表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/62

第24話 セシリア視点、狂気の魔物ショー開幕! そしてセシリアのできること

「聖騎士隊、周辺の警戒を怠るな!」

「みなさ~~ん、しんどいですが~ここはふんばりどころですよ~」


 リンナ副隊長と担任のマシーカ先生の声が響き、否応なく緊張感が高まる。

 私たちは森から脱出するため、進み続けていた。


「セシリア……バレッサたち大丈夫だよね……」


 マルナが不安を滲ませた表情で私を見た。


「もちろんです。あなたが一番バレッサさんのこと知ってるでしょ。それにボクレンさんがいますから」


「うん……そうだよね」

「私達は、自分たちのやれることを精一杯やりましょう」


 にしても、これは魔物大量発生(スタンピード)なのでしょうか。

 ズキっと心の奥が締まる痛み……いけない。過去の事ではなく、目の前のことに集中しなきゃ。


 ボクレンさんたちが、後方で魔物を食い止めてくれている間に、森から脱出する。

 そして、すぐに王都へ連絡しないと。


 森から誰も出られなければ、この異変を王都に伝える人はいない。


 もし、これが大規模な魔物大量発生(スタンピード)なら……しかるべき体勢を整えていないと。

 また私の故郷のように……王都も蹂躙されてしまう。


 ダメです……頭を振って再度集中する。このいやな胸騒ぎを振り払うように。


 休みなく前進すること30分ほど、ひたすら進んだ先で木々が開けた。


「あ、ここ昨日お昼を食べた場所……」


 マルナがぽつりと呟いた、その時だった。



「キャハハハ~~いたいた~~聖女たちだぁ~~みっけ~~」



 ひらけた草原の中央に、すっと現れた1人の女性。

 黒ずくめの布に身を包み、漆黒の髪を揺らしてケラケラと笑っている。


「なんだ貴様は! どこから現れた!」


 リンナ副隊長が即座に剣を抜く。


「アハァ~~聖騎士じゃん~鎧なんかつけちゃってぇ、ウケるぅ~~」


「貴様……ふざけるなよ。ここは聖女学園管理の森だ! 無断侵入とは、何者だ!」


「が・く・え・ん? あいかわらずうっざぁ~~まあいいや、教えてあげる~アタイわねぇ、聖女が欲しいのよ~ん♪」


「なに、聖女だと……?」


「そうそう~~うしろにいるクソオンナどもだよぉ~ちょ~~だい♡」


 この人は何を言ってるのですか……。

 その声音からは、どこか狂気じみた執着のようなものがにじみ出ている。


「聖女たちをどうするつもりだ!」


「しらなぁ~~い。依頼者が聖女をほしがってるからぁ~~アタイはぁ~聖女も学園も、ぜーんぶ不幸の底に堕ちればいーって思ってるだけ〜♪


 ――――――てことで、おめぇら聖騎士はいらないから皆殺しぃいいい!!」


「ギュラァアアア!」

「グモグモグモォ!」

「ギャッギャッ!」


 こ、これは……

 まわりから、魔物の咆哮が轟く。


 ―――囲まれてる!


