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第28話 聖女セシリアの覚醒

「……この地を穢すものよ。聖なる光のもと、その罪を悔い改めよ」


 静かに、だが確かな響きで告げる声。


 セシリアは両手を胸の前で組み、そっと瞼を閉じる。


 空気が張り詰め、空間そのものがセシリアの詠唱にテンポを合わせるような。


 彼女の足元から、淡く白と黒がいりまじったようなまだらな光が身体を包み始めた。

 次の瞬間―――


 その光は一つになり、眩い白銀色の輝きを放った。


 こりゃ凄い。


 おっさんこんな綺麗な色、見たことないぞ。


 光はゆるやかに、しかし確かな速度で彼女を中心に円を描くように広がっていく。



「ああぁ? なんだよ……これ。あたいの魔法陣になにクソい魔力たらしてんだよ」



 レクラが苛立ちを隠せず、眉間にしわを寄せる。


「これは……とんでもない魔力ですよぉ。しかもレクラの魔法陣全てに影響を及ぼしている……」


 マシーカ先生の声が震えた。


「ふん、だからなんなのさ。あんたごときチビ聖女がいくらあがいても―――

 魔物は生み出されるんだよぉお~~キャハハ~~無駄な努力ごくろんさん~ああウケるぅ~キャハハハハ!」


 ギャハハと悦に浸るレクラ、が―――その笑い声は、すぐに止まった。


「……ああ? なんで魔物が出てこない……?」


 数十とある魔法陣から一匹も魔物は出てこない。


「どうやらセシリアの力で、レクラは魔物が出せないようだな」

「そ、そうですね……ボクレン。これ……もしかして!?」


 マシーカ先生が、何かに気づいたように目を見開いた。


「て……てめぇ~~あたいの魔法陣を…………

 ―――――――――書き換えやがったなぁあああ!!」


 おお、なんかわからんけど。

 セシリアは凄い事をやったようだ。


「あんな努力しか能の無さそうな、クソがあたいの魔法陣を書き換えるだとぉ……

 ましてや、これだけの魔法陣を全部書き換えるぅう? あり得ないんだけどぉおお! マジないんだけどぉ!!」


 爪をガリガリと噛みながら唸り声をあげるレクラ。



「レクラ、たしかにあなたの言うとおりです。あらたな魔法陣をこの場で生み出すのは、私の技量ではできません。でも既存の魔法陣なら……そう、毎日毎日朝から晩まで、何度も何度も失敗しては構築し続けた【浄化】の魔法陣なら

 …………目を瞑っていても書き換えられます。何個でも!!」



「はぁああ? 出来損ないのクセになに知ったような口聞いてんのさ。あんたにできるのは努力っていう才能の前にはどうにもならない、クソじゃねぇかよ」


 睨み合うセシリアとレクラ。


 クソな努力か……


 持って生まれた才能―――それは、確かに存在する。

 間違いなくある。俺とオヤジがいい例だ。


 どうしたって越えられねぇ壁ってもんを、何度も見てきた。

 努力では追いつけないって感じたこともあるさ。


 だがな―――


 それは、「努力しない理由」にはならん!!


 追いつけなかろうが、勝てなかろうが、そんなことは関係ない。


 セシリアが展開した大量の魔法陣を見て、他の聖女たちが、聖騎士たちが、先生がどよめく。


「ボクレンさん……こんなにたくさんの魔法陣を展開できるなんて……

 朝練の……いえ、ボクレンさんのおかげです」


 俺の方にその綺麗な琥珀色の瞳を向けたセシリア。


「いや、それは違うぞセシリア」


 この力は、たった3か月やそこらの基礎訓練の成果なんかじゃない。


「俺がした訓練は、ただ集中する心をちょっと整えただけだ」


 魔法陣の描き方も、魔力の流し方も、俺は何も教えていない。

 でも君は、ここまで来た。


 そう、この子は―――もともと積んでいる。

 毎日、誰よりも地道に。黙って。熱心に。時間も忘れて。

 その努力を、俺は知ってる。


 そして、その力は……


 ほんの小さなきっかけがあれば―――



 必ず、花開く!!



 俺は木刀を肩に担ぎ、静かに言った。


「……セシリア。見せてやれ。

 才能にあぐらをかき続けた者に……

 ―――――――――おまえの日々の努力をな!!」


 俺の言葉に、ニッコリ笑顔で頷いた俺の聖女さま。


 次の瞬間―――


 彼女の周囲が、光に包まれる。

 魔法陣が至る所で輝きを増し、やがて爆ぜるように開花していく。


 それはまるで、光の花畑のような。


 セシリアの一言とともに、全ての光が弾けた。



「……光よ……どうか、この地の穢れを祓いたまえ―――

 ―――――――――浄化(ピュリフィケーション)!!」



 全ての魔法陣から、柱のように光が天に昇っていく。


「ぐっ……しょ、瘴気が消えていく……ふざけるなよぉお……もう一回クソチビの魔法陣をぉお書き換えてやんよ!」


 レクラが書き換えを仕掛けた瞬間。


 バチッっと光が輝いた。


「な、なんこれ……あたいの魔力が……弾かれる!?」


「やはり……これは白銀の魔力……!」


 マシーカ先生が信じられないと言った顔で声を漏らす。


「なんだそれ?」


「かつて聖女の始祖はあらゆる邪を浄化できたと言われています。それが銀色の魔力……そしてあの子が今使っている魔力は……はじまりの聖魔力と呼ばれるものです」


「はあぁ! んだよお! はじまりの聖女なんて1000年前のクソ話だろうがあ!」


「レクラ、博識なあなたならわかるはずです。はじまりの聖女が使った聖属性魔力は、

 ――――――いかなるものにも干渉されない」


 おお、なんかおっさんには理解不能だが、凄いぞセシリア!


 そして天高くあがった光の柱が、スッと消えていく。

 おそらく【浄化】が終わったのだろう。



 俺の天使は、これでもかというほど満面の笑みで叫んだ。



「やりましたボクレンさん! できましたよ、【浄化】!!」


「おう、よくやったセシリア」


 俺がそう言うと、彼女はさらに嬉しそうに笑って――


 ぽろりと一粒だけ、涙をこぼした。


 それはきっと、努力の結晶。



 おっさんはこの子の聖騎士になって、心から良かったと思う。




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第28話まで読んで頂きありがとうございます!

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※本作はカクヨムにて先行公開中です。


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