2話② 「伏魔殿でも」
3人は無事にカメリアから逃げ切った。
⚫︎カズ
「〜〜〜ひどいじゃないか……!!
ミツルくんだったら、こんなことしないよ!!」
カズがコータとエージの行為を非難してくるが、2人はどこ吹く風。
⚫︎カズ
「ミツルくんだったら、きっとぼくをお姫様抱っこして炎の中から脱出するよ……!
あの人は白馬の王子様だからね!」
⚫︎エージ
「それは、去年の演劇での話だろ……。
あくまで…………」
そんなこんなで道なりに走っていると、光が見えてきた。
林の出口だ。3人は迷わずそのまま進む。
視界が開けて、林の外の光景が映し出される。
⚫︎コータ
「――!」
⚫︎カズ
「ここは……」
⚫︎エージ
「おれたちの学校……?」
目の前にはコータたちが通っている小学校――【歌羽小学校】と思われる建物がそびえている。
そしてコータたちは現在、その建物の入り口前の広場――学校でいう所の校庭の位置に佇んでいる。
⚫︎コータ
「うっそだろ?
こんな馬鹿デカくねーだろ!
おれたちの学校!!」
そう。その大きさはまるで、どこかの国の宮殿や王城のように巨大だった。と、同時に禍々しい雰囲気を建物全体から漂わせている。
だが、歌羽小学校の校門や、初代校長先生の銅像等がここにはきちんと存在している。今通ってきた林に生えていたクサギの木も、歌羽小学校の外周のマラソンコースに生えているものと同じだった。
⚫︎カズ
「これじゃ、伏魔殿じゃないか!」
⚫︎コータ
「福真殿?
いーことありそーな建物だな!」
⚫︎カズ
「教養がないな、コータくんは!!
伏魔殿ってのは、魔物の住処ってこと!!」
カズはさらっとコータを貶してから教える。
悪気はないのだが、カズは元々このような発言が多かった。
⚫︎カズ
「何かヤバい匂いがプンプンするぅ……!」
毒を吐いたかと思えばガタガタと震え始めるのも、気弱な彼を普段から見てるコータたちからすればいつものことだ。
⚫︎エージ
「なあ、ここが本当に学校なら、後ろはさっきの林だ。
普段歩いている通学路、校門前の信号、交差点、全部なくなってるぞ……!」
エージの指摘通り、辺りをどう見回しても、校門よりも手前側にあったものが全て存在していない。その代わりがあの林だ。
⚫︎カズ
「そんなああああ!!!
だったら、家に帰れないじゃないかぁ!!」
⚫︎コータ
「今は帰る必要はないだろ。
みんなを探さなきゃいけねぇし。
中、入るぞ」
コータは入り口に向かって歩き出す。
この状況を何とも思っていないのか、足取りは軽やかだ。
⚫︎カズ
「いやいやいやいやいや!
何で入るのさ!
ていうか早く隠れようよ!!」
⚫︎エージ
「コータお前、よく平然としてられるな……」
警戒心を強めている2人の言葉に、コータは足を止めた。
⚫︎コータ
「カズ、勿体ねぇよ……」
⚫︎カズ
「……へ?」
⚫︎コータ
「こんな学校が怪しく変貌するなんて、漫画みたいな経験――もう二度とできないかもしれねぇんだぞ!
だったら、全力で楽しもうぜ!!
怖いって気持ちごとさ!!」
振り返ったコータのその顔は、キラキラと輝いていた。
⚫︎コータ
「この中に、おれたちの知らない何かが待っているって考えたら、ワクワクしてこないか?」
⚫︎カズ
「するわけないじゃん!
コータくんの単細胞!!」
⚫︎エージ
「流石にちょっとは警戒しろよ……。
さっき、襲われたじゃん……。
あれ、加減してなかったぞ……」
⚫︎コータ
「大丈夫だって!
あの女、自滅してて馬鹿じゃん!
肝試し中におれが出くわしたピンクの女も、バナナの皮で滑ってたし、大したことねーよ!!」
⚫︎エージ&カズ
「アイツ(あの人)も、おまえ(きみ)に馬鹿って言われたくはないと思うよ」
――その時。
⚫︎カメリア
「見つけたわよ!!」
所々黒焦げになっているカメリアが追いついてきた。その表情は怒りでゴォゴォと燃えている。
⚫︎カズ
「――あああ、追いつかれたぁ!
だから隠れようって言ったのにぃぃ!!」
カズは発狂。体が強張って完全に動くことが出来なくなっている。
⚫︎カメリア
「よくもIQ67億の美しいあたしの顔を燃やしたわね! ただじゃおかないわよ!!」
⚫︎エージ
「え、さっきよりもIQ下がってない?」
⚫︎カメリア
「!
そんなことはないわ!」
⚫︎エージ
「あ〜、さっきのは思いつきでテキトーに言ったパターンか……」
⚫︎カメリア
「う!」
エージの指摘に、カメリアはギクっと動揺を隠せていない。
⚫︎コータ
「ほらな!
だから、コイツは【馬鹿】なんだよ!
ビビることねーって!」
⚫︎エージ
「ごめん、お前の言う通りだった……」
⚫︎カメリア
「〜〜〜、あたしは馬鹿じゃないもん!!」
小学生2人に馬鹿認定された中学生(?)カメリアは、プライドがすっかり傷つけられて涙目になっていた。
⚫︎カメリア
「生意気なガキヒューマども!!
全員ぬいぐるみにしてやるんだから覚悟しなさいよ!」
カメリアがステッキを、テニスラケットでレシーブするような動きで振り上げる。
コータたち3人は、突如発生した熱風に吹き飛ばされて、宙に浮き上がった。
校庭の広場に落ちている小石や砂も巻き込んで、グルグルと渦が発生していく……。
⚫︎コータたち
「うわあああああああああああああ!!!」
3人は身動きが取れず、洗濯機にかけられているかのように、炎の竜巻で回り続ける。
⚫︎カズ
「もうお終いだあ〜〜〜!!」
⚫︎エージ
「目が回るぅ〜ん!」
⚫︎コータ
「あっちぃ!!
何とかしねぇと!」
コータが打開策を探っていると、
⚫︎コータ
「……ん……?」
竜巻の中に、小さな光が見えた。
それは、炎の洗濯機の中にいる自分たちや砂塵と同じく、竜巻の流れに任せてグルグルと回っている。
⚫︎コータ
「何だ……あれは……」
コータが見つけた光の正体は――小さな物体だ。
手のひらでも簡単に収まる程の、小さな物体が光っている。
光が近づいてきた。
コータはそれを取ろうと手を伸ばす。
⚫︎コータ
「もう、…………すこし……っ!」
コータにはそれがあれば、血路を開けるような気がしてならなかった。
ガシッ!
――やがて、コータの右手にその光が握られた。
プラスチックの感覚が手のひらに伝わる。
⚫︎コータ
「!
これは……!」
右手の中にあったのは、小型のプラスチック製の鉛筆削りだ。ピンクホワイトに輝いている。
明らかにただの鉛筆削りではなく、不思議な力が宿ったモノであることがすぐに分かった。
……いや、それどころか、コータはこれが何であるのか、その答えを知っている。
⚫︎コータ
「どこかで見たことがある……。
つい最近……」