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第25話 セシリア視点、追放された元聖女の実力

「みなさん! ポーションはまだまだありますから!」


 息を吹き返した聖騎士のみなさん、そしてクラスメイトの聖女たち。


「―――うらぁああ! 聖騎士隊、根性みせろぉおお!」


 リンナ副隊長を先頭に、迫りくる魔物を撃退する聖騎士のみなさん。

 アレシーナさんが【結界】を張っているから、魔物との戦いに集中することができる。

 そして他の聖女たちは―――


「さ~~発生した瘴気を少しでも多く~~【浄化】しますよ~~」


 マシーカ先生の号令と共に、【浄化】の詠唱をはじめるみんな。

 そう、敵は瘴気を利用して無限に魔物を生み出している。だったらその元である瘴気を断てばいい。


 リンナさんたちが命を賭けて魔物を倒してくれているいまこそ、【浄化】を使う時です。


 わ、私も……


「「「「「……この地を穢すものよ。聖なる光のもと、その罪を悔い改めよ」」」」」


 一斉にみんなの魔法陣が展開されます。

 ……っ、私の魔法陣も――――――展開できてます! 集中、集中です!


 やっぱり、さっきの演習でなにかきっかけを掴んだのかも!


 ―――あ!!


 喜んだのも束の間、私の魔法陣は完全形成される前に散ってしまった。

 しまった……調子に乗って焦りすぎました。


 ……もう一度、魔力を注入するタイミングを変えれば……


 が、二度目のチャレンジの前に異変が起こる。



「「「「「……光よ……どうか、この地の穢れを祓いたまえ―――

 ――――――浄……(ピュリフィ……)!?」」」」」」



 ……これは!?


 みんなの魔法陣が……発動していない!


「ウソ……魔法陣が光らない!」

「なにこれ、どうして!」


 私の目に飛び込んできたのは―――


 黒い魔法陣。


 みんなの【浄化】の魔法陣の上に、まるで塗りつぶすように重なっている……!?


 な、なんですか! あれ!!


「おっそ~い、クソのろい魔法陣展開してんじゃないわよぉ!」


 これって……ずっと魔法陣に苦戦してきたから、ずっと頭の中では完成していたから、一目で違いがわかる。これ……【浄化】の魔法陣じゃなくなってる。


「まさか……」


「へぇ~~ポーションちびせいじょは気付いたのかしらぁ~」


「くっ……誰がチビ聖女ですか! もしかして……書き換えたんですか」


「キャハハ~~ピンポンピンポン~せ~~かい~。そうさ、あたいの魔法陣に書き換えてやったんだよぉ~相変わらずの才能なしのノロマたちねぇ~キャハハ~~」


 魔法陣を書き換えるなんて……どんな高等技術なんですか。

 でも、おかしいです。


「あり得ないですわ!」


 そこへアレシーナさんが鋭い声をあげる。


「たとえ書き換えが可能だとしても、【浄化】は聖女独自の魔法ですわ。魔法陣の仕組みがわからなければ、そもそも書き換えなどできるはずがないですわ!」


 そう、アレシーナさんの言う通りです。

 聖女が使う魔法陣は、聖属性魔力をもつ者にしか発動できない。つまり、聖女以外の人間は、そもそも魔法陣の仕組みがわからないのだから。


 それなのに―――この女性の顔が、それを否定している。


 この人……知ってるんだ。


 でも、どうやって。


「ンフフ~~ですわ聖女ちゃん、あんたら凡人と違って~~あたいに「あり得ない」とかないから~~

 ――――――はぁ~~い、ふたたびのマッジクショーた~~いむ♪」


 アレシーナさんの足元に、黒い魔法陣が現れた瞬間―――


「―――な、なんですって!?」


「あ~~らぁフシギぃ~【結界】きえちゃったわねぇ~キャハハ~~」


 一瞬にして、アレシーナさんの【結界】がバラバラに砕け散った。

 これって、衝撃を受けて破壊されたとかじゃない。


 アレシーナさんの魔法陣を書き換えたんだ……。


「そ、そんな……ありえませんわ」


「キャハハ~きたきたきたぁ~~その顔ぉおお! さいっこうじゃない! ねえ、いまどんな気分んん? ねぇねぇねぇったら~~~キャハハハハ!」


「……さ、最低です」


 私の口から言葉がこぼれた。

 歪んでいる。この人になにがあったのかしらないけど、なにか感情がおかしい。


「ああぁ? チビ聖女、なんかいったかい? あんたら能無し聖女どもが、あたいをそんな気分で追い出したんだろうがぁあ!」


 追い出した? どういうことですか?


