第43話 おっさん、晩餐会に巻き込まれる(なお聖女2人と姫の戦いにも巻き込まれる)
「凄いぞボクレン、元剣聖さま相手に引き分けとはな!」
闘技場から降りた俺に、リンナが興奮した声をあげる。
「ボクレンさん、カッコよかったです!」
「素晴らしい試合でしたわ。ボクレン!」
そして俺の天使たち聖女2人も満面の笑みだ。
「いやぁ……なんとか試合になったな」
にしても……
とんでもないじいさまだった。
もう随分と歳なのにあの強さだ。現役であったなら、俺は即ボコボコにされてただろう。
ふぅ……久々にやり切った感があるな。
すがすがしいぜ。
「さあ、ボクレンさん行きましょう」
「そうですわね」
2人の聖女が手を差し伸べてくる。
やだ。超かわいいんですけど。この子たち。
「うむ、帰るか」
さぁ~~ヤバイ仕事も終わった! やったぜ!
あとはエールでも飲んで……
「え? 帰りませんよ」
……んん?
「いや、学園に帰るだろ。なんか寄り道したいのか?」
そうか、このまま飲み屋にGOという選択肢もあるのか。
いやいや、この子たちの護衛任務があるしな。飲むのは夜まで我慢だ。
「だって今から晩餐会ですよ。ちょっと早いですけど」
はいぃ?
バンサンカイ?
「そうですわよ。王族のみなさまとお食事ですわ」
聞いてないよぉおおおおお!
「ええぇ……そんな話あったのか?」
ないよ、試合して終わりだよ。
「だって言ったら、ボクレンさん逃げるから」
「試合に集中できましたでしょ?」
はめられたぁああああ。
くぅ……こんな天使なのに、こんな綺麗な花なのにぃ。
おっさんを陥れるなんて……。
王族と飯とか無理だって。
マジで。
ああ、全然すがすがしくねぇ。
「まあまあ、そばに私がいますから」
「それに、王族の方が隣にくることは流石にないと思いますわ」
セシリアとアレシーナが「大丈夫ですよ」と微笑む。
「しかし、貴様のマナーでは学園聖騎士の恥になりかねんな……」
リンナの言う通りだ。
おっさん、晩餐会とか出たことない。ていうかお貴族さまと食事とかしたことないんだよ。
「それはワタクシに任せなさい」
アレシーナがズイと胸を張る。
「マナーなら安心なさい。ワタクシがボクレンの横につきますわ」
「なるほど、聖女アレシーナならば熟知してそうだな」
「たしかに、アレシーナさんは夜会の経験も多いでしょうし。これで万全ですね、ボクレンさん」
アレシーナ、セシリアぁあ。
なんて優しい子たちだろ。おっさん泣きそうだよ。
「うん……がんばる」
「まったく、凄いのかただのおっさんなのか、本当にわからんやつだな」
リンナ、ただのおっさんだからな。
とにかく、おっさん精神は持ち直した。
ようは飯食って帰ればいいだけなんだろ。
―――よしっ! 行くぞ!
この気持ちのまま、乗り切る!
と思っていた矢先―――
「ああ、あそこにいました! ボクレン様ぁ~~♪」
「ひ、姫さまっ、そのような……はしたないですよ!」
なんかドレスをまくり上げて、全力疾走してくる娘がおるんだが。
うしろから必死に追いかけるメイドさん。ヒメサマ言うてますやん。
「まあまあ~~先ほどの試合~~最っ高ううでした!」
と叫びながら助走をつけて地を蹴り飛ぶ美少女。
と、俺の前に立ちふさがる影2つ。
「「――――――姫殿下! お待ちください!!」」
息もピッタリに、跳んできたお姫様をブロックせんとするセシリア、アレシーナの2人。
バルルルン!!
お、おい……こ、これは!?
セシリアとアレシーナのデカい膨らみと、これまた負けず劣らずの姫様膨らみがブルンと揺れる。
跳んでる姫様が「むむっ、上等です!」と言いながら、セシリアとアレシーナの膨らみにダイブした。
6つの膨らみが互いの存在を主張し合う。
バル、バルルルン!!
