第50話 ボクレンならば、SSランク素材と言えど1つぐらい持ち帰ってくるかもしれない……って、貴様ぁあ!どんだけ持ち帰って来るんだ!?
「ふぅう……今更ですが、私とんでもない人を聖騎士にしちゃったんだ」
「それはワタクシも同じ気持ちですわ。ボクレンは常に予想のさらに上をいきますもの」
しばらく固まっていた聖女たちの瞳に、生気が戻ってきた。
「ふふっ……」
お互いに顔を見合わせ、クスッと微笑みあう二人の聖女。
おお、なんかいつもの二人に戻ったな。
あと一人、聖騎士のレイニは……
「…………ふ……ふはぁ……とぅんっ! とぅんっ!」
ダメだ! なんかビクビク痙攣し始めてる!
小刻みに震えて、泡でも吹きそうな勢いだぞ!?
「はぁはぁ……耐性ついてたはずなのにぃ。セシリアさんとアレシーナさんより戻りが遅いなんて……」
タイセイ? モドリ?
とにかくちょっと休ませた方がいいな。
レイニを木陰で寝かせて、俺たちは焔玉果を収穫していく。
バックパックに実をしまうたび、カラン……と鈴の音みたいな余韻が広がった。果実の表面は透き通るように艶やかで、光を浴びると七色の輝きを放つ。
「わぁ……キレイ……! まるで夜空を閉じ込めた宝石みたいです!」
セシリアが焔玉果を両手で大事そうに抱え、頬ずりしそうな勢いで見つめている。
「そうですわね……。でも宝石と違って、命を燃やしているように見えますわ。ほら、果実の芯から小さな炎がゆらめいているようですもの」
アレシーナが真剣な顔で実を覗き込み、その綺麗な目を細める。
「うむ。いいこと言うな」
おっさんも思わず頷いた。
確かにこれはただの果実じゃない。生きた光そのものだ。
「よし、ちょっと実を割ってみるか?」
「え……いいんでしょうか?」
「これだけあるなら、ひとつぐらい大丈夫だ」
俺は木刀をスッと抜く。
「ぬんっ!」
かるく実を木刀で叩くと、パカッと実が割れる。同時に―――
パァンッ!
綺麗な虹色の火花が散って、辺りが一瞬だけ花火大会に変わった。
昼間なのに、強烈な光の輝きが映える。
「「わぁ~~っ!」」
思わず歓声をあげるセシリアとアレシーナの瞳が、星みたいにキラッキラ光ってる。
な? おっさんが木刀で軽く割っただけでこれだぞ。
魔力を込めて夜空に打ち上げれば、そりゃもう祭り会場どころか王都中が歓声上げるレベルだろう。
「……やりますわ」
アレシーナが真剣な眼差しで焔玉果を握りしめる。
「必ず優勝してみせますわ」
その隣で、セシリアもギュッと拳を握り―――
「これを夜空に打ち上げたら……絶対にみんな驚きますよ!」
「いいえ、驚かせるだけでは足りませんわ。魅了してやりますわ……必ず」
決意の表情を見せる2人の聖女。
聖女ふたりの目は、焔玉果に映る虹色の光を宿してキラキラ輝いていた。
まあ、あんなもん見たら、そりゃ気合が入るよな。
だがまあ―――これでいい。
おっさんの仕事は、彼女たちが全力を出せるように道を切り拓くことだ。
木刀を肩に担ぎ、俺はにやりと笑った。
「よし―――学園に帰るか」
おっさん、大満足の帰郷であった。
◇◇◇
聖女学園、エリクラス隊長の執務室にて。
「お疲れさまでしたボクレン。それに聖女セシリアとアレシーナも」
「で、どうだった? 見つかったのかボクレン?」
リンナ副隊長がせっついてきた。
まあまあ、待ちなさいよ―――よっと!
俺はバックパックを机の上に置く。
セシリアたちもそれに続き、次々に置いていった。
「どうだ? まあまあ獲れたぞ」
「…………」
「…………」
あれ? なんか反応ないな……って!!
瞳からハイライトが消えたんだが!?
なぜかフリーズした、エリクラスとリンナ。
もしかしてこれじゃないのか? もしくは少なすぎたか?
「えっと……すまん! もっと獲って来る!」
執務室から飛びだそうとした俺は、リンナに進路を阻まれた。
「も、もういい! 山盛りにもほどがある! これで勘弁してくれ、ボクレン!」
「え? 足りないんじゃないのか?」
「じゅぶんすぎますボクレン。まったく……ちょっと目を離すとこれですか……」
「貴様というやつは……たまには予想の範疇におさまってくれ」
うむ、どうやらこれでいいらしい。若干呆れられているが。
「ボクレンさんたちがぁ~帰って来たんですってぇ~~」
あ、この間のびした声は。
マシーカ先生が、執務室に入ってきた。
次の瞬間……先生の瞳からもハイライトが消えた。
またかよぉ。
何回フリーズするんだ。流行ってんのか、これ。
「ところでレイニはどうしましたか?」
「ああ、彼女なら少し疲れてしまってな。報告は俺がやるからって休ませたよ」
レイニのやつ、虫嫌いなのか、ゴブリン嫌いなのか、トカゲ嫌いなのか、原因は定かではないがすさまじく消耗してたからな。森の空気が合わなかったのかもしれん。
そこへ再び扉の開く音……聖女マルナが入って来た。
「失礼します。マシーカ先生がこちらにいると聞いて……あ、セシリア! アレシーナ!」
再会を喜ぶ聖女たち。マルナの手にはメイド服が握られていた。
おお! 完成したんだな。
服を体にあわせて、キャッキャウフフする美少女たち。なんだろう、おっさんも楽しみにになってきた。ウキウキってやつだ。
学園祭は、たしか1週間後だったな。
「あ、そうでした。ボクレン、あなたに手紙がきてますよ」
エリクラス隊長から一通の封書を受け取った俺。
うわぁ……見たくない刻印ついてるぅうう……
ヤバい、思い出した。
そうだった。森ではしゃいですっかり忘れてたけど。
ガサガサと取り出した厳かな便箋に目を通す。
『わたしのボクレン様~~学園祭、行きま~~す♪
あなたの第三王女ティナより♡』
よし、とたんにウキウキしなくなったぁ。
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