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第13話 が、学園長聖女の結界にヒビ入ってるううう! 落ち着いてくれ、おっさんは木刀振っただけなんだって

 なんかおっさんが木刀振ったら……

 学園長聖女さま直々の【結界】にヒビが入った。


「なななななにこれ!? うそでしょ! 聞いてない聞いてないんですけど!? なんで? どういう物理法則? どこからそうなったの!? 意味わかんないんだけどっ!!」


 やべぇ……マシーカ先生の早口がすぎる。いつもの口調どこいった。


「ねぇ! あなたなにしたの!  ねぇねぇねぇ!」


 めっちゃ肩をぐわぐわん揺さぶられる俺。

 おっさん木刀振っただけだい……。


「……いや~もともとヒビが入ってたりしたんジャナイカナ~?」


 苦し紛れすぎて我ながら泣きそうだ。


「そ、そう言えば……もうすぐ学園長が【結界】のメンテナンスをする予定でしたね」


 おお! ナイス情報きた!


「だろ~~すでに一部破損してたんだよ!(うん。そうだそうに違いない。そうであってくれ)」


 マシーカ先生の言葉を渡りに船とばかりに便乗するおっさん。


「………………そうかも~しれない~~~」


 やたら長い沈黙があったが、先生いつもの口調に戻ってきた。なんとかおっさんクビにならずに済みそうだ。


「だって普通に考えてくれ。学園長って大聖女だろ? そんな人の【結界】がおっさんの木刀なんかでヒビ入るわけないだろ?」

「う~~ん、たしかに~~。久しぶりのメンテナンスですし~この訓練場はしょっちゅう魔法や【加護】の攻撃にさらされますし~~」


 そうそう、どんなに優れたものでも、永久なんてないんだ。

 一部ずっとダメージを負っていた箇所が、たまたま今回