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全星空の大戦争  作者: 54
二章 地球は本当に地獄であった
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14、三宅島制圧戦・後編

長引いてすみません。今回が三宅島制圧戦最後です。それと、今回はコメディー要素少なめ。それがしもたまには真面目な話を書きたいんです。

 そのころ、村では村民全員が完全武装し、シリウスたちの攻撃に備えていた。


「村長、これでいかがでしょうか」


「それで充分だ。敵の数は村民全体の数よりも多い。数で押せば何とかなる」


 そして、シリウスの空間断絶魔法により、空が灰色に染まる。


「ん? 空が暗くなったな」


「何でしょうね。太陽も出ているのに、こんなに暗いなんて」


「災害の予兆か?」


「まさか。縁起悪いこと言わないで下さいよ」


 はい死亡フラグ。残念だな村長よ。この戦いに負けてもらわねば話が先へ進まんのだよ。


「では、今度はこちらから行くか。村民よ、立ち上がれ! やつらを捕まえるのだ!」


 村民全員出動。さてさて、どうなることやら。



 *



「あれ、シリウスさん、あっちの方角から喊声が」


「へえ、面白いじゃん。アルキオネ、行くぞ。今が攻め時だ」


 シリウスたちも山に向かって走る。しばらく走ったところで村民達の集団が待ち受けているのだが。


「今度こそ捕まってもらう!」


 村民は決死の覚悟でシリウスたちに当たった。


「何だ何だ? こいつらさっきと様子が全然違うぞ。鬼みたいな顔だ」


 被害は最小限に抑えたいところだ。


「行け、カノープス。頃合いだ」


「うおりゃぁぁぁぁ!!」


 カノープスが鎖のついた鉄球を振り回しながら突進してくる。十数人の村民が一気に吹っ飛ばされる。


「うお!? まずい、自分にも当たるじゃねえかこれ!」


「身体全体を使って回れ!! 目回し無効魔法がかかっているから心配は要らない!!」


「うれああああ!!!」


「ぎゃあ!」「ぐぼっ!」「へべっ!」


 シリウスの魔術でありえないほどに増幅した遠心力のおかげで、鉄球は全てを破壊する魔物と化した。物凄いスピードで回っている。まるで小さな竜巻だ。


「ぐぎゃあ!」


 カノープスが通った後は道ができている。通る時には村民が遠くへ吹き飛び、その先で倒れて動かなくなる。


「ちょっ、コントロール滅茶苦茶難しいんだけど。あと村民死んじゃうぞ」


「大丈夫だ。頭に当たらなければ骨折くらいで済むだろ」


「じゃあコントロールは!?」


「知らん。自分で調整しろ」


「そんな無責任な!!」


「じゃあもういい! 無駄な死人を出す前に鉄球を放せ!!」


「解ったよ。うりゃああ!!」


 鉄球がカノープスの手から離れ、物凄いスピードで空間を切り裂いていく。民家に大穴が開き、激しい砂埃が立った後に地面が軽く抉れているのが見える。


「やばいじゃん! 人に当たらなくてよかったよホント」


「グズグズしてる暇は無いぞ! 山に向かって進め!!」


「こいつら、山に向かうつもりだ! 山には観光客がいるぞ! 山への到達を阻止しろ!」


 村民が包丁やのこぎりや金鎚などの手頃な凶器を持ってシリウスたちに襲い掛かる。


「くそっ、邪魔だ! アルキオネ、適当な魔術でこいつらをどうにかしろ!」


「了解っ!」


 勇者は何か呪文を唱え始めた。そして唱え終わった時、村人達の様子が変わった。


「へっくしょん! げほごほ! 何だこれは!」


 村民は皆、くしゃみや咳、鼻水など、よくある風邪の症状を出している。


「これは細菌の繁殖を促進する魔術です」


「むむぅ、なかなか恐ろしい魔術じゃないか」


 シリウスたちは再び山へ向かって走り出した。村民を無視して走る。


「まずい、山へ近付いてゆく。全村民よ、追え!」


 山の麓についてからも、村民との激戦は続いていた。といっても、村民の大半は頭痛や悪寒を訴えて戦線離脱してる。勇者の魔術も随分と役に立つものだ。


「ここからが本当の苦痛だ。皆、山へ登るぞ」


「ええっ!? 登るんですか!?」


「当たり前だ。地殻変動促進魔法は目的地から200m以上離れていると使えないんだ」


「何ですかそれ!」


 山には登山客が沢山いる。シリウスもさすがに無関係な人々を巻き込むわけには行かない。道の隙間を潜り抜けてうまく登るのだ。村民も無関係だけど。


 対して村人たちは、登山客や観光客に向けて避難勧告を出している。一時的に安全な海沿いに逃がしたのだ。外部との通信ができないことや、本日の1時に帰ってくるはずの人間が帰ってこなかったことから、何か不思議な力でこの島が孤立したことを悟った。まあ普通はそんなこと夢にも思わないが。