「負けませんわ! 聖女たるもの、絶対にあきらめませんの!」


 アレシーナさんが再び【結界】の魔法陣を構築する。

 綺麗で正確かつ、早いです! さすがアレシーナさ……!?


「キャハハ~~【結界】だってさぁ~~他人なんか守ってどうするんだよ、の・ろ・ま!」


 黒い魔法陣が瞬く間に、アレシーナさんの魔法陣を塗り替えていく。


 なんですかこれ……いくらなんでも速すぎます……


「あなたは……いったい何者なんですか」


「キャハッ、気になる? 気になっちゃう~? なんで聖女だけが使える魔法陣を書き換えられるのか? 構築のタイミングからなにからなにまで熟知してるのか?……教えてあげよっか?」


 ゾクっと悪寒が走る。

 ニヤケ顔の奥に、凄まじいうらみを秘めたような声で彼女は言った。


「―――あたいもね、聖女だったからさ」


 ……え? 


 いまなんて?


「そうさ、あたいは元聖女なのさぁ……

 ――――――虫唾が走るぅう~クソ聖女さまだったんだよぉおお!」


「元聖女なら……なんでこんなことを」

「そうですわ、仮にも聖女だったのならば、このような蛮行はおやめなさい!」


「ああぁ? 聖女だったからあんだって?」


 黒い感情が噴き出したかのような、キツイ視線。


「あんたたちのような、脳内花畑のデキソコナイ聖女どもが……

 ――――――あたいの才能に嫉妬して、学園から追い出したんだろうがぁああ!!」


 追い出したって……どういことですか?


「あなた……まさか、レクラさんですか?」


 マシーカ先生の声が、わずかに震えた。

 その声音には驚きと迷いが滲んでいるのか、普段の口調ではない。


「ああぁ? なんであたいの名前を……ああ、おばさん聖女なら知ってるかもねぇ」


「……あの学園始まって以来の天才少女……レクラですか」


「へぇ~久々に聞いたわその言葉。天才ねぇ~~あたいが聖属性魔力を失ったら速攻でポイしたくせにねぇ~」


「聖属性魔力が失われる……そんなこと」

「ええ、レクラは在学中に聖属性魔力を失ったのです」


 そんなことがあり得るんだ……


「だから、学園から出たのですか……?」

「違います。レクラは禁忌の魔法を研究していたのです」

「禁忌の魔法……」


「彼女は瘴気を操る魔法を研究していたのです」


 瘴気を操る……使い方によって善にも悪にもなりえる魔法……。


「ああぁ? なにが禁忌だよぉ人類にとって最高の魔法だろうが!」

「ですがあなたは実験と称して王都内で魔物を生み出し、多数の人を殺めてしまっています!」


 マシーカ先生の語気が荒ぶる。


「はあぁああ? これだからクソ学園のカタブツどもは、はぁ……変わんないねぇ~~

 そんなもん些末な事なのよぉ~~未来の多数のためなら、数人死んでもどうでもいいじゃん♪ こんな簡単な事もわかんないんだぁ~~やっぱアホのあつまりなんだねぇ」


「なにを言ってんるんですか……あなたは」


 どうでもいい命がある?


 そんなこと―――


「あなたは間違っています!」


「キャハハ~~、チビ聖女ちゃん、なに熱くなってんのぉ~~マジうけるんだけどぉ~

 てかさぁ~~頭でっかちのあんたなら、もうわかってるよねぇ~あたしとあんたたちの根本的な才能の違いがさぁ」


 このレクラという人、とんでもない魔法技術を持っている。

 さらにそれを支える魔力もけた違い。


 普通に考えたら、まったくかなわない。


 だけど……


「この人に負けるわけにはいきません!」

「そうですわ! 聖女たるもの、命の重みを数ではかるべきではないですわ!」


 声に想いを乗せて叫ぶと、アレシーナさんが力強く私の隣に立った。

 その瞳は揺らがず、真っ直ぐに前を見据えている。


 私とアレシーナさんの心が、ひとつに重なった気がした。




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