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第30話 おっさん、聖女と聖騎士に囲まれる(美少女包囲網)

「ふぅ……」


 ちょっとやりすぎたかもしれん……

 3つ頭が5つに増えたので、木刀思いっきり振りぬいたが。


 思いっきりやったから、肉片が周囲に飛び散る間もなく塵と化してしまった。

 加減が難しい……


「ひぃいいいい! ば、ばけものぉおおおお!」


 こら、おっさんくたびれてはいても、化け物ではないぞ。


「さて、次はなにを出す? さっきのもう一回くるか? ちなみにおっさん、9つ頭までは経験済だからな」


 そう、この頭いっぱい犬。

 思いのほかバリエーションが多いのだ。

 俺の森にあった洞窟では、下にいくほど個数と頭の数が増えていったしな。


 俺が戦った犬の中では、頭9つ犬が一番強かった。

 まあまあ苦戦したんだよ。


「ひぃはあああ! あたま九つって……そ、それは神話のぉおおお――――――ぷぎゃぁっ!!…………」


 レクラは口をパクパクさせたかと思うと、泡を拭いてぶっ倒れてしまった。

 どうやら、これで終りみたいだな。


 木刀を拭って腰に刺していると、足音が近づいてきた。


「け、ケルベロスを一撃とは……まったく貴様というやつは……」


 リンナか。


「ボクレン、よくやった」


「礼はいらんよ。おっさんなりに、できることをしただけだ」


 俺だけ頑張ったわけでもない。みんながやれることした。ただそれだけだからな。


「ふっ……そうだな。聖騎士ならば当然のことだ。が……

 貴様に礼をしたい者は他にもいるようだ。あたしはこいつを縛り上げるとするから、あとは勝手に感謝されてろ」


 リンナが、倒れているレクラに視線を移して俺から離れていった。


 他にも?


 なんだろう? と思った瞬間―――俺の視界いっぱいに、銀色の髪がぶわっと広がる。


「―――ボクレンさんっ!!」


「うぉっ!? せ、セシリア!?」


 とんでもない勢いで、俺の天使が飛び込んできた。


 ドデカイ2つの膨らみが、全力で押し付けられてるんだが!?


「やっぱりボクレンさんは凄いです!」


 いや、もうバインバイン当たりまくってるやつの方が凄いんだが!?


 そして、さらに別の影がこちらに来た。


「あ、あの! ありがとうございました!」

「とんでもない方だったんですね! まるで英雄さまのようでした!」

「まあ~~窮地を救うなんてぇ~~イケメンおっさんですねぇ~~」


 うお!


 聖女マルナにクリスティ、マシーカ先生にその他の聖女まで!


 うぉおおお~~聖女いっぱい!

 聖女ちかいし! スカートみじけぇし、なんか柔らかいし! なんかいい匂いする!!


 なんだこれ!


 おっさんの脳内処理が追い付かん!


 さらに―――


「ケルベロスをワンパンとか、やっぱ先輩むちゃくちゃっす!」

「そうですよぉ~~私なんて今日、何回死んだと思ったことかぁああ! ていうか実は死んでたりしないですよねぇええ!」


 バレッサとレイニまで飛んできた。

 そしてその他の聖騎士まで混ざって来るじゃないの。


 女子にもみくちゃにされるという、ありえない光景が……!


 いかん……これはもう、おっさん勘違いしてしまうぞ!


 モテ期とやらが来たんではないのか?


