いものはないだろう。そう私が言った時、プルートは言った。


「無の空間の方が広いんじゃねえか?」


「……無の空間は存在していることになっていないと思うんだが」


 無い物はないんだと思うが。だがそれにしても、宇宙ほど寒い場所はないだろう。宇宙空間は負の塊のようなものだ。暗く、寒く、果てしなく広いものだ。月面から見える宇宙など、ほんの一部でしかないのだ。いや、0.1部くらいか。


「おいおい、このクレーターの中に基地でも作らないか?」


「そんなことしたら基地が崩れるって!」


 私たちは今、まあ言うまでもないが、月にいる。何の用があるのかと問われれば、答えるのは簡単なのでやはり簡単に済ませておくが、今後戦地になるかもしれない月面の調査だ。少しでも地の利を得ておくことが、勝利への近道になるからな。見知らぬクレーターとか海とかがあって、以前の八等級総統ではないが、道(があるのかどうか解らんが)に迷ってしまっては困る。


「じゃあどこに基地作るんだよ」


「基地を作る前提で話を進めるな!」


 勿論、私たちは月面に砦を築くために来たわけではない。あくまでも土地の調査をしに来ただけである。確かに基地があれば計略も立てやすくなるが、資金も少ないことだし、というか月に来るだけで燃料費とかその他諸々で金掛かってるってのに、こんなところに基地を作れるか! ここに来て仕事する業者の気持ちも考えろよもう。まあ、そのへんは全部プルートがやってくれれば大丈夫なんだけど。


「そんなに拠点を作りたいならまずは資金源を探して来いよ」


「最近は金の入りが少ないよな。俺の発明品も売れなくなってきてるし」


「貴様の発明品はいつになっても売れん!!」


 最近どころの話じゃないし。全く何考えてんだコイツは。


「毀軍の最強部隊が来ても困るしなあ」


「だから早く済ませようって言ってるんだよ、この月面調査を!」


 普通の人間だったら半分で何十年も掛かりそうだが、心配は要らない。プルートの発明した偵察マシンと併用することで、所要時間が50分の1くらいに縮まる。それを大量生産してもらったおかげで、今日中には終わりそうだ。何て凄まじい。だがその代わり、軍資金の半分ほどが持って行かれたが。その内食うものがなくなりそうだ。


「……あ、悪ぃ。偵察マシンが電池切れで全滅だ」


「電池式かい!」


 バッテリー式だったとしてもその内止まるんだろうけど、もう少し長くもたせてくれよ。LEDなんか物凄く長持ちするんだからさあ。それに偵察部隊の気持ちも考えろよ!!


「くそ、あの短命野郎ども使えねえなあ」


 使えないのは貴様のほうだ、とは言わなかったものの、表情に出てしまいそうなのでそれ以上は何も考えないことにした。この世界、深く追求したら負けだぞ。気にしたら敗北だぞ。


「こんなんじゃ俺の使ってる目覚まし時計よりも短命だぞ。一生懸命作った俺の頑張りに見合う働きをしろよ!」


「それなら働きに見合う頑張りを見せろよ!」


 偵察マシンは全滅したものの、既に九割五分ほどは済ませたため、あと少し歩けば調査終了だろう。よほど危険な場所がなければ、だが。


「なあシリウス」


「なんだ天才バカ


「俺、今度難民を救う仕事をしたいんだが」


「貴様にしてはまともな仕事だな」


 正直、驚いた。


「ああ。俺の発明品をな、売りさばくんだよ」


「結局金のことしか考えてないじゃんか!」


 そう言っている自分でも金のことしか考えてないけどね。でもだからって金のない人から金を巻き上げようったって無理に決まっている。ないものはないんだ。なら今私が貴様に「偵察マシンを作れ」と言ったら、材料のないこの状態で偵察マシンを作れるか? それと同じだよ。


「やっぱり金って大事だな♪」


 そりゃ大事だけど。人の命とどっちが大事なんだよって話だ。戦争してる私が言えることじゃないが。


 しばらく月面を歩いていくと、なにやらSF風の建物が見えた。どう見たって住宅ではないが、スペースコロニー内の住宅と言われれば納得できるかもしれない。ってそんなわけあるかい! 規模も入り口のドアの様子も建っている場所も、どれも基地としか思えないほどだ。月面調査に来て良かったと思った瞬間だった。こんなあからさまに危険そうな建物が建ってたら誰だって驚くだろ。人工衛星が撃ち落とされてもおかしくないからな。早めに駆除しておこう。蜂の巣みたいに。


「間違いない。毀軍の基地だ。紋章が刻み込まれている」


 毀軍の紋章は、円の中に×という単純なものだ。電気図記号の電球や蛍光管を見ていただけると解りやすい。なぜそうなったのかは解らないが、噂で聞いたことがある。何でもこの紋章、二十四時間おきに光り出すらしいのだ。しかも使われているのはLEDらしい。電球の記号を使うなら光らせるのも電球にしろよ、と言いたくなってしまう。が、どれもただの噂に過ぎないので、真偽の確かめようもないが。今は確かめようがあるけど。だが別に確かめようとは思わない。そこまで興味ない。


「いずれにしろ、悪い芽は摘んでおくに限るな」


「ああ」


 と言いながら私たちは地球へ帰った。それはどういうわけかと言うと、まあその内解る。


 私は早速、雄山の麓に兵士達を集め、月へ送り出した。待っていればその内帰ってくるだろう。


 この一日だけで多額の金を失ったような気がするが、何とかして取り返そう。毀軍の動きもまだ見えないしな。確実な方法で資金を貯めていこう。


「おーいシリウス! ボロ基地が倒壊したんだ! 今すぐ来てくれ!!」


「設計くらいちゃんとやれぇぇぇ!!!」


 こんな調子で私が生きる気力を失わないのは、毀軍討伐という目標のおかげかも知れない。

 基地の話はまた今度。

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