 ボクレンさんたちが後方で奮闘してくれているのに、まだこんなに魔物がいるなんて……。


「くっ……貴様、魔物使い(テイマー)か……」


「さ~て、どーだろぉ〜? どーでもいーじゃん、どーせみんな死ぬんだしぃ♡ さあ、エサだよみんなぁ~たーんとおあがり~キャハハ♪」


「ギュアギュア!」

「グゴォオ、グゴォ!」


 黒服女性の言葉を聞いたのか、魔物たちが前進を開始する。

 ざっとみても、5~60匹はいます。


「マシーカ先生、聖女たちを中央へ! 聖騎士隊、防御円陣を組めぇ!」


「キャハハ~~面白くなってきたわ~そうだ、聖女は食べちゃダメよ。嬲ってもいいけどねぇ♡~~アハっ♪」


 戦闘が始まった。

 魔物に対して、聖騎士は10数名ほど。数の上では圧倒的に不利ですが……


「―――土属性大激斬(アースクラッシャー)!」

「―――聖光槍撃(ライトランス)!」


【加護】の力を使い、迫りくる魔物をなんとか撃退してくれる聖騎士のみなさん。

 そう、聖騎士はみんな強いんです。


 ……でも、黒服の女はまるで余裕の笑みを崩さない。


「へぇ~~やるじゃん、さすが聖騎士さまねぇ。でもまだ魔物はいるんだからね! 後続のみんな〜いってらっしゃ〜い!」


 やっぱり、森の中に予備の魔物たちを隠してました。


 第二陣、第三陣と次々に襲いくる魔物。


 聖騎士の剣や槍や魔法が、そして魔物の牙や爪が交差する。


「聖騎士隊! ひるむな! 日頃の訓練を思い出せ!」

「【治癒】が使える聖女は~~ケガした聖騎士さんをフォローしなさ~い!」


 リンナさんの檄と、マシーカ先生の指示が戦場にひびく。

 私もできることをする。傷ついた聖騎士さんを中央に運び―――


「マルナ、こっちもお願いします!」

「うん、セシリア。―――治癒(ホーリーヒール)!」


 すごい……一気に傷口が閉じていく。回復魔法とは段違いの効果です。

 私にはまだ聖女の【治癒】が使えない。


 でも、やれることをします!



「あと少しだ! 聖騎士隊、気合入れろぉ!――――――聖女よ、我が声に応えよ。その加護、今こそ聖風を吹かして……我が刃となれ!」


 リンナ副隊長の剣に緑の風が集まっていく。

 あれは……リンナ副隊長の【加護】、風の魔法剣……!



「はぁあああ――――――聖風剣舞(テンペストブレイド)!!」



 前にでたリンナさんが、嵐のごとく剣を振るう。

 すごい……まるでリンナさん、風と共に舞っているみたい。


 やがて、迫りくる魔物はすべて討伐された。


「ふぅふぅ……よくふんばった。聖騎士隊」

「みなさ~ん~~がんばりましたね~」


 やった! やりました!

 あれだけいた魔物が、すべて討伐されました!


 聖騎士のみなさん、精魂尽き果てるまで頑張ってくれました。

 クラスメイトのみんなもすごい頑張った。魔力も体力も限界に近い。



「う、うそ……あの数の魔物が……ありえないんだけど……」



 黒服の女性はその場にうずくまり、少し震えている。


「貴様、何者かしらんが王都へ連行する。極刑かよくて終身刑だ。覚悟するんだな」


「そんなのやだぁ……やだやだぁ……」


 リンナ副隊長が女性の手を縛ろうと持ち上げる。

 漆黒の髪からのぞくその口がニヤリと歪む……え? 


 この人、笑ってる……?


「な~~~んてぇ♪ がくせいちゅうも~~く! マッジクショーのはじまりはじまり~~」


「な! き、貴様、ふざけるのも大概に……!?」


 リンナさんの声が途中で止まる。

 周辺の地表に、丸い円が次々と現れたからだ。


 これ……ま、魔法陣ですか!


 しかも、一斉に10個以上の魔法陣を起動するなんて。


 そして魔法陣から驚くべきものが現れた。


「うそ……これって魔物……!?」


 驚きと衝撃で、思わず声が漏れる。


「ひぃいい……な、なんで!」

「あのひと、魔物使い(テイマー)じゃないの!?」


 周囲に動揺が伝播して、驚きの声がそこら中からあがる。

 ……黒服の女性は、魔物使い(テイマー)ではないってことですか?


 いかに魔物使い(テイマー)といえども、テイムしている魔物はすでに存在しなければ成り立たない。

 でも、これはどう見ても……魔物がいま生み出されている。



「キャハハ、討伐ごくろうさぁ~~ん。でもでもでも~~あ~~らフシギ! また出てくるよぉ~イッツ、マジックぅ~~♪」


 次々と魔法陣から現れる新たな魔物たち。


「そ、そんな魔法、聞いたことがありません」


 人が魔物を生み出すなんて。

 魔法陣の術式もすごく複雑です。でもなにか周辺に黒いモヤが……


「え? ま、まさか……」


「んんん? チビの乳デカせいじょたん~~気づいちゃったかなぁ~」


 チビの乳デカって!

 でも……ふざけた軽口ばかり叩いているけど、この人の魔法技術は一級品だ。それに私の予想が当たっていれば……


「これは、瘴気……ですね」


「は~~い、せいか~い。たねあかしいきま~す!

