プロローグ〜伝説〜
―――遥か昔、大陸を支配する偉大なる魔術師がいた。
その知恵で考えるは他人の苦痛、
その両手で潰すは他人の命、
その右手に握るは破壊をつかさどる杖、
そのローブは闇夜よりも深い、黒。
付けられた名は、『鮮血のジェノス』。
初め何の魔力も持っていなかった人々はただ虐げられ、殺され、辱められ、それでも耐えねばならなかった。
それから、幾千年も後。
ジェノスはその魔力が為に生き続け、彼の子孫達も人々の中に混じって暮らしていた。
しかし、それこそが、ジェノスの唯一の誤算であることに、彼は気付かなかった。
―――科学しかなかった人々に、魔力を与えてしまったことに。
人々はジェノスの子孫…「魔力を持つ人間」達と手を組み、ジェノスの圧政に抗い始めた。
その集団の名こそ、我らが『神聖教会』(ディバ・チャペル)だった。
閃暦5,619年、ついに両者は、衝突した。
神聖教会は人々が為、対するジェノス率いる殺戮者達は、ただただジェノス本人が為、戦った。
―――世に言う、『スペリング・ジハード』である。
三千日三千夜にわたる激戦で、大陸は荒廃し、多くの国々が破綻し、そして何より、多くの人々が、死んだ。
莫大な量の被害に耐えて戦い続けた人々に攻められ、ジェノスはついに、散った。
後に残った魔力は大きく、世界中の者達に分け与えた後も尚、ダーク・ルビーとして残った。
そのルビーは、神聖教会の者たちによってしかるべき所に封印された。
かくして人々は魔法を手に入れ、世紀の読み方も変わり、魔法の使い方を学ぶため、大陸の4箇所に魔法学校が建造されたのである。
これが、1300年前の伝説だ―――。