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第44話 初めてを奪われた第三王女ティナ(いや、言い方おかしくない?)

「ホンジツハ、オマネキイタダキ、キョウシュクキワミノアザース、デアリマス」


「なんじゃボクレン。意味不明なこと言っとらんで座らんか」


 王様のツッコミにより、俺は席につく。

 せっかく晩餐会の直前にアレシーナが特訓してくれた挨拶だったが、秒で撃沈した。


 全然できんかった。


 隣に座るアレシーナに「すまん」と呟くと。「それもまたボクレンらしさですわ」と優しい呟きが返って来た。


 めっちゃええ子や。


 そして、ついに始まってしまった。晩餐会という名の拷問タイム。

 俺の隣はアレシーナ、さらにその隣にセシリア、エリクラス隊長、リンナ副隊長と続く。

 テーブルを挟んで向かいは、王様に王子さまと剣聖じいさん、あと何人か知らんおっさん。たぶんお偉方貴族さまだろう。


 つまり俺側が学園関係者、むかいが王族・お偉方ご一行。


 ……のはずだったのに。


「まあまあ~ボクレン様、たくさん食べて楽しみましょうね♪」


 緑の髪をふわりと揺らせて、にこやかに笑う美少女。


 なぜ王女がこっち側にいるんですか……。


 俺のもう一方の隣には、第三王女のティナが座っていた。

 会場入りした瞬間、強引に座っちゃったのだ。


 誰か止めろよ。自由すぎるぞこの子。


 にしてもなんでおっさんの横に来たがる?

 試合後に風呂も入っとらんぞ。おっさん臭、間違いなく出てるぞ。

 いいのかよぉ……


「ティナ王女殿下、やはりお席を移られた方がいいのではないでしょうか?」

「王女殿下というお立場から考えても、その方がよろしいですわ」


「あら、なぜです? 本日の主役ボクレン様の横で、た~~っぷりサービス差し上げる。それのなにがいけないのかしら」


 ティナの言葉にセシリアとアレシーナが「むぅうう」と唸る。

 またバチバチしはじめた……


 まったく。しゃーないな。


「こら、3人ともやめるんだ。今から飯なんだから。そんな気分で食ったら美味いもんもマズくなるぞ」


「はぁ~~い。ボクレン様、ごめんなさい。セシリアさん、アレシーナさんも仲良くしましょうね」

「え、ええ……わかりました」

「もちろん、ワタクシは元より王女殿下に忠誠を誓う身。異論などあろうはずがないですわ」


「よしよし、歳も近いんだし。飯は仲良く食った方が美味いからな」


 ふぅ、これで良しと。


 ちょいちょいと俺の袖を引っ張るアレシーナが小さく呟いた。


「ボクレン、素に戻ってますわよ」


 んん?


 ああっ! やべぇ!


 おっさん、いつも通りやん!

 王女たしなめて、飯が美味いのどうのと講釈垂れて……


 エリクラス隊長は下を向き……リンナはすげぇ顔で睨んでる。

 テーブル向かいのお偉方貴族さんたちも、全員青くなってらっしゃるではないか。


 俺が誰よりも青くなりはじめていると、王様がフォフォフォと笑った。


「よい、試合も非公開じゃった。この場も無礼講じゃ。ボクレン、お主の好きなように話すがよい」


 おおぉ……なんかおっさん許されたっぽいぞ。


「良かったですねボクレン様。あ、私のことは引き続き「ティナ」とお呼びくださいね」


 悪戯心を含んだように微笑む第三王女。

 この子が登場してから、おっさん心が休まる暇ないんだが……まあ、今日一時の事だしなんとか乗り切ろう。

 さっさと飯食って帰るんだ。


 その後は思ったよりも静かに進む晩餐会。


 あれ? そんなにビビるほどでも無かったかな。


 次々と出てくる料理は、豪華なうえに上品さをあわせもった品ばかり。

 エールは出なかったが、ワインが超絶に美味い。

 間違いなく、今日しか食べることはなさそうなやつだ。


 左右にズラッと並んだ食器に面食らったが、隣のアレシーナが新しい皿が出るたびにどの食器を使用するか教えてくれた。


 さすがのおっさんも、ナイフとフォークの使い方ぐらいはわかるぜ。

 などと調子に乗っていたのだが……


「うおっ、なんだこれ?」


 金ぴかの皿に、得体の知れん食い物がのってやがる。

 刻まれた具材を丸いパンみたいな皮が覆っている。上に変なソース、おっさんの手には細いフォーク。


 ……これ、どうやって食うんだ?


