第60話 魔導機械兵GR2 VS 聖騎士たち
地響きが広場全体を震わせる。
砂塵を巻き上げ、地中から姿を現したのは巨大な船。
艦体の上半分ほどが地表に露わになり、黒鉄色の装甲がぎらりと光を反射していた。
「地中を泳ぐ怪物船か」
俺は木刀を肩に担ぎながら、そいつを見上げた。
「修理班、各ブロックの応急処置いそげ!」
「土属性フィールド出力装置へ人員をまわせ!」
聞きなれない単語が船内のあちこちから漏れ聞こえるなか、数名の人影が船内からぬっと現れた。
黒い軍服と黒帽子の男がこちらに視線を向ける。
「ちょ、長官! あいつです、木刀もった!」
「ぐっ……本当におっさんではないか」
吐き捨てるようにそう呟いた男―――あれが大将か。
「この魔導潜水艦G201を浮上させたことは褒めてやろう。だが……最後に笑うのは我々だということを思い知らせてくれる!」
その言葉と同時に、船後方の壁がギギギという音を立てて開いていく。
重厚な金属の扉が上下に割れ、そこから姿を現したのは―――
ガシャン、ガシャンと金属が擦れる音を立てて進み出る巨体。
無機質な光を宿した目、全身を覆う分厚い装甲、腹部にはなにやら輝きを放つ魔石のようなものがついている。
「おお、なんかデカい人形みたいなん出てきたぞ」
「ご、ゴーレムですわ!」
「でも、こんなゴーレム……教科書にも載ってません」
「クハハッ! 当たり前だ。これは最新鋭の魔導機械兵GR2! おまえたちにはこの戦場で最初の餌食となる栄誉をくれてやろう!」
「長官、最終チェック完了! いつでもいけます!」
部下の報告を受け、黒帽子の長官は口角を吊り上げた。
「よし、魔導機械兵GR2、聖騎士どもを蹴散らせ!」
ゴーレムがギギギと駆動音を響かせるや、その黒い巨体を揺らしてゆっくりと前進してきた。
「聖騎士隊! 動ける者はゴーレムの前へ!」
エリクラス隊長の声と共に、リンナたちがゴレームを迎え撃つ。
「聖女よ、我が声に応えよ。その加護、今こそ熱き矢と化せ……!
――――――聖高速火矢!
――――――聖光槍撃!
――――――月影の聖短刃!
―――――――――聖突風一閃!!」
各々【加護】を使った強烈な攻撃が、ゴーレムに叩き込まれる。炎の矢が、光の槍が、透明な短刀が、そして、竜巻の一突きが。
グラっと揺れたゴーレムだったが……
「なにぃ……無傷だとぉ……」
「うそぉ~硬すぎなんですけど!」
「リンナ、レイニ、どきなさい!!」
鋭く響く声に、リンナたちはサッと前線への道をあける。
そのど真ん中を猛烈な速度で突っ切る、黄金の影。
「―――――――――黄金氷刃!!」
エリクラスの放った一閃。その黄金色の髪と同じく、黄金色に輝く氷結晶を纏った剣がゴーレムを袈裟懸けに斬る。
さすが隊長、気合の入ったいい一撃だ。
グワンと大揺れしたゴレームだったが……
「クハハハ! 剣だの槍だの……そんな原始的な攻撃が通用するわけなかろうが!」
長官の嘲笑とともにゴーレムは体勢を立て直すと、ヴィンという音とともに衝撃波を撒き散らして周囲を吹き飛ばした。
エリクラスやリンナたちはなんとか踏ん張ったものの、かなりの聖騎士が後ろに飛ばされる。
俺は踏ん張ればどうとでもなるが……俺のうしろには、アレシーナとセシリアがいる以上―――
「―――ぬんっ!」
俺は木刀を一振りして、こちらに迫る衝撃波を真っ二つに裂いた。
にしても、エリクラスの気合の入った一撃を受け切ったか。
なかなかやるな。
「一斉攻撃や、エリクラス隊長の攻撃まで……」
「硬い装甲に加えて、魔力で防御力をあげているようですわ」
セシリアとアレシーナがここまでの戦闘で、ゴーレムの特性を分析する。
強敵であることはわかったが、おっさんは自分のやるべきことをするだけ。
木刀をグッと握り、構えを取ろうとすると例の長官とやらがニヤリとした。
「お遊びはここまでだ―――魔導機械兵GR2! 【絶対零度システム】、始動!」
長官の号令とともに、広場全体に巨大な魔法陣が展開される。
ヒンヤリとした空気が肌を刺激しはじめた。
……なんだ? 冷気か?