ふはぁ……こ、これは凄い戦いだ。
セシリア・アレシーナ連合が、お姫様を押し返した。バルルルンって音とともに。
「ひゃん!」
姫様がうしろに弾き飛ばされる。
いかに姫のモノが凄いと言っても、セシリア・アレシーナも規格外なのだ。
勝負ありだな……って!
これは飛びすぎなのでは?
俺がサポートに入ったほうが良いのだろうか。
でも、おっさんがお姫様さわったら、即打ち首ものではないのか……!
「ボクレン、おまえはさわるな!」
そんな俺の気配を察してか、リンナが素早く移動してバルんと弾かれた姫様を受け止めた。
「あんっ!」
衝撃に姫様が変な声をもらす。
ついでに、ブルンブルン揺れとる。
勝敗は決したかに見えたが、まだまだやる気ということなのか。
だが、次の瞬間おっさんの視線は顔ごと姫様から外された。
ぐりんと回された方向には2人の美少女が。
「どこ見てるんですか? ボクレンさん」
「ワタクシので不満ですの?」
一戦交えた歴戦の勇者……じゃない、聖女2人だ。
「い、いや……みんな無事で良かったなって……」
もの凄いジト目を二人から浴びせられる。
だって、見るなって方が無理なんだよぉ。
ふぅ……とにかく、事なきは得たようだな。
おっさん、とんでもない試合を見させてもらった。
「ひ、姫様ぁああ~~~はぁはぁはぁ、急に走り出してはなりません……はぁ」
メイドさんが、肩で息をしながらようやく追いついた。
おそらくはヤンチャなお姫様なんだろう。
試合前の挨拶時には、猫をかぶっていたってわけか。大変だな、このメイドさんも。
リンナから降ろされたお姫様。
ドレスをただして、お人形さんのような整った綺麗な顔をこちらへ向ける美少女。
「改めまして、ティナ・ロイ・ルハルトです! ルハルト王国の第三王女やってます!
気軽にティナって呼んでください♪」
陽光を受けてきらめくエメラルドグリーンの髪が、肩の後ろで元気よく跳ねた。
歳はセシリアたちより1つ下の15らしい。
髪色と同じ色の瞳は宝石よりも鮮やかで、面白いものを見つけた猫のようにきらきら輝いている。
王族のドレスを着ていても、どことなく落ち着く気配がなく今にも駆け出しそうだな、この子。
あとデカイ……
なにがってのはもう言わん。
「あ、ああ。よろしくティナ」
「「姫殿下……ご機嫌麗しく」」
セシリアとアレシーナがそろってカーテシーを披露する。
「まあまあお二人の聖女様、かたいのはなしでいいわ。にしても……さきほどは素晴らしいファイトでしたね。わたしの愛を止めるなんて」
「姫殿下こそ、素晴らしいモノをお持ちですわ。ですがボクレンはワタクシの聖騎士ですの」
「姫様が殿方に飛び付こうとするなんて、ダメだと思います」
「まあまあ、手厳しい聖女様たちですね。第二戦が楽しみです♪」
「「こちらこそ♪」」
良く分からんが、なんかバチバチしてらっしゃる。
3人とも度がつくほどの美少女笑顔だが、内から漏れ出る気配がヤバすぎる……怖い……
とにかくおっさんは姫殿下と距離を取ろう。
そしてさっさと飯食って、帰る。
うん、それがベストだ。
あれ? 腕が……
「さあさあ、参りましょう。わたしのボクレン様♪」
―――!?
速攻で腕つかまれてたぁあああ!
しかもなんかグイグイ巻き込んでくるぅうう!!
「あ、あの王女殿下……近すぎると思うのだが」
「あら、いやだボクレン様。ティナってお呼びになって」
「えっと、ティナ。もう少しだな、距離を」
「あら、もっと近くにですって! やん、積極的です~♪」
うおぉおお……もっと寄ってきた!
当たってるんですよぉおお!
持ち直したかに見えたおっさんの精神は、早くも粉砕された。
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