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2話① 「伏魔殿でも」

第2話です。

2人目の主人公『コータ』の物語が始まります。

よろしくお願い致します!




⚫︎???

「コータ! 

おい、コータ!」


⚫︎コータ

「……ん? 

う……う〜ん」



 誰かの呼びかける声と、ゆさゆさと動く自分の身体の振動。コータの意識が戻った。



⚫︎コータ

「……ふ、ふわあぁぁぁ〜〜!

もう朝か……」


 大きくあくびをして両腕を大きく伸ばしたコータの視界に、目の前で興奮している細身のクラスメイトが入った。



⚫︎コータ

「お、エージ……。

辛気臭そうな顔して、どーした?」


⚫︎エージ

「馬鹿! 

寝ぼけてる場合か!

周り見てみろ、ここどこだよ!?」


⚫︎コータ

「はあ?」



 周囲をよく見ると、並木林のど真ん中。


 人気は全くない。町外れというか、山奥に放り込まれたような感覚だ。



⚫︎コータ

「あれ? 

おれたち、学校でキャンプしてなかったっけ?

何でこんなわけわかんねーとこにいんだ?」


⚫︎エージ

「だから、聞きたいのはこっちだっての!

気がついたら、おれたちここに倒れてたんだよ!」


 『五乙女(そうとめ) 英児(えいじ)(通称エージ)』。

コータと特に仲が良いノッポのクラスメイト。破天荒なコータのブレーキ兼ツッコミ役。しかし、何だかんだ馬鹿なことをしたり、張り合ったりして、よくコータと一緒に先生に怒られている。



⚫︎コータ

「ん? 

ん〜〜〜〜?」


 コータは腕を組んで記憶を思い起こす。



⚫︎コータ

「あ、思い出した!

おれたちのグループが肝試ししてる時にさ、変な格好の女に襲われたんだよ!

なんか、ピンクの魔法少女? みたいな奴に!!」


⚫︎エージ

「……はい?」


⚫︎コータ

「それで、クラブがぬいぐるみにされちまって!

おれは吹っ飛ばされて、学校の外に出されたんだ!!

そして今、何故かここにいる!」


⚫︎エージ

「………………」


⚫︎コータ

「そう言えば朝になってるし、窓ガラスにおもっきしぶつかったけど、どこも怪我してねぇ……」


 コータは自分の体を()めつ(すが)めつ眺めながら呟く。



⚫︎エージ

「……何、その与太話……。

……本気で言ってる……?」


⚫︎コータ

「本気だよ!

あの時一緒じゃなかったお前もこんなとこにいんだから、明らかに常識を超えた非常事態だろうが! 

おれが嘘ついてるように見えるかっ!」


 コータは鼻息荒くし、目も血走らせながら、エージの両肩を掴んでグラングランと激しく揺らす。



⚫︎エージ

「??!?⁈!?!??⁉︎!?

み、みみみえまししぇ〜ん……」


 両目をスロットのように回すエージは、コータの話を(物凄い圧をかけられたので)信じてくれた。




⚫︎コータ

「……つーことで、こうしちゃいらんねぇ!!」


 コータは前方に向かって駆け出した。



⚫︎エージ

「……ま、待てよ!

どこ行くんだよ!」


 エージが追いかけながら尋ねる。



⚫︎コータ

「学校に戻るに決まってるだろ!

フミレとガクとミツルが校舎の中にまだいるかもしれねぇし、クラブも助けなきゃならねぇし、先生や他のみんなも気になる!」


⚫︎エージ

「それはわかるけど、こっちの道で合ってるのかよ?」



 コータは足を止めた。

それによって、真後ろを走っていたエージがぶつかってきた。



⚫︎エージ

「痛った! 

急に止まるな!」


 エージに向かってコータが振り返って、


⚫︎コータ

「道がこっちでいーのかなんて、知らん!!

わかんねーけど、とりあえず道があるから進む!」


 

 ――ゴン!


