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全星空の大戦争  作者: 54
九章 こんな休日どうでしょう
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44、こんな休日どうでしょう《長電話編》

「だから、それしか報酬ないんだったら契約しない方がこっちには得になるんだよ」


 軍師が呆れたような声で受話器の向こう側の人物に話す。


「それではもう少し多めにして、二億三十円くらいでどうでしょう」


「さっきと三十しか変わってないし!」


 さて、状況を説明しよう。現在、軍師が電話で話しているのは、紛れもない毀軍である。紛れようもないほどの毀軍である。相手がどうやって番号を入手したのかはわからんが、とりあえず毀軍である。その毀軍が何の用かというと、八百長試合ならぬ八百長戦争の契約である。確かに最近毀軍は負けているが、まさかここまで出てくるとはさすがの軍師でも思わなかったはずだ。さらにこの電話がかかってきてから既に二時間も経過しているということも、軍師は多分知らない。


「とにかく、私は貴様らに負けるわけはいかんのだ。しかも報酬少ないし。こんなんじゃ敗戦後に色々と立て直せないから困るんだよ」


「いえいえ、なるべく被害は少なめに致しますので」


「しつこい! 契約する気ないって言ってんのにさあ!」


「呑まないようであれば、こちらの最強部隊を派遣しますが」


「そのような脅しに屈すると思うなよ。最強部隊だろうがなんだろうが、来るとなれば基地を捨てて直接そっちへ侵攻してやるからな!」


「最強部隊は本当に最強ですが」


「いくら最強だろうと敵に逃げられたら終わりだろう」


「そんなことはございません。最強部隊は毎日毎日血の滲むような訓練をしていますので」


「どのような訓練だ?」


「歩く経験地とも呼ばれる金属モンスターの討伐を、一日に二千回行っております」


「何だよそれ! そんなことしたら魔物絶滅するぞ。訓練もほどほどにしろ」


「心配は要りません。こちらの基地では魔物の養殖を行っておりますゆえ、訓練も売却もネットオークションもし放題で御座います」


「海産物か! ていうか後の方に奇妙な単語が聞こえた気がするんだが」


「気のせいでございます」


「いや絶対気のせいじゃないって!」


「それより、どうなさいます?」


「だから契約しないって!」


「マジな方向で最強部隊を送り込みますよ」


「どうでもいいが、貴様らには軍人としての誇りとかそういうものがないのか!?」


「ここだけの話ですが、ありません」


「ないのかい! それと『ここだけの話ですが』ってつける必要性がどこに!?」


「細かいことは気にしないほうが念のためですよ」


「それを言うなら身のためだと思うんだけど」


「そこまでうるさくすると真面目に最強部隊を遣わせますよ」


「それ何回言ってんだ! 私は貴様の脅しに屈するつもりはないとさっき言っただろうに!」


「ラーメンのチャーシュー抜きますよ」


「どうでもいいよそんなもん!」


「地球に向けてカクカクミサイルを撃ち込みますよ」


「何その新種ミサイル!」


「核ミサイルの約1.1倍の威力を持ちながら、軌道が全く読めず、標的ターゲットにほとんど当たらないミサイルのことでございます」


「それなら普通に核ミサイル使えよ! そもそもそんなんじゃ地球まで届く前に宇宙空間にて停止すると思うんだが!」


「今ならもれなく核ミサイル付です」


「だから地球まで届かないって! 兵器くらい自分で開発しろよ!」


「そして最強部隊付です」


「最強部隊はもういいから!」


「本当に契約を破棄するのですか?」


「破棄するも何も、元々契約してないし」


「それなら八百長戦争は諦めます。その代わり、同盟を結んでください」


「誰が結ぶかっ! しかもよりによって毀軍なんかと!!」


「それがだめなら今度こそ最強部隊を送りますよ」


「だからしつこいってんだよっ! もういいから。何も要求すんな」


「それならハイになれる薬はいかがでしょうか」


「そんな危ないもの売りつけんな!」


「静脈注射だけで簡単に使用できます」


「いらないって」


「今だけ二か月分2000円です」


「お得情報もいらんから。もう電話切りたいんだけど」


「それなら簡単に痩せられる薬はいかがでしょうか」


「そんな明らかに怪しい薬いらんわ! 星軍に太ってるヤツいないし。もしいたとしたらそいつもう死んでるよ」


「じゃあ簡単に『俺TUEEEE!』できる薬は」


「いらない! 既にそんなヤツいるから。嘘だと思うなら今度見せてやるよ」


「本当に要らないんですか?」


「いらないったらいらない!」


「そういうわけで八百長の契約を」


「どういうわけでそうなるってんだ! しないって言ってんのに!」


「いえいえ、初心忘れるべからずというでしょう」


「貴様らの初心はそこかい! そうなら初心忘れろ!」


「うーむ、どうやっても無理なようですね」


「いい加減に諦めろよ」


「はい。今回の所は諦めます」


「ああ、そうしろ」


「諦めます」


「ああ」


「諦めますよ」


「……」


「諦めちゃいますよ」


「…………」


「諦めます諦めます諦めます」


「しつこい! 諦めるといったら一度で諦めろ! 『やっぱり契約する』みたいな流れに持って行こうとしても無駄だぞ」


「しかしですね~」


「もういいよ。もう切るから」


「ですが」


ガチャッ


 軍師の二時間三十分に渡る死闘は、今終わりを告げた。


「あ、名前聞いておくの忘れた」


 毀軍の滅亡はいつ来るのやら。

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