「ボクレン、これはこうやって……ほら、真ん中をフォークで軽く押すとソースが染み込みますの」


 すると隣のアレシーナが実戦してみせてくれた。


「お、おう……こうか?」


 ぐしゃっ。


 うおっ、ムズイ!


「……もう少し、力を抜いて」


 アレシーナがくすりと笑いながら、手をそっと添えてくる。

 白い指が優雅に動き、まるで舞を見てるみてぇだ。


 なんだこれ……食べ方教わってるだけなのに、ドキドキするぞ。


 あと隣から「むうぅ……」って声が聞こえるけど、知らんぷりしよう。

 だってこれはおっさん悪くない。こんな料理は黒豚亭にもないし。絶対庶民料理じゃないからな。


 アレシーナのあいの手で、なんとか良く分からん料理を口にしたおっさん。


 うまぁああ……


 なんこれ。これ作った人、天才だな。


「フォフォ、気にいったようでなによりじゃな」


 俺の緩みまくった顔面を見てか、王様が満足げに笑った。

 そんな王様が話を続ける。


「どうじゃボクレン。聖女学園は楽しいか?」


「ああ……最高の職場だ……です」


 おっと、さすがに無礼講と言えども気をつけんと。


「フォフォ、そうかそうか。では当面は辞める気もないと」

「そうだな。俺はこの職場に就くことで運を使い果たした。だから転職する気はないよ……です」


「できもせん言葉遣いはいらん。ということは来年も学園におるのだな?」

「ああ、そのつもりだ」


 本当に俺は運がいい。

 この職場は天国みたいなもんだ。


 俺の聖女は2人とも天使だし。

 聖騎士や他の聖女たちも、美人美少女だ。

 しかも木刀振ってるだけで給料出るし。時にはボーナスまで出るんだぞ。


「これで文句言ったら、バチが当たるよ」


「ふむふむ、そうかそうか。時にボクレンよ。我が王族にも聖女が誕生してな」


 はい? 


「つい半年前に聖属性魔力が発現したのじゃ」


 あ……なんか嫌な予感がしてきた。


 俺の横で袖をクイクイ引っ張る美少女。

 アレシーナではない。


 としたら……もうこの子しかいない。


「じゃ~~ん、わたしで~~す♪」


 エメラルドグリーンの髪をふわりと揺らせながら、自分の小顔にダブル人差し指を向ける美少女。


 ……そうなんだ。


「まあまあ、ボクレン様ったら。そんなに嬉しいんですか? 聖女ですよ、ティナは聖女のたまごなんですよぉ~~♪」


「あ、アレシーナ……」

「ボクレン、ワタクシたちも観覧席で知りましたの。間違いなくティナ王女殿下は聖属性魔力を持っていますわ」


 間違いないのか……。


「ボクレン様ぁ~観覧席を囲っていた【結界】、わたしが張りましたぁ!」


 そうかあの【結界】はティナが張ったんだ……。


「フォフォ、ティナには【結界】に才があるようでな」


 まあ確かに、学園に入ってもいないのにすでに使えるとか凄いな。


「いままでティナの【結界】を破った者は城内にはおらんかったのじゃ」


 ええ……それは流石にないんじゃないか。

 だって王城だぞ。それなりに凄い奴らはいるだろう。


「はいっ! ティナは凄いんです! って調子乗ってたけど……井の中の蛙でした!

 だって、ティナの【結界】、初めてボロボロになっちゃいましたから♪」


 ああぁ、思い出した。

 そういやボロボロになってたな……【結界】。


「ティナは、ボクレン様に初めてを奪われたんです♡」


 言い方ぁああ! 

 おっさん奪ってねぇから! あとセシリアとアレシーナの顔が怖い。


「待ってくれ。別に俺ってわけじゃ……どっちかっていうと剣聖のじいさまが……」


「いいえ、ボクレン様の「ぬんっ!」で壊れましたよ♪」


 ダメだ、おっさんのいう事まったく聞いてくれない。この子。


「こんなの初めてなんです……」


 ティナの瞳が♡に変わっているような。


「ティナは来年、聖女学園に入ります。だから……」


 だからなんだ?

 嫌な予感がマックスだが、外れてくれ。



「来年入学した際には――――――ボクレン様を聖騎士にしま~~す♪」



 しま~す♪ じゃないんだよ。


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