⚫︎エージ

「ごふっ!」


 振り返った勢いがあまりに強かったので、エージはコータの顔面スイングを受ける形になって、鼻を強打した。




* * *


 

 グダグダの2人が、そのままの進行方向で進んでいると。




⚫︎???

「ああああああああ〜〜!!

お助け〜〜!!!」


 男子の情けない悲鳴が前方から聞こえてくる。

2人がよく知る声だが、普段よりも情けなさが増し増しだった。



⚫︎エージ

「今の声は……()()か……?」


⚫︎コータ

「ああ……そうっぽい……。

とりあえずいくか……!」



* * *



⚫︎カズ

「お金はありませんが、それ以外なら何でもあげます!

あ、このポケットに入っていた彗星模様の【スペースペン】!

名前の通り宇宙はもちろん、水中や寒冷地、温暖地、無重力下などの様々な特殊環境でも書けるんです!

さ、更に! 

多機能ペンとして、カッターや缶切りに、フォークにスプーンにも変形させることも可能です!! 

宇宙食を開ける時も食べる時も、このペン一本で代用可能です!!

これは宇宙飛行士の方のサインが刻印されている上に、特殊合金仕様のレア物で、父にオークションで落札してもらったんで、かなりの値打ちありますよ!

世界に一本しかないはず……!!

日頃から丁寧に扱っているので、汚くも臭くもありません! 

使い心地は抜群!!

()()()のあなたには、これがピッタリだと思うんです!!

今のぼくにはこんな物しかありませんが、どうかこれで見逃していただけないでしょうかあ〜?」


 コータたちのクラスメイトであるメガネの男子が、土下座を繰り返しながら、私物であるペンのプレゼンを必死にして命乞いに励んでいた。


 『|井戸向(いどむかい) 数也(かずや)(通称カズ)』。

メガネをかけて秀才そうな顔つきからくるイメージ通り、勉強はできて知識も豊富。だが、それを鼻にかける上に、自分の身が危なくなるとすぐに保身に走る男。



⚫︎???

「あたしが()()()ですって……?」


 カズの前に立っている人物が、声に怒気を帯びせた。

周囲の温度が心なしか上がったような気がする。


⚫︎カズ

「ひぃぃぃぃぃ!!!」



⚫︎コータ

「カズ……!」


⚫︎カズ

「あ、コータくんにエージくん!!

気がついたら変な所にいるし、怖いお姉さんに絡まれてるの! 

お助けぇぇぇ〜〜!!」


 カズが虫のように這いながら、こちらにすり寄って来た。


 彼の背後にいたのは。



 真っ赤なポニーテールに、ギラギラと輝く朱色(しゅいろ)の瞳。


 気の強そうな中学生と思しき女子だった。胸にペンダントが付いた、真紅を基調とした衣装を着ている。下はフリフリスカートに緋色のブーツ。右手には水晶玉が取り付けられたステッキ。

 

 学校で見たプリティピーチと似たような格好で、年齢も近そうだ。身長はこの少女の方が高く、その表情も活発そうな印象を受ける。



⚫︎???

「あら、更に2人来たわね。

1人を襲ったら3人釣れるなんて、ラッキー! 

一石三鳥!!!

あたしったら、天才の極み!」


 赤いポニーテールの少女は、ガッツポーズをして喜んでいる。口ぶりからカズだけでなく、コータとエージも標的にされたようだ。



⚫︎エージ

「何だアイツ……?」


⚫︎コータ

「さっき話した変な女の仲間っぽいな……。

おれたちが見たのは、ピンクの奴だったし……。

………………そう言えば、あのピンクはガクの知ってるアニメのキャラ何だっけ……?」



 コータは一歩前に踏み出して、



⚫︎コータ

「おい、お前の名前は?

お前もアニメのキャラなのか?」


⚫︎カメリア

「あたしは、『樹神(こたま) 椿(つばき)』!

今のこの姿の名は――忌火(いみび)の『プリティカメリア』!

この世の不純物であるヒューマノイドをぬいぐるみにリサイクルして、世の中に貢献するIQ6700億の天才美少女よ!」


 意気揚々と名乗ったプリティカメリアは、ピーチの時と似たような思想を正義の味方らしくぶつけてくる。



⚫︎エージ

「あの中学生、何言ってんの……?

