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3話③ 「歩き続ける」




⚫︎クリーム

「今度こそ、直撃(クリティカル)

決まったね!」



 徐々に爆風が晴れてくる。


 爆風の中から1つのシルエットが浮かび上がった。



⚫︎クリーム

「え!?」


 イレイザーは無傷だった。どこに命中しても、イレイザーに傷をつけるのは容易ではない。



⚫︎フミレ

(ダメージは受けてない……よね……?

でも、相手に近づく前に攻撃が飛んでくる……。

速くて対応が難しい。どうすれば……)


 周囲を見回していると、先程ぶつかった実験台が目に入った。



⚫︎フミレ

(ヒビ…………)


⚫︎クリーム

「もう!

だったら全力(フルパワー)でいくよ!」


 クリームの体に雷の鎧が形成される。

雷は前後縦に伸びて1本の太い線になっていく。その形状は列車の車両のようだ。



⚫︎フミレ

「……飛んで……!」


 フミレはイレイザーのハンドルを真上にグウっと持ち上げて、ペダルを全力で漕ぐ。

すると、イレイザーはロケットのように真上に上昇した。


 フミレは今度は実験台の上に向かってペダルを漕いだ。



⚫︎クリーム

「えぇぇぇぇぇぇい!!」


 雷列車になったクリームがこちらに突進。

……するよりも先に、フミレがハンドルを下げてイレイザーを降下させる。



 ズドーーーン!!



 真下に降下するイレイザーと、こちらに来るクリームが交わった。イレイザーはクリームを踏むような形になっている。



⚫︎フミレ

(もう少し……もう少し……)


 フミレはペダルをひたすら漕いで回転数を上げていく。

イレイザーの速度も馬力も増し、クリームが押されて、イレイザーの高度が下がっていく。



⚫︎クリーム

「……まだ……まだぁ!!」


⚫︎フミレ

「ふっ!!」



 ゴォォォォォォォォン!!!



 ――やがて、イレイザーは実験台にクリームを打ち落とし、その勢いのままクリームをプレスする。



⚫︎クリーム

「があっ……!」


 クリームを踏みつけている、イレイザーの頭部側面のエメラルド色をしたカメラアイが、クリームを見下すように(あや)しく(きら)めいた。


 落下の衝撃、イレイザーのパワー、その実験台自体にヒビが入っていたこと、更にイレイザーがクリームをプレスしたことでの上からの高圧力等により、実験台は破裂。


 


⚫︎クリーム

「――わあああああっ!!」


 イレイザーのプレスは実験台を崩しただけでなく、そのまま床まで貫通して沈んでいく。


 イレイザーとクリームは、穴の空いた床を抜けて地下深くへと降下していく……。



 地下は無限の闇の空間。ひたすら何もない空間を穴掘りして落ちるイレイザーと、それに踏まれるクリーム。



⚫︎フミレ

「…………!」


 フミレはクリームを放置して、イレイザーを真上に上昇させた。ここから脱出して、理科室に戻る算段だ。イレイザーの足のブースターが急加速を始めた。



⚫︎クリーム

「ぐ…………………………!」


 イレイザーはぐんぐん理科室に続く穴に向かって昇っていき、クリームは逆に永遠の闇の中へと落ちて行った。



⚫︎クリーム

「今回はボクの負けだ!

バット! 

次はキミを仲間にしてみせるよ!」


 落ちていくクリームの言葉はフミレの耳には入らなかった……。



* * *



⚫︎フミレ

「何とか戻れた……」


 イレイザーは理科室に帰還。


 フミレは足をほぐすように、両足をペダルから離して真っ直ぐに伸ばした。



 ガチッ!



⚫︎フミレ

「え!?」


 すると、瞬時にイレイザーの頭部が開いて、フミレは外に放り出された。


 伸ばした右足がハンドルの右下に付属しているスイッチを押してしまったようだ。

そのスイッチは自転車でいうと、ブロックダイナモ式のライトを点灯させる役割のスイッチのはずだ。


 

⚫︎フミレ

「……!」


 フミレは床に着地した。

振り返ると、イレイザーがどんどん縮んでいき、やがて乗り込む前と同じく、実際の消しゴムサイズにまで小さくなった。



⚫︎フミレ

(あのスイッチを押すと脱出できるのね……。

脱出すると、イレイザーは小さくなる。

もう一回乗り込むには、さっきみたいに【イレイザー、イクイップ】と唱えればいいってこと……?)


 フミレはイレイザーのことを分析した後、


⚫︎フミレ

(……ていうか、何でわたし……。

こんなことしてるの……?)


