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第53話 突如として終わりを告げる学園祭、おっさん木刀を抜く

 学園祭二日目、朝にも関わらず昨日の余韻が残っているかのように賑やかな聖女学園。


「昨日のアレシーナおねぇ様、凄かったです!」

「ああ、そうだな。立派な舞台だった」


 俺の横で朝一から元気いっぱいに騒いでいる美少女は、第3王女のティナである。

 昨日アレシーナが聖女魔法演舞で大活躍したもんだから、興奮しすぎてあまり寝ていないらしい。

 俺は昨日に引き続きティナの護衛だ。そして、あと一人。


「おねぇさまって……聖女アレシーナはティナさまを完全におとしちゃったようっすね」

「バレッサさん、だってカッコ良すぎなんですよ! 見ました! おねぇさまの可憐で優雅な立ち振る舞い!」


 両手をブンブン振りながら力説するティナ。

 コミュ力の高いバレッサも、王女の天真爛漫さに若干押され気味だ。

 放っておくと延々と話が終わらなさそうなので、話題を切り替える。


「さて……今日もティナの希望で、いろいろ見て回るか」


「はいっ! 楽しみです、ボクレン様!」


 無邪気な目をキラキラさせながら、俺とバレッサの手を引く美少女。

 昨日は屋台を中心に回ったので、今日は学園教室での出し物や展示物をメインに見ていくことになった。


 中央広場から学生棟の方に向かう俺たち。

 ちなみにセシリアたちのメイド喫茶は、今日はやらないらしい。

 昨日客が殺到しすぎて、準備していた食材やらがすべて切れてしまったからだとか。


 まあ、あのクオリティだ。そうなるのも頷けるぜ。

 おっさんだってティナの護衛任務がなければ、今日も朝一で列に並んだだろう。


「で、ティナさまはどんな聖女になりたいんっすか?」


 バレッサが移動中の話題を提供する。この子のコミュ力は高い。王女であろうがこんな感じでスパーンっと聞いちゃうので嫌味もない。


「え? なりたいもの……?」

「そうっす。」


 するとティナは胸を張って、満面の笑みで言い放った。


「ボクレン様のお嫁さんですっ!」


「……」


「へぇ~。先輩も大変っすねぇ~」


 バレッサはニヤニヤと俺の横顔を覗き込み、わざとらしく肩をすくめた。

 ……くっ、このやろう。


「ティナ。そういうことじゃなくてな。将来どんな聖女になりたいんだ?」


「えぇ~……そうですねぇ……」


 小首を傾げてしばらく考え込むティナ。やがて、ぱっと顔を上げた。


「ボクレン様と一緒に旅する聖女がいいです! 王国すべての町を、ティナの【結界】で守ってあげるんです!」


 王族が旅に出れるかどうかは横に置いておくとして……ティナはすでに【結界】を使うことが出来る。しかもかなりの腕前だ。これはいい目標かもしれんな。


「なら、まずは学園でしっかり勉強せんとな」

「はいっ!」


 ティナの声は実に晴れやかで、その場の空気まで明るくするほどだった。なんだろうか、王様もだったが王族って声が特殊なんだよな。まわりに影響をあたえるっていうか。


「でも旅する聖女だと、魔物もいっぱい出てくるっすよ? ティナさま」


 バレッサが冗談めかして脅かすように言う。


「ふっふ~ん。ティナは魔物なんか平気です!」


 ティナは両手を腰に当て、ふん! と胸を張る。デカいのがブルンと揺れた。

 自信家のティナらしい発言だな。


「そうかそうか、ではどこから行くかな」

「う~ん、そうですね……まずは、聖女のコスメ展……でも聖女占いも気になってるし……」


 ガイドマップを広げて、指さし確認するティナ。

 学生棟もいくつかあるし、それ以外の建物を臨時で使用しているものもある。しっかり目的地を決めとかないと、行ったり来たりすることになるからな。ま……それはそれでいいかもしれんが。


 和やかな空気のまま、回る順序をあれこれ話していた矢先―――



 ―――むっ! この気配……



 それと同時に前方から、何かが割れる音が響いた。


「キャァアアア!」

「……グルゥウ」


 続いて悲鳴と唸り声が聞こえる。


「バレッサ」

「先輩……魔物っすか?」


 バレッサがすぐに表情を引き締める。

 王都に魔物だと? まだ住み着いて半年ほどだが、そんな話は聞いたことが無いぞ。

 しかもこの聖女学園は、学園長の強力な【結界】で守られているはずだ。正門ほか一部の門からしか学園には入ることはできないし、その出入り口には守衛が必ずいる。


 だが次の瞬間―――


「きゃあああっ!」

「あ、あんたたち聖騎士か! な、なんとかしてくれ~」


 一般市民が叫びながら逃げていく。その背後から、黒い魔物が姿を現した。

 完全に魔物だな。犬型か。その目玉をギョロつかせて、周囲を観察している様子。


「グルゥウウウ……」


「ひっ……!」


 ティナの顔から血の気が引き、一歩後ずさった。

 足がもつれて、その場にへたり込んでしまう。


「……大丈夫だ」


 俺は短く言い、ティナの前に出て木刀を構えた。


「ギュアァアア!!」


 牙をむき出して、こちらへ突進してくる魔物。


「ぬんっ!」


 ―――木刀一閃。


 魔物は抵抗する間もなく頭から地面に叩きつけられ、煙を上げて消滅した。


「ふはぁ……ボクレン様、すごぃ……」


 腰を抜かしたまま、ティナは憧れと安堵が入り混じったような眼差しで俺を見上げている。

 魔物を見たのは初めてなのかもしれんな。俺はティナの手を引いてゆっくりと起き上がらせた。ケガはしていないようだ。良かった。


「先輩、さすがに……おかしいっすよね。なんで王都に魔物が……? 仮に紛れ込んだとしても、学園長の【結界】を抜けられるはずないっす」

「そうだよな……」


 それにあの魔物、現れた直後はそこまで集中力がなかったかのように見えた。

 逃げてきた一般市民にもすぐには襲い掛からなかったし。なんだろうか、若干混乱していたかのような。



 ――――――むっ!?



「バレッサ。どうやら一匹だけじゃないぞ」


「えっ……先輩!?」


 俺の言葉と共に学園のあちこちから、怒号と悲鳴が重なって響いた。

 遠くで建物の壁が砕ける音、ガラスの割れる音。魔物の咆哮。人々の悲鳴。

 さっきまで笑い声に満ちていた祭の会場が、一変して地獄絵図に変わっていく。


 どこのどいつか知らんが、しらけたことをしてくれる。


 木刀を握る手にグッと力が入った。


【読者のみなさまへ】


第53話まで読んで頂きありがとうございます!

少しでも続きを読んでみたいなと思って頂けましたら、

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※本作はカクヨムにて先行公開中です。


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