第49話 え、千本ノック? ひぃいい、ドラゴンの火球になにしてるんですかぁあああ!!
「もう無理ぃいい~~さすがに終わったぁ~~わあああん!」
「あ、あ、あ、アレシーナさん、【浄化】です、【浄化】はりましょう! あ、えっと【治癒】でした!」
「落ち着きなさい、セシリア! こ、こ、こういう時こそ深呼吸ですわ! さあ、レイニさんも一緒にですわ!」
大量の赤トカゲを見て、パニックに陥る美少女たち。
……まあ、わかる。
トカゲが好きな女の子はそういないだろう。一匹ならともかくゾロゾロと湧いてでたとなれば、そりゃ叫びたくもなるわ。
―――ならば。ここはおっさんの出番だな。
俺はゆっくりと木刀を抜き、3人の前に立つ。
「――――――グゴォオオオ!!」
「――――――グゴォオオオ!!」
「――――――グゴォオオオ!!」
「――――――グゴォオオオ!!」
「――――――グゴォオオオ!!」
「ふぁあああ! すべてのレッドドラゴンが、豪火球の準備してるうぅうう!!」
だから心配するなって。大丈夫だ。
牙の奥から赤い炎を宿すトカゲたち。空気が一気に熱気を帯び、真っ赤な光が森を照らし出す。
おうおう、トカゲといえどこれだけ集まると、雰囲気が出るな。
「ぼ、ボクレンさん……さすがに」
「こ、これはいくらなんでも……ですわ」
「ひぃあああ! 焼かれるぅう……! 焼肉になるうぅう!」
セシリアたちの悲鳴をかき消すように、トカゲたちの喉奥が赤々と輝きを増す。次の瞬間、爆炎の火球が一斉に吐き出された。
いくつもの火球が俺たちに迫る。
「懐かしいな……」
俺は木刀を肩に担ぎ、軽く腰を落とした。
「……よし、バッティング練習開始! よろしくお願いします!!」
ピシッとトカゲたちに頭を下げる。
「な、なんですか、ボクレンさん? 誰に言って……?」
「予想不能すぎですわ! ボクレン!」
「ひぃいい、ドラゴンに一礼してるぅう、ボクレンさんが壊れたぁああ!」
いや、壊れちゃいない。これは俺のクセだ。
オヤジに叩き込まれた、大事な礼儀なんだ。
すぅ~っと息を吸い込むと、木刀を右に引き、両足を大地にがっしりと固定する。
身体は右に捩じりきって、顔はトカゲたちの真正面を向く。
そして、迫り来る火球を―――
「――――――ぬんっ!」
振り抜いた木刀が唸りを上げて、ズバァン!と火球を叩き返す。
「ひぃいいいい! ドラゴンの火球を打ち返したぁあああ!」
「ぼ、ボクレンさん……なにやって……」
「ああっすまん! ちょいまがちまった」
「それはどうでもいいです!」
どうでもいいことはない……芯に当てないと、吐いた相手には返せない――――――ぬんっ!
「――――――ギャンッ!!」
2度目に俺が打ち返した火球は、別の赤トカゲに命中した。
ぬぅ……またミスった。感覚が鈍ってやがる。
だが、懐かしいな。
「これ、トカゲノックだ」
「ええっ、もしかして鍛錬の一種ですか!?」
セシリアが目を丸くして声をあげる。
「ああ、昔オヤジに良くやらされたんだ。トカゲの火球を全弾はじき返す鍛錬だな」
「ええぇ……それ鍛錬っていうか……」
「娯楽が混ざった面白い修行だろ。これはおれも好きだったからな。王国でも流行るかもしれんぞ」
「流行らないですよ!? ボクレン家は超超特殊ですからね!?」
え? そうなん?
もしかして野球は女子受けが悪いのか? 面白いし、素晴らしいスポーツだけどなぁ。
とそんなやり取りをしつつも……
「ぬんっ!」「ぬんっ!」「ぬんっ!」「ぬんっ!」「ぬんっ!」
ひとつ、ふたつ、みっつ……怒涛の勢いで飛んできた火球が、まるで野球ボールのように逆方向へ打ち返されていく。
何発目かで……
「――――――ギュガアアァ……ァ……」
よっしゃ、ジャストミート! そして、打ち返し成功!
ああ、木刀振るたびに思い出してきた。
ここは俺のホームグラウンドだということを。
火を吐くトカゲに、木刀スイング。
よく見た風景、ずっとやってきた鍛錬。
まさに日常だ。
「ぬんっ!」「ぬんっ!」「ぬんっ!」「ぬんっ!」「ぬんっ!」
「―――ギャンッ!!」
「グバァアア……アア……ァ」
「グホォオオ……ッ!!」
いい感じだ! のってきた!!
俺はただただ無心で木刀を振り続ける。
火球が打ち返されて、トカゲの群れを直撃するたび、鈍い唸り声と炎が空を覆った。
やがて最後の一発をフルスイングで打ち返すと、轟音とともにトカゲたちはまとめて爆炎に呑まれ、黒煙をあげて空から落ちていった。
ぷはぁ~~気持ちいい! やっぱ森は最高だな。
さてと―――
「おわったぞ~~」
「…………」
「…………」
「…………」
あれ? 返事がない??
3人は固まったまま、無言で俺を見ていた
よく見ると、全員の目からハイライトが消えている。
え? なに……怖い……
もしかして、おっさんばかり楽しみすぎたのか……。
【読者のみなさまへ】
第49話まで読んで頂きありがとうございます!
少しでも続きを読んでみたいなと思って頂けましたら、
☆評価やブックマークをもらえると非常にうれしいです。
評価はページ下部の【☆☆☆☆☆】をタップするだけです(簡単です!)
お好きな★を入れてください!
すでに評価やブックマーク、感想コメントで応援して頂いている皆様へ
めちゃくちゃ嬉しいです! ありがとうございます!
みなさまの評価やブックマークが作者の大きな励みになります!
これからも面白いお話を投稿できるように頑張りますので、
引き続き応援よろしくお願いします!
※本作はカクヨムにて先行公開中です。