小学生のおれらより頭おかしいだろ……」


⚫︎カメリア

「ハアアアアア!?

誰がアホポンコツよ!!!」


⚫︎エージ

「いや、そこまで言ってな……」



 カメリアが急に激怒して、ステッキから劫火(ごうか)を飛ばしてきた。


 辺りは一気に焼け野原へと変貌。



⚫︎コータ&エージ

「い!!!」


⚫︎カズ

「えええええ!!

た、助けて助けて!!」


 悲鳴を上げて泣き喚くカズがすがり付いてくる。

よく見ると、カズの右手の指は絆創膏(ばんそうこう)が大量に貼られていた。どこかで怪我をしたのだろうか。



⚫︎コータ

「落ち着け!

こっから出してやるから、ちゃんと走れよ!

……エージ!!」


⚫︎エージ

「……なるほど……!

OK!」


 コータとエージは、腰の抜けたカズの体を両側から掴む。その間にも、周囲の炎はどんどん3人を包囲して接近してくる。



⚫︎カズ

「何するの何するの!?」


⚫︎コータ&エージ

「せーーーーーーーの!!!!」


 コータとエージは、小柄で体重の軽いカズを思いっきり炎の外に向かって投げ飛ばした。



⚫︎カズ

「――いやあああぁぁ〜〜〜ん!!!!」


 カズはボールのようにアーチを描いて上空を飛んでいき、炎の包囲網の外に出た。


⚫︎カズ

「――わぷっ!」


 そして、彼は立木の脇の茂みに顔を沈めて着地。



⚫︎エージ

「よし、おれたちも早く出るぞ!」


⚫︎コータ

「おうよ!!」


 エージは助走をつけてジャンプ。高跳びの要領で紙一重で炎を飛び越えて抜け出し、コータの方はアクロバットに宙を回転し、脱出。



⚫︎カメリア

「チッ!

だけど、まだまだ………………な!?」


 カメリアの顔一面に、木の葉が吹きかけてくる。

コータは宙を飛んでいる時に、彼女に向かってソレを投げつけていた。



⚫︎コータ

「どーよ?

おれの秘密道具は!」


 そこら中に生えているクサギの木から摘み取った葉を、手裏剣のようにして飛ばしたのだ。いつの間にか調達していたらしい。



⚫︎カメリア

「――こんな物、すぐに燃やせば……」 


 カメリアがステッキを真上に掲げて、炎を生み出す。



⚫︎カメリア

「ちょ、見えな……

ブホッ!」


 ……しかし、葉の旋風はカメリアの目にも鼻にも口にも襲いかかった。



⚫︎カメリア

(!? これは虫の知らせ!?

危険な感じが……)


 目に張り付いた木の葉で、カメリアは視界も安定しなくなり、口に入り込む木の葉で呼吸が乱れる。



⚫︎カメリア

「――! 

グッザ(くっさ)……!!!」


 更にクサギの葉が鼻に入ったせいで、その葉っぱが持つ強烈な匂いをダイレクトで嗅いでしまい、カメリアのステッキを操る手元が狂った。



 ――ボオオオッ!!



⚫︎カメリア

「!!!」


 結果、カメリアは自分の顔に纏わりつく葉っぱだけを燃やそうとしたのに、自分の()()()()()に炎を当ててしまった。



⚫︎カメリア

「あ、ああ…………………………」


 アニメでヒーローに倒される悪役や、実験に失敗した科学者のように、黒焦げになったカメリアは呆然としている。




⚫︎コータ

「ぎゃははははは、ダッセ〜!

自分の技でダメージ受けてやがんの!

ぎゃ〜ははははははははは!!」


⚫︎エージ

「笑ってないで、さっさと逃げるぞ!

カズもいつまでも寝てないで来い!」


 プギャーと大笑いするコータと、茂みの山に埋もれているカズを連れて、エージはその場を急いで離れた。




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