次の瞬間、空気が一瞬にして凍りき、広場全体の地表を青白い氷が一瞬で覆い尽くす。
「なっ……!?」
「足が……凍って……動けない!?」
聖騎士も聖女も、全員が足元を氷に絡め取られ身動きが封じられる。
俺も足先から膝までをがっちり固定され、まるで氷の檻の中に立たされているようだった。
「バレッサ、炎を!」
「了解っす! エリクラス隊長!」
バレッサに続き、炎系の【加護】や魔法が次々と放たれるが、氷はびくともしない。
リンナの風も同じ。
「この氷……ただの氷じゃないですね。最上級魔法に匹敵する純度と質量」
エリクラスが信じられないといった表情を見せる。
ふむ―――
俺は木刀で軽く氷を叩いてみた。
コンと乾いた音とともに、わずかに亀裂が入る。
「ふむ……叩き割れんことはない。だが……」
力加減を間違えれば周囲にいる聖騎士、聖女たちまで巻き込んでしまうな。
これはなかなかに厄介だぞ。
「クハハハハ! 見たか、最新の魔導ゴーレム魔導機械兵GR2の恐ろしさを!」
「長官! 土属性フィールド発生装置、および損傷箇所の応急修理完了! 魔導潜水艦G201、潜航可能です!」
「よしよし……いいぞ」
「長官、急がねば王国騎士団も駆けつけるかと」
「ふむ、わかっておる。さぁ~~聖女たちを捕縛して艦内に連れていけ!」
船から新たな人影がゾロゾロと降りてきた。
手にはなにやら筒のようなものを持っている。
「総員聞け! 魔道具で聖女の足元を溶かせ! 多少の損傷はかまわん!」
「しかし長官、魔導機械兵GR2の【絶対零度システム】で凍結したものは、熱魔道具であっても相当時間がかかりますが」
「たしかになぁ~~時間がかかりそうな奴は、足を切ってもかまわん!」
「「「えっ……!?」」」
聖女たちの顔から血の気がスッと引いていく。
「なに、どうせ我らの装置に繋がれ、永遠に聖属性魔力を吸われるのだ。手足の一本や二本、あってもなくても同じことよ! クハハハ!」
「くっ……ふざけるなよ貴様らぁっ!」
なんとか氷から抜け出そうとリンナが必死にもがく。
「吠えるなおんな聖騎士、どうにもならんわ! お前たちにはあとで土属性魚雷をたっぷりくれてやる!」
俺は木刀を握る手に力を込める。
ここで一か八か、全力で地面を振り抜くしかないか―――
その時だった。
俺の手に、柔らかな感触が重なる。
すっと横から伸びてきた細い指。
「アレシーナ……?」
隣に立つ聖女が、俺の手を重ねるように握っていた。
その白い手はじんわりと赤く染まり、熱を帯びて温度が急激に上昇していく。
「ボクレン……ワタクシ、やってみたいことがありますの」
彼女の声は震えていない。澄み切った赤い瞳をまっすぐに向けてきた。
「……何をやるかは知らんが」
俺はにやりと笑い、力を込め返す。
「ああ、もちろんだ。思いっきりやってみろ。見せてやれ、聖女アレシーナの凄さを」
「ええ、もちろんですわ」
その言葉と同時に―――
ごうっ、と轟音が広場を揺るがす。
真紅の炎が、アレシーナの全身から爆ぜるように噴き上がった。
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