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第41話 決戦、元聖騎士最強と木刀おっさん

 ―――ズバァンッ!!


 じいさまの斬撃が、稲妻のように空間を裂いた。


 剣聖の一太刀。

 その一撃をおっさんの木刀が、真正面から受け止める。


「ぬんんんっ!!」

「ふんぬぅううう!!」


 じいさまの剣とおっさんの木刀が交差した瞬間―――

 爆風のような衝撃が闘技場を包んだ。


「な、なんだ今の音……魔法か!?」

「いいや……違う……! 剣と木刀が、ぶつかっただけだ……!」


 王族護衛の兵士たちから、唖然と声を漏らす。


 すげぇ……。


 打ち込むたび、受けるたびに、俺の相棒である木刀がビリビリ震える。


 この感覚だよ。


 オヤジと幾度となく打ち合った時と同じだ。


「――――――ぬんんんっ!」


 いい振りができてる……


 こりゃたまらん!


「――――――ふんぬぅうう!」


 じいさまも負けじと気張る。


 その気迫で闘技場が揺れる!


 じいさまの斬撃、最高じゃねぇか!!


「ふん、わしの一撃がそんなに嬉しいのか。まったく期待通りのやつじゃわい」


 ははっ―――

 どうやら笑みがこぼれていたらしい。



「父上……これは……人の戦いなのか……」


「ぬぅ……凄まじい。久しぶりに見るが、さすが元剣聖。じゃが……。

 あのおっさんはなんじゃ……こんな男が名も上げずに埋もれていたとは、信じられぬわ」


「凄いですわ……あの木刀おじさま……!」


 おいおい、王様をはじめ王子、王女まで立ち上がっているじゃないか。

 試合に集中しているので、会話は良く聞こえんが。

 王族ご一行も少しは楽しんでくれているってことか。


 闘技場の地面が、軋み、震え、砕け始めていた。

 空気が熱を帯び斬撃のたびに風が爆ぜる。


 俺は木刀を振りまくる。


 じいさまの斬撃が、振るうたび威力を増していく。


 うける木刀にじいさまの気迫が響く。

 のってきたのか。


 引退してから長いのだろう。

 早々かつての感覚は取り戻せないはず。


 にもかかわらず……


 マジですげぇえ……このじいさん、もう歳のはずなのに。


 やはり世の中には凄い奴が山のようにいやがる。


 さらに斬撃が鋭さを重さを増していく。

 こんな手応え、オヤジとの鍛錬以来だぞ。


「ボクレン、おぬし……【加護】は使わんのか?」


「んん? 【加護】って……ああ。だったら、もう貰ってるぜ」


 俺は、くいっと観客席を指さす。


 そこにいるのは―――

 満面の笑みで手を振る聖女セシリア。

 自信の立ち姿で赤い縦ロールを揺らす聖女アレシーナ。


「セシリアは、素直で頑張り屋さんの加護。アレシーナは力強く気高い決意の加護。

 ……どっちも、俺にとっちゃ最高の力なんだよ」



「――――――ぬんんんっ!」



 俺の一振りで、じいさまの剣がうしろに弾かれた。


 うっし! おっさんもエンジンかかってきた!


 んじゃま……


「どんどんいくぞ~~~!!

 ぬんっ! ぬんっ! ぬんっ! ぬんっ! ぬんっ!!」


「……ぬぅ」


 俺の打ち込みに、防戦にまわりだしたじいさま。

 だが、すべてを確実に受け止めていく。


「じいさまなのにすげぇ動きだ」


 動きに無駄が全く無い。

 こんな高齢で、どういう身体なんだよ。


 そうなじいさまガスティークが、俺の木刀を受け際にふふっと声を漏らした。


「……長年生きてきたが、そんな【加護】があるとはのう」


 いやいや、何言ってんだ。

 これ以上の【加護】なんかないだろ。

 美少女2人から全力応援されてんだぞ。これで奮い立たなければバチが当たるぞ。


 純白の制服を揺らして、俺を見つめる2人の美少女。


 いや、もう最高以外のなにものでもない。


 ―――よっしゃ! バンバンいくぞ!


 俺は木刀を振りまくった。



「ぐっ……斬撃が……さらに重くなっておる……!

 なんというデタラメな男じゃ、ボクレン……!!」


 じいさまが一歩、引いた。

 だが、その目は死んでいない。むしろ鋭く光っている。


「やれやれ……この力は二度と使わぬつもりだったのじゃがな……。

 ――――――やむを得ん!」


 元剣聖じいさまが、再び構えを取る。



「聖女よ、我が声に応えよ。

 その祈り、清き刃に祝福の火を灯せ。


 ―――――――――剣魂解放(ブレイドブースト)!!」



 じいさまの剣が唸る。

 大気が裂けるような爆音が轟くとともに、闘技場全体が真っ白な光に包まれた。



「えええ!? こ、これ【加護】を……複数発動してます!?」

「な、なんですの! こんなの聞いたことありませんわ!!」


「これは、ガスティークの【二重加護】じゃ。まさかここで見ることになるはのう……」

「わたしも実際に見るのは初めてですね。おじいさまがここまで本気を……!」


 観客席から騒がしく声があがる。


 そうか……じいさまいい年こいてるくせに無理してくれたんか。


 闘技場を包んだ白い光が、一点に集約されていく。

 その先は―――


 じいさまの剣。


「その剣……すげぇ気合だな」


 交えてもいないのに、剣の闘志がビシビシと伝わってくる。


「わかるかボクレンよ。これは、わしの2つ目の【加護】剣魂解放(ブレイドブースト)じゃ。

 一定時間、己の剣の力を極限まであげることができる」


 まわりの光りが集まるにつれて、じいさまの剣にグングン力が宿っていく。


 最後の一撃を出す気だな。


 2つの【加護】か。


 ならば俺は……


「―――セシリア! アレシーナ!」


「はいっ、ボクレンさんなら大丈夫ですよ! 信じてます!」

「さっさと木刀振って終わらせなさい。ワタクシの聖騎士ボクレン!」


 よし、気合は十分貰った。さぁ――――――

 木刀を、ゆっくりと相手に向ける。


 全身の気が、収束していく。

 スゥ~息を吸い込む。


「ふはは、おぬし気力が充実しておるな」

「ああ、【加護】を2つ持ってるのは、あんただけじゃないぜ」



 俺はただ静かに、構えをとった。



「さあ……じいさま。決着をつけようじゃねぇか」




【読者のみなさまへ】


第41話まで読んで頂きありがとうございます!

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※本作はカクヨムにて先行公開中です。


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