17、獅子の将星、漂流する
今回も短いです。何故か長い話が書けなくなってきた。
シリウスが軍師になったため、軍律は厳しく規定された。まあ下の通りである。
一、訓練は毎日欠かさぬ事
一、盗みや殺しを働かぬ事
一、軍律に反している者を見つけたら直ちに申し出る事
一、食材はなるべく質素なものを選ぶ事
一、使い捨ての道具はなるべく大事にする事
そんな感じ。他にも色々面倒くさいものが多々あるが、今は気にしないでおこう。そんなことより今重要なのは、三宅島の海岸(といってもどこの海岸だか解らないが)に打ち上げられているものである。
発見したのは、学者だった。
「おい! 大変だぞ!」
「何だ何だ、またガラス瓶でも落ちてきたって言うのか」
「違う! 違うんだ! 今日は違う! 人だ! 人が倒れてるぞ!」
海岸に倒れていたそれは、紛れもない、人である。紫っぽい色の髪で、どこかプルートに似てい……、いや、何でもない。
「うわっ、本当だ。と、とりあえずボロ小屋に運べ」
軍師の命令により、海岸に打ち上げられていた少年(っぽい人)はボロ小屋に運び込まれた。
……、少年が目を覚ましたのは、日が沈んでからだった。「死んでるかと思ったよ本当に」
「お、やっと目を覚ましたぞ」
「どうする? まず最初に何を訊くかが重要だぞ」
次に、少年は身体を起こす。そして、伸びをした。
学者と軍師は、頷き合う。
「なあ、貴様、どこから来た?」
少年は、突然の問いかけに驚くこともなく、答えた。
「…………ビア」
「何だって!? もう一回言え!」
「惑星ビア」
「ッ!! まさか、貴様、生存者、か?」
軍師の言葉が途切れ途切れに出てくる。いや、それよりも、
――生存者――
その言葉を、軍師は何回も繰り返している。“生存者、生存者。あの時の生存者。生存者、生存者”と、うわ言のように繰り返す。ようやくおさまると、軍師はまたも問いかけた。
「貴様、名を何という」
「……レグルス。獅子座の一等星と同じ名だ」
「レグルス、か。じゃあ次だ。正直に話せ。|あの戦争(2325)での生存者は、レグルス、貴様だけか?」
「多分」
「やっぱりか。じゃあ、ここはターゲットになる」
その場にいる総統と学者は、軍師が何のことを言っているのかさっぱり解らない。
「レグルス、身体は痛むか?」
「全然」
「……、もう少し、静かにしてろ」
会話をやめ、軍師は総統と学者を引っ張って小屋を出た。
*
――全てを知る。
「シリウスさん! 一体、あれは何の話なんですか!」
「知らない、か。ならいい。話してやる。
レグルスは、ブラックホール戦争の被害者だ。2325回目の。つまりは、第2325回銀河大戦で、あいつは生まれ育った惑星を破壊され、宇宙空間に放り出された。地球に向かってな。ブラックホールは、時々、人間を一人生き残らせる。それで、いつかのターゲットになるところへ向けて、飛ばす。レグルスは地球へ来た。だから、地球はヤツの標的になる」
嫌な予感が当たった、とでも言うような顔だ。総統も学者も軍師も、しばらく閉口する。
「……………………、訓練を怠るな」
そう言って、軍師はその場を離れた。
*
5月20日の夜は長かった。