 リンナと目が合った……


 おっさんが、「君も来ていいんだぞ」と温かい笑みを送ると……


 めちゃくちゃ睨まれた。真っ赤な顔で。


 うむ、調子に乗りすぎたようだ。


 冷静になれ俺。そもそも俺にモテ期など存在しない。するわけないじゃないか。

 おっさんであるという現実から、目を逸らしてはならないぞ。


 鉄の意志で美少女包囲網を耐え抜くこと数分―――

 ようやく美少女聖女、美女聖騎士たちから解放されたおっさん。


 ふぉおお……もう思い残すことはない。


 一生の思い出にしようと、俺は静かに誓った。


 ニヤニヤと余韻に浸っていると―――


「なにをやっている気持ちの悪い……撤収準備だぞ、ボクレン」


 リンナの声によって、現実に戻された。


 うん、やはり俺はどこまでいっても、ただのおっさんだ。

 準備するかぁ。



 そうそうに帰還の準備にかかるみんな。

 負傷者の応急処置や、装備の確認。そして―――



「「「――――――浄化(ピュリフィケーション)!」」」



 聖女たちが口を揃えて、詠唱する。


 彼女たちにしかできない仕事。


 この場に残った瘴気を一掃するという、聖女のみが行使できる力。


 その面々のなかに、俺の天使が真剣な眼差しで彼女たちと共に【浄化】を詠唱していた。



 ―――良く頑張ったな。セシリア。



 そして【浄化】も終わり。

 帰り支度を進めてると、セシリアが俺の前にやってきた。


 いろんな想いが詰まっているかのような表情を俺に見せる聖女さま。

 そんな天使が一言だけ発した。



「やっぱり、ボクレンさんが聖騎士になってくれてよかったです」



 そうか……よかったか。



 俺はセシリアの頭をかるく撫でて、「俺もだよ」と答えた。


「さあ、帰るかセシリア」

「はい、ボクレンさん!」


 木刀を腰に差して……


 おっと、そうだった。


「セシリア、先に隊列に行ってくれ」


 そう言って、俺は木陰に佇むひとりの聖女のもとへ足を運んだ。


 俺もゆっくり彼女の傍へ腰をおろす。


「出発だぞ、アレシーナ」


「ええ……わかりましたわ」


 そうポツリとこたえたものの、彼女に動く気配はない。

 視線は地面に落ちたまま。


 アレシーナはさきほどの【浄化】にも参加していない。

 普段の彼女なら、いの一番に音頭を取りそうなもんだが。


「みんなから聞いたぞ、大活躍だったそうだな」

「活躍だなんて……結局なんの役にも立ちませんでしたわ。」


 リンナを助け、セシリアを助けて、みんなの前に立った。


「おっさんには、よく頑張ったとしか思えんがな」


「頑張った……それは結果が伴わなければ、なんの意味もありませんわ」


「そんなもんかね」


 おっさんは、アレシーナの頑張りに礼を言いたかっただけなんだがな。


「ワタクシの積み上げたものなんて、レクラの前ではまるで無力。挙句の果てに……聖騎士にまで、逃げられてしまいましたのよ」


「そうか。まあ、どう思うのかはアレシーナの勝手だ」


「まあ……ずいぶんと無遠慮ですのね」


「気を使うの苦手でな。おっさんの慰めなんて、どうせウザったいだけだろ?」


 俺の言葉を聞いて、アレシーナはわずかに笑う。


「フフ、……まったく、失礼な人ですわね。

 ―――さあ、行きましょうか。置いていかれるのは御免ですもの」


「おう、じゃ行くか」


 俺がそう言って立ち上がると、アレシーナもまた、ほんの少しだけ背筋を伸ばして歩き出した。




 ◇◇◇




 ◇リンナ副隊長視点◇


「ふぅ……お疲れさまでしたね、リンナ」


 聖女学園の一室で綺麗なブロンド髪の聖騎士が息を漏らした。


 エリクラス隊長だ。


 森での演習から帰還した翌日。

 あたしの提出した報告書に目を通した隊長は、静かに書類を伏せると、こちらを見て微笑んだ。


「本当にみんなよく頑張ってくれました」

「い、いえ……無我夢中でして……それにボクレンがいなければ……」


「木刀の彼はまたまた大活躍だったそうですね。それに聖女セシリアも」


 ボクレンの活躍は本当に大きかった。

 普通なら全滅してもおかしくない状況を、あの男はいとも簡単に打破してしまった。


「ふふ、でもリンナの活躍も私の耳にはたくさん届いてますよ」

「ええぇ……そ、そんなことは」


「そんなことはあります。隊をまとめて部下に的確な指示を出したから、そして、常に先頭で怯まなかったからこそ、今回の結果につながったんですよ」


 そうかもしれない。隊長の言葉は素直にうれしい。

 でも、心のどこかで納得できない自分がいる。

 今回の件で、ボクレンとの差をまざまざと見せつけられた。


 もっと、もっと訓練に打ち込まないと。


 そんな想いで、拳をグッと握りしめていると……隊長が話題を変える。


「にしても、元聖女ですか……」


 今回の騒動を起こした張本人であるレクラ。

 あいつの目的は、聖女をさらうこと。


「直近の聖女行方不明事件も、レクラの仕業でしょうね」

「聖属性魔力を抽出する? とやつは言ってましたが、なんのことなのか見当もつきません」


「そうですねリンナ。彼女は騎士団本部にて拘束中です。ですが……問題があって」


 隊長が少しだけ眉をひそめた。


「彼女の記憶が、完全に消えているようなのです」


「なっ! それは演技なのでは?」


 どういうことだ? 


「いえ、おそらくは本当に記憶が消されてしまったようです。彼女のクビに魔道具がつけられていたと報告があがっています」


「魔道具……」


 レクラの言動からも「契約」「依頼主」など、明らかに黒幕を示唆するワードが出てきていた。

 そして記憶を消し去るような魔道具を開発できる国なんて、限れている。


「そうですね、リンナの想像どおり、こんな高度な魔道具を作れるとしたら―――エーテルギア……」


 魔導国家か……


 魔力を動力源にした魔道具の開発に特化した国家だ。

 隣国でありながら、ほぼ国交は断絶状態。

 情報もほとんど入ってこない。


「たしか国境付近は大聖女さまの【結界】が張られていましたね」


「そうですね、そうそうきな臭い動きはできないと思いたいですが」


 ……とはいえ、確証のない憶測ばかりでは、話も進まない。


「それから―――敵前逃亡した聖騎士ブロスですが」


 エリクラス隊長が報告書に再度目を通しながら、話を続ける。


「彼も以前行方不明のままですね」


 ブロス……聖女アレシーナの聖騎士。


 私の部下から、こんな不始末を出してしまった。


「彼は、侯爵家直々の推薦で入隊した者。そこまでリンナが気に病む必要はありませんよ」


 そう言ってくれる優しさが、逆に苦しい。

 やつは今、なにをしているのだろうか。


「まあ、ここまでのことをして王国に戻れるとは思っていないでしょう」


 ということは、他国に渡るしかないか……




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