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第29話 おっさん聖騎士の一振り

「はぁあああ……ありえない……っ! あたいの魔法陣が……あんな無能チビ聖女に打ち破られるなんて……ギィイイイッ!!」


 レクラが歯をギリギリと噛み鳴らす。

 ―――まだ、事実を受け入れられていないのだろう。


「おい、セシリアは無能なんかじゃない」


「才能もないくせに、まぐれ聖女のくせにぃいい……ギィイイイッ!!」


「努力を重ねた結果にまぐれなどない」


「はァ? 努力だぁ? なんそれ……うっざ……

 イライラすんのよ、このクソ学園……あーもう、全部がムカつくわぁ!

 聖女捕獲ぅ? もうどうでもいい、あいつらとの契約なんて! キャッハハハハ!!」


 漆黒の黒い渦が地表にとぐろを巻き、巨大な魔法陣がズズズとせり上がってきた。


「残った瘴気ぃ全てをあつめてぇえええ! 特大のやつを呼び寄せてやるぅうう!!」


 レクラの叫びと共に、空気がねじれる。


 そして、地面が裂けるように現れたのは―――


「グロロロロ……」

「グロロロロ……」

「グロロロロ……」


 地面がビリビリと震え、周辺の木々が揺れる。


 聖女や聖騎士たちから声がもれはじめた。


「なにこの邪悪な魔力……!!」

「三つ頭の巨大な魔獣……こ、これって」

「ま、まさか……け、ケルベロスか……」

「そんな! こんな魔物、王国に存在したのですか……」

「こ、こんなの私達の【結界】でどうこうできない……っ」


「キャハハハ~~どうかしらぁ~~あたいからの特別プレゼントぉお~~♪」


「ぼ、ボクレンさん!」


 セシリアが俺の傍で呟いた。声が震えている。


 ふぅ……すごく周りが驚いているから。

 だから、セシリアにだけそっと告げる。


「……これは、普通にいるだろ」


 セシリアの震えがピタリと止まった。

 その琥珀色の瞳を大きく見開かせて口を開く。


「いやいやいやいやいや、さすがにそれ無理がありますよ!!」


「いや」がすごく多いな……


「ケルベロスですよ! 討伐例すら聞かない伝説級の魔物ですよ!!」


 それは違うな。


「だって、これ三つ頭犬だろ? 木刀拾った洞窟の小部屋とかによくいるやつだよ」


「えっと……(ボクレンさんの小部屋とは、おそらくダンジョン深層のボス部屋ってことのようですね……)そうなんですね……(なら今回も本当にあり得るかも……)」


「しかも一匹だし。群れてもいないじゃないか」


「こんなの群れたらこの世の終わりですよ!?」


 それはいくらなんでも大げさすぎるだろ。部屋によっては何匹も出るパターンはあったし。

 あれでこの世が終わるなら、もう何回終わってんだって話だからな。


 セシリアが「ふぅ」と一息漏らして、俺に言う。


「もう……緊張も何も全部吹っ飛んでしまいましたよ。

 とにかく討伐してください――――――私の……聖騎士さま」


 俺の天使が、いつもの笑顔でそう告げる。


「ああ、任された。我が聖女さま」



 俺は木刀をスッと抜き、三つ頭の前にでる。



「ちっ、くだらない聖女聖騎士ごっこがぁ。虫唾がはしるんだよぉ……ケルベロス! 骨も残さずすべて喰っちまいな!!」


「「「グロオオオオオ!」」」


 三つ頭がその巨体をブルっと震わせたかと思うと―――


 瞬間、俺の間合いに入ってきた。


 うむ、なかなかの速さだ。


 ひとつの頭から、炎弾がおれに向かって放たれる。


「おっ!」


 そうだった。最近こいつとやり合ってないから忘れてた。


「火を吐くんだったな―――ぬんっ!」


 素早い振りで、炎弾を両断した俺はその合間をぬって三つ頭本体に肉薄する。


