鯉の滝登り
滝を登った鯉は竜になれると聞いた一匹の鯉は上流の滝を目指して泳いでいた。激流を越え、敵から逃げ、とうとう滝のふもとにたどり着いた。
見上げても上が見えない滝だった。
鯉は何度も滝に挑んだ。最初はすぐに滝つぼに落とされてしまう。しかし徐々に登れる高さが高くなり、遂には滝の上まで泳ぎきったのだ。
「これで俺も竜になれる…」
ふと岸に目を向けると、スーツ姿の男がこちらに走ってきていた。
「おめでとうございます。」
「あ、ありがとうございます。あなたは?」
「申し遅れました。私は滝登り管理課二係係長の山本です。あなたは滝登りに成功した鯉なので竜認定されました。」
「そ、そうですか。」
鯉は思っていたのとかなり違う状況に戸惑ったが、まあ竜になれるなら何でもいいやと思った。しかし、山本はそのまま立ち去ろうとする。
「あ、あのすいません。」
「はい、何ですか?」
「竜は…?」
「ですから、あなたは竜認定されました。もう竜です。」
「えっ?」
鯉は驚いて自分の姿を見回した。今までと何も変わっていない。
「何も変わってないと思うのですが?」
「あなたが竜に対してどのような幻想を持っているのかは知りませんが、あなたは竜です。ではさようなら。」
山本は戸惑う鯉を後に残して去っていった。
仕方なく地元に戻った鯉は自分は竜だと主張したが、みんなから胡散臭い奴と思われた。