 あたしの作った魔法陣はぁ~~瘴気を吸収してかわいい魔物ちゃんを生み出すことができるのぉ~」


「な、なんだとぉ……!」


 リンナ副隊長の表情がより険しくなる。

 魔物を倒せば、瘴気は必ず発生します。黒服女性の言うことが本当なら―――


「キャハハ~~理解したかなぁ。つまりぃ~~魔物をいくら倒してもムダなのぉ~何十匹倒してもぉ何百匹たおしてもぉ~~。ぜ~~~んぶ、あたいの忠実なしもべ魔物ちゃんとしてぇ~復活しちゃいま~す♪ イッツ、エンドレスマジ~~ック! はい、はくしゅ~~~」


 やっぱり―――

 とんでもなく恐ろしい魔法です……


 ボクレンさんが、気配が変だって言ってた理由がわかりました。

 魔物がその場で生み出されるのだから、それはいきなり気配が現れるってことなんだ。



「瘴気が発生する限りぃ~~あたいは無敵なのよぉおお!」



「くっ……そんなことが」

「瘴気から魔物を作り出す魔法だなんて」


「キャハハ~~それそれ、そのかおぉお~~さいっこうじゃん」


 ケタケタと笑いながらも、さらに魔法陣から魔物を生み出す黒服女性。


「必死こいてぇ~がんばってぇ~たくさんの魔物たおしてぇ見えてきたきぼうの光ぃ~~~

 一瞬で消えちゃった気分はどうかなぁ~~キャハハ~~マジうけるぅ~~こいつらのかお!」


 本当のところ、魔物を生み出すのは無限じゃない。

 なぜなら、相応の魔法技術に集中力、そしてそれを支える膨大な魔力が必要なはずだから。


 でも―――


「は~~い、今日はおおめにだしておりま~す♪」


 さらに追加で生み出される魔物たち。

 全然疲弊した様子を見せない……この人。


 結局、当初の数ぐらいに回復してしまった魔物たち。

 獰猛な唸り声をあげて、ジワジワと距離を詰めてくる。


「そうそう~~なんで聖女が必要かぁ~思い出したぁ。あたいも何人か施設に連れてったからねぇ」


「……聖女の行方不明事件、まさかおまえが……」


「キャハぁ~そうよ~~なんでもねぇ~聖女の聖属性魔力が必要なんだってぇ~魔道具につかうんだったかな~

 むりやり搾り取られてぇ~~泣き叫んでも搾り取られて~~少し回復させたらまた搾り取ってぇえ~~

 キャハハ! 傑作だったわぁ~ざまぁみろだよぉ~~」


 なんですかそれ……そんなのおかしいです! 人間の所業とは思えない。

 そして、これでもかという程の愉悦の笑みを浮かべる黒服女性。

 聖女に深い恨みがあるのでしょうか。


「もう動けないでしょ~~あきらめなよぉ~~無抵抗になったところを~あたいがた〜っぷり、蹂躙してあげる♡」


 あきらめる……


「―――そんなこと、絶対に許されませんわ!」


 そんな黒服女性の声に真っ向から立ち向かう1人の聖女。アレシーナさんだ。



「――――――結界(セイクリッド・バリア)!!」



「ああぁ? 【結界】なんてはる魔力は、もうないはず……」



「よし! 聖騎士隊、聖女たちの前へ! もひと踏ん張りいくぞ!」


 リンナさんが、聖騎士のみなさんが立ち上がる。


「おまえら、虫の息だったはず……? おい、その瓶なんだよ」


 諦めませんよ。

 私は背負った大きなバックパックから、瓶を取り出して宣言する。


「みなさん、さきほど配った以外にも、まだまだ予備はありますから! 回復ポーションも魔力ポーションも、足りなくなったらすぐに持っていきます!」


「そういうことだ。貴様の思い通りにはならん! 聖騎士隊、防御円陣!!」

「は~~い、聖女のみなさんは【結界】の補強~【治癒】の準備~そして聖騎士の皆さんが倒した魔物の【浄化】にあたりますよ~」


 そう―――



「私も……いえ、私達も負けませんから」



「ああぁ?…………うっざ。無駄な事しちゃって……マジでうざ」


 この人は強い。

 なにがそうさせているのかは、わからないけど。


 でも私だって……このまま終わる気なんて毛頭ないです!

 無駄な事なんてなにもない。私がいまやれることをやる。


 ボクレンさんに、そう教わりましたから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