「―――グロガォオオオ!」


 が、その先に待ち構えていた2つ目の頭が、炎弾をゼロ距離で俺に浴びせてきた。


「おっと!」


 さすがに木刀を振る暇がなかったので、上に跳んだ。

 いったん、少し離れてから木刀を構えようとしたのだが……


「グロロガァアア!」


 三つ目の頭か……


 跳んだ先に大口を開いていたので、俺は持ってた木刀を突っ込んだ。


 ガリガリと木刀にかじりつく音。


「キャハハ~~、バリバリいってんじゃん! チートアイテム撃破ぁ~~これでおっさんアウトぉお~~」


 なにを言っている。


 俺は木刀を引き抜いて、犬の頭をこつんと蹴ってみせた。


「ハガハガハガ……!!」


 ボロボロと口から落ちていく白い破片。

 そう、こいつの牙だ。


 そのまま、ぬんっ!っと頭部に打ちこむと―――


 パァアアアンンッ!


 頭部は粉々に吹き飛んだ。


「よし、まずひとつ」


「はぁああ……!? なんで木刀が砕けないんだよぉおお!」


「俺の相棒は頑丈なんだよ――――――ぬんっ!」


「グロっ!? ガァア……ァ!」


 ふたたび爆ぜる頭部。


「これで、ふたつめ」


「ひぃいいい! なんなんだよぉ、このおっさん! こっちくんなぁあああ!

 がぁああああ! ――――――能力強制増幅オーバーレベルブースト!!」


 レクラが詠唱すると同時に、3つ頭の破裂した箇所が再生していく。

 さらに、筋肉が躍動し体全体が膨張しはじめた。


「はぁはぁ……あたいの残った魔力全部をつぎこんでぇええ! 進化しやがれぇ!!」



「グロロォオオオ……!!」

「グロロォオオオ……!!」

「グロロォオオオ……!!」

「グロロォオオオ……!!」

「グロロォオオオ……!!」



「と、頭部がさらに2つ生えただと……なんなんだあれは!」

「つぶされた頭部も再生しています!」

「け、ケルベロスが……さらにパワーアップするなんて……!」


 うしろのみんなが、口々に叫び声をあげた。


 ほう……5つ頭か……


「いいだろう」


 そうひとり呟くと、俺は木刀をグッと握り、腰を落とした。


 木刀をゆっくりと頭上に構え―――


 すぅーっと息を吸い込むと、

 全身の筋肉が引き締まり、身体そのものが「一撃」のためだけに形を整え始める。


 静かに吐き出した息が、白く冷たく伸びる。

 そのひと呼吸だけで、足元の大地が―――わずかに、低く鳴った。


 よし……


 ――――――踏み込む!


 振るだけで、すべてが終わる。


 俺は静かに、木刀を振り下ろした。

 ただ、それだけ。

 一切の無駄を削ぎ落とした、完璧な一閃。



 ――――――ひとつの木刀(エンドブレイド)!!



 空気が裂ける音すら、遅れて聞こえた。

 振り抜いた瞬間、すべてが静止する。


 一拍。


「…………ふぅ。終わりだ」


 次の瞬間―――


 ズゥン、と地鳴りがしたかと思うと、

 五つの頭をもつ魔獣の巨体が、音もなく崩れた。


 爆音も悲鳴もない。

 ただ「存在ごと」断ち切られたように、魔獣は塵と化す。



「はぁうぁあああ……そ、そんなぁ……ありえない……おまえおまえおまえ……なんなんだ」



 膝をつくレクラが、声を震わせる。


 俺は木刀を収めながら、静かに告げた。



「俺か? 聖女セシリアの聖騎士―――ボクレンだよ」




【読者のみなさまへ】


第29話まで読んで頂きありがとうございます!

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※本作はカクヨムにて先行公開中です。


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