第38話 戻って来た日常→からの……ヤバイ手紙がきた
「ぬんっ!」「ぬんっ!」「ぬんっ!」
木刀を振るおっさん。
いつもの朝練素振りである。
俺の隣では、セシリアが魔力錬成を繰り返している。
はじめは10秒ほどしか持たなかった魔力錬成も、いまでは1分以上続けらえるようになっていた。
やはり繰り返しの反復訓練は大事だな。
そして、そんないつもの朝練風景にもう一人……
「ふぅ……次は魔力錬成ですわね」
ランニングから戻って来た、縦ロールお嬢さまがセシリアの横に立つ。
聖女アレシーナだ。
元より、朝のランニングでよく見かけていたのだが、俺が彼女の聖騎士になったことでランニング以外の朝練も積極的にやるようになった。
この子もセシリアに負けず劣らず、頑張り屋さんだな。
2人並んで魔力を練る美少女たち。
セシリアの周囲には、いつもの白と黒が入り混じったまだらな魔力がわずかに見える。
以前、彼女は演習でとんでもない魔法をぶっ放した。
だが、あれが常時使えるのかと言うと。どうやら違うらしい。
通常レベルの【浄化】【治癒】【結界】は使用できるようになったが、あのドデカイ魔法を使うには相応の魔力を練らないといけない。
さらに、セシリア特有の聖属性魔力。たしか「はじまりの聖女」と同じやつだったか。
これに関しては切迫した状況など、セシリアの何かが奮い起こされる場面になると、「はじまりの聖女」たるはじまりの魔力が発現するのでは?
と、マシーカ先生が言ってた。
まあ細かい事はおっさんもわからんけど、セシリアは間違いなく前進している。
なので今まで通り朝練しっかりやって、学園でしっかり学ぶべきことを学べばいい。
とにかく今のセシリアはとても前向きだ。
だから、おっさんはゆっくり見守ってやればいいと思っている。
そして、もう一人の俺の天使であるアレシーナ。
この子からあふれ出る魔力は……うっすら赤い。
燃えるような赤い縦ロールがトレードマークのアレシーナなので、はじめはその髪色がそういうふうに見えているのかと思ったが……やはり違う。
他の聖女の魔力の色もたまに見るけど、みんなが同じ白色の輝きだ。
マシーカ先生に一度聞いたことがあるが、個人差なのか理由はわからんらしい。
どうやら俺の天使たちは、2人とも個性的なようだ。
などと2人の様子を微笑ましく見守ていたおっさんだったが。
う~~む、二人ともデカい……
何かしらの動作をするたんびに、揺れてらっしゃる。
なに食ったらこんなことになるのだろうか。
セシリアはまさしく小さな天使という言葉がピッタリだ。でも一部デカい……。
アレシーナは、ある程度背丈はあるがシュッと引き締まったプロポーション。まるで彫刻家が理想を刻んだかのような、すらりとした天使。でも一部が突出してデカい……。
おっさん、人体の不思議に「う~む」と唸っていると。
「どうしたんですか? ボクレンさん?」
――――――ギクっ!
「いや、な、なにも無いぞ……ふ、ふたりの朝練をだな……」
ズイっと近寄って来るセシリア。
ヤバい、膨らみに気を取られすぎたか……。
「なんか怪しいです。クンクンクン……」
ふはぁ! でた、セシリアのクンカクンカ!
「むぅ……女の人のにおいがします。しかもかなりの数……」
「ギクっ……いや、昨日は飲んだだけだぞ。同僚たちと」
相変わらずの名犬ぶりだな。
だが、邪な事はなにもないから、おっさんは堂々と飲んだと言えるのだ。
「そうですか。でも飲みの場だからって、過度なスキンシップはダメですからね」
ギクっっ!! 昨日はみんな深酒で近かったからなあ。
でもおっさんは悪くないと思う。いい匂いだったけど。
「ボクレン、浮気は許しませんわよ」
アレシーナまで疑いの目を向けてきた。
ちゃうやん、おっさんエールのみに行っただけやん。
「浮気だと! 貴様ぁ、見境なく変態行為をしはじめたのか!」
そこへどこから来たのかリンナまで加わった。
ていうか浮気ってなんだよ。おっさん誰も嫁にもらっとらんぞ。
「いや、昨日飲んだじゃないか。リンナはベロベロで―――いてぇえ!」
「た、たしかにそうだったな。2人とも安心してくれ。あたしがボクレンを見張ってたからな」
セシリアとアレシーナは、リンナの良く分からん言葉に納得したようだ。
おっさんの言葉はまったく信用されてないのが悲しい。
「んで、どうしたんだリンナ。まだ早朝だぞ」
「ボクレン、至急隊長のもとへ行け」
ああ、そういえば昨日リンナが朝一で行けと言ってたな。
にしても、こんな早朝から行くんかいな。
「それから、聖女セシリアとアレシーナ、2人もだ」
◇◇◇
「ボクレン、早朝から呼びつけてしまいましたね。聖女セシリアとアレシーナも」
「いや、朝練してただけだからな。それよりも何か用があるんだろ?」
プラチナブロンド揺らして、エリクラス隊長が一通の手紙を差し出す。
「俺宛? 誰からだ?」
なんだろう? 俺に手紙を出してくるやつなんていたかな?
にしても……やけに立派な手紙だな。高そうな紙使ってやがる。
「ぼ、ボクレンさん、その手紙って……」
「まあ……凄いですわね。ボクレン」
え? なにが?
「手紙にスゴイもクソもないだろ」
ていうか開けずらいな、これ。
開けづらい封をバリっと破り、ガサガサと中身を取り出す。
「なになに。え~っと…………」
「中身を拝見しましょうか? ボクレンさん」
俺は、「すまん」と言いながら、セシリアに手紙を渡した。
なんだが普段聞かない単語が並びすぎて、おっさんでは解読不能だったよ。
「ところでこれは誰から来た手紙なんだ?」
「ふふ、陛下ですね」
エリクラス隊長がニッコリと微笑んだ。
「ヘイカ?」
そんな知り合いいたかな?
「陛下から直々に書面を賜うなんて。さすがワタクシの聖騎士ですわ」
アレシーナがなぜか得意げにウフっと鼻を鳴らした。
だからヘイカって誰だよ?
「陛下とは……まったく、貴様には驚かせられてばかりだ」
リンナはリンナで呆れ顔だし。
まじで知らんのだが、ヘイカってやつ。
そんな俺にニッコリ微笑んで顔を上げた俺の天使、セシリア。
中身の解読が完了したようだぞ。
「なあ、セシリア。それは誰からの手紙なんだ?」
中身よりも、差出人が誰なのかの方が気になってきたぞ。
「え? みなさんがおっしゃっているように陛下ですけど?」
キョトンと首を傾げるセシリア。
「いや、すまんが俺、ヘイカってやつを知らんのだ」
「貴様ぁ……不敬だぞ!!」
リンナが滅茶苦茶キレてる。なんでだ?
「えっと。本当に知らないんですか、ボクレンさん。国王陛下ですよ。この国の王様ですよ!?」
はい??
ちょっとまて。
なるほどなるほどぉ……
おっさん、速攻で朝練に戻りたくなってきた。
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