プロローグ
俺達、βテスターが《ロストオブエデン》に囚われの身となって三年が過ぎた。
ゲームでの死が現実の死となるデスゲーム。原因は自立AIの暴走。俺達βテスター、二千人はゲームをクリアするまで現実には戻れない。
死んでいった仲間も数多くいる。三年間で二千人だったβテスターは千人にまで半減した。
「とうとうだな。」
「そうさな。」
そして俺達は今、最後のボス部屋の前にいる。
「勝って、みんなで生きて帰ろうね。」
「あぁ。向こうでも仲良くやろうや。」
俺は今まで共に闘ってきた戦友を見渡す。
――長弓使いのユウカ
このチーム内のムードメーカー的な存在。いつも明るく俺達を笑わせてくれた。こんなデスゲームの中、俺達は何度、彼女の笑顔に救われたかわからない。
――斧使いのヤマト
寡黙で無口な男だったが、誰よりも仲間思いで誰よりも強い心をもっていた。こんなまとまりの無いチームが今日までやってこられたのは彼の大きな背中があったからだろう。
――ランス使いのクリス
軽薄でノリも軽い男だったが、この中の誰よりもプライドが高く、決して弱音を吐かない男だった。どんな絶望的な状況になった時も、彼だけはいつも変わらない軽いノリで俺達を支えてくれた。
彼等はこの苦しいデスゲームを俺と共にクリアしてきた《ひだまりの子猫》のギルドメンバーだ。
「リーダー、行こう。」
そして、この《ひだまりの子猫》のリーダーが俺。ギルド作成時、何故か多数決で俺に決まってしまったのだ。こんな適当でだらしない奴を何故にリーダーに選んだのか未だに理解できない。
だが、それでも俺はこいつらのリーダーであったことを誇りに思う。
「リーダーの抜刀スキル、頼りにしてますよ。」
いつもの軽い調子で絡んでくるクリス。
「まぁ、そんな期待すんなや。」
俺の武器は刀。しかもこの世界唯一の抜刀スキル持ち。
一瞬の破壊力なら斧使いのヤマトすらも上回る一撃必殺の能力。何度も俺達を救ってくれた力だ。
「ぼちぼち、行きますか。」
近くの店でポーションを買うようなノリでボス部屋の扉を開く。
――さぁ、最後の闘いだ。