 自分の行動に心中でツッコミを入れた。



* * *



⚫︎フミレ

(これで何とか……ならないか……)


 砕いた実験台の破片をかき集め、穴の空いた床の上に乗せたフミレは、手をパンパンと払って一息つく。

これだけでは正直心許ないが、クリームが戻ってこれないように穴を塞いでおこうという考えだ。



⚫︎フミレ

(気休め程度にしかならないかも……。

早くここを出ないと……)


 フミレは入り口を見やる。電気のバリケードはクリームを退けたからか、消滅している。しかし、このままここを出る訳にはいかない。



* * *



⚫︎フミレ

(開くのかな……?)


 理科準備室に戻ったフミレは、人体模型を眺める。



⚫︎フミレ

(この中にいれば襲われないかもしれないけど、このままだと息苦しいだろうし、この先ここに戻ってこれるかわからないから、後で助けるのは厳しい……)


 フミレは模型の心臓部に右手を置く。

その途端、あることに気がついた。



⚫︎フミレ

(そういえば、中から叩く音がしない……!

もしかしてもう手遅れ……!?)


 フミレは無我夢中で心臓部を引っ張った。




 ……すると、



 ガラガラガラガラ!!



 人体模型の臓器が次々に外れていき、内部が見えるようになっていく。




⚫︎フミレ

「……!」


⚫︎???

「……ミツルくん……?」


 茶色のツインサイドアップ、太陽のように明るい肌。

フミレと同じくらいの年齢の女の子が、人体模型の中で目に涙を浮かべて、怯えた表情でこちらを見ていた。


 彼女は身長143センチのフミレよりも僅かに低いくらいだが、よくこんな人体模型の中に入りこめたものだ。



⚫︎???

「フミレちゃん……!」


 少女はフミレの名前を呼んだ。



⚫︎???

「うわぁぁぁぁ〜ん!!

フミレちゃ〜〜〜ん!!

怖かったよぉぉ〜〜!!」


 少女は泣きじゃくりながら人体模型から飛び出して、フミレに抱きついてきた。


⚫︎???

「知らないうちにこんな狭っ苦しい所に閉じ込められてぇ! 

こっちからじゃ開けられないし! 

誰も来てくれないし! 

もう諦めてたんだよぉ〜!

フミレちゃん、助けてくれてありが――」


⚫︎フミレ

「――あなただれ?」


⚫︎???

「エ!」


 フミレの食い気味の発言に少女の涙が止まり、顔が石のように固まった。



⚫︎???

「…………………………。

……エェェ〜……」


 少女は苦い笑みを浮かべて、信じられないという表情をしている。



⚫︎???

「……()()()()()()()そんなこと言う……?

わたしたち友達じゃん!」


⚫︎フミレ

「違うけど」


⚫︎???

「即答! 

迷いもなく……!!」


 少女は尚もフミレにすがる。



⚫︎???

「じゃあ、1組の仲間扱いでもいいから……!」


⚫︎フミレ

「わたしたち、同じクラスだったんだ……」


⚫︎???

「はアアアア!?!?」


 少女の両目がギャグ漫画のように飛び出た。



⚫︎???

「1年半も一緒の教室にいるのに……。

それに()()()()()だし…………。

何、そのボケ……?」


⚫︎フミレ

「いや、真面目に初対面でしょ。

あなたの名前も知らないし、顔も初めて見た」


⚫︎???

「ひどい、ショック……!!」


 少女は床に手を付いてズーンと沈んだ。



 しかし、少女はすぐさま立ち上がり、


⚫︎???

「だったら、()()自己紹介!

わたしは――【六楽内(むらうち) 美友(みゆう)】!

忘れないで覚えなさい☆」

 

 『六楽内(むらうち) 美友(みゆう)(通称はミユ)』。

人懐っこく、男女問わずみんなと仲良くすることを目標にしている、表情豊かで明るい女の子。いつも瞳を漫画のようにキラキラさせて笑顔を絶やさないので、大人たちからも元気で可愛いと評判も良い。



⚫︎フミレ

(うん、こんな騒がしい人知らない……。

名前も初めて聞いた……。

やっぱり初対面で間違いない……)


 フミレはそう自己完結させ、理科準備室から立ち去ろうとミユに背を向けた。



⚫︎ミユ

「……フミレちゃん、どこ行くの……?」


⚫︎フミレ

「よくわからないけど、さっき変な女の子に襲われたわ……。

学校もおかしなことになってる……。

早くここを離れて脱出するわよ」


⚫︎ミユ

「エ、何それ、怖い!

どういうことなの?」



 フミレは質問に答えず、ヘッドホンを耳にあて、1人でスタスタ歩き始めた。



⚫︎ミユ

「あ、ちょっと!

待ってえ〜!!

わたしも一緒に行くぅ〜!」


 ミユが追いかけてくるが、フミレは振り返らず、歩みを止めない。



⚫︎フミレ

(友達……そんなものはわたしには必要ない……。

わたしは、1人で歩き続ける……)



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