「何だよ、あいつら死ぬ気で追ってきている」


「ヤバイですね。ここは何とか逃げ切ってください。私が相手をします」


 定番の囮戦法だ。


「ハッ! 一人だけ格好つけやがって。せめて生きていろよ!」


「心配御無用ですよ、ウラヌスさん」


 村人達が迫る。勇者は呪文の詠唱を始めた。


「うおっ、目がっ!」


「目がかすんでよく見えない!」


「目が霞んでよく見えなくなる魔術です」


 村民たちは先に進もうと思っても、暗い山道でしかも目が霞んで見えないので、うまく前に進むことが出来ない。斜面から滑り落ちていく人もいる。


「アルキオネ、上出来だ! 私たちは先に進んでいるぞ!」


「なるべく早く山頂についてくださいね!」


 勇者が変な魔術で敵の攻撃を防いでいる間、シリウスたちは山を登り進めていく。


「山頂はまだか!」


「この山は775メートルだから、あと200メートルくらいじゃないか?」


 山頂へ近付くにつれて、煙が視界をふさいでいく。


「くそ、嫌なにおいだ。何か、卵が腐ったような、そういう」


「大変ですシリウス様! 衛星の一人が、呼吸困難を起こして倒れました!」


「何だと!? このままではまずい。全員死ぬぞ!」


 シリウスは、村民から防護マスクを奪っておかなかったことを後悔した。


「どうしますか? 今のうちなら撤退することもできます」


「ぐ、っ、仕方ない。一時撤退だ! 斜面を滑り降りてもいい。素早く山を降りよ!」


 ここで空間転移を使うわけにはいかない。ある者は斜面を滑り降り、ある者は普通に引き返す。倒れた衛星を背負い、ウラヌスも斜面を滑り降りていった。


「何だ! 火山性ガスのせいで計画が失敗するなんて想定外だ!」


 シリウスは勇者も巻き込み、一旦麓に下りる。


「シリウスさん、作戦失敗ですよ。これからどうするんですか?」


「もう山に登るのはやめた。魔術の効果が現れない条件下で脅そう」


「ええ!? そんな無茶な!」


「無茶でも何でもいい! もう出来ることは全てやった! あとはこの方法に賭けるしかないだろ!」


 山から、少し遅れて村民達が降りてくる。


「村長、出て来い! 私たちはこの島を世界から引き離した! その気になればこの山を噴火させることも可能だ! そうされたくなければ大人しく島を明け渡せ!」


「噴火させられるならそうすればいい」


「ッ!?」


 以外だ。村長は、雄山が噴火させられても別にいいような態度だ。


「アルキオネ、村民たちの戦い方が急に変わった理由がわかったぞ」


「何ですかそれは」


「私たちはこの島を外の世界から完全に断絶した。つまり、この島で何人人を殺そうが、村人全員が隠し通せば罪に問われない。それに、もし火山の噴火が起こっても、私達もすぐに逃げられない。要するに、死ぬのは同じなんだ。常に同じ条件でなければいけないんだ!」


「うええ!? 嘘ですよね! 絶対、これは嘘ですよ! シリウスさんの計画は完璧だったはずなのに!」


「違う! これは嘘でも幻でも何でもない! それに、まだ負けたわけでもない。今からでも巻き返しは効く!」


「どうやって巻き返すんですか!」


「……………………、この方法だけは絶対に選びたくなかった。この時が来るまで絶対に思いつかなかったであろう方法。


























――村民の大虐殺」


 仕方がなかった。それしか、残された道がなかった。噴火を起こしても自分達が逃げられないだろうし、今更交渉なんて出来るはずもない。


「……、行くぞ」


 それを合図に、無数の魔法弾が飛んでゆく。村民を飲み込み、地獄のようなシーンが展開される。


「くそっ! だからこれだけはしたくなかったんだ!」


 一部の民家が焼ける。道は血で染まり、死体の横たわる地獄絵図と化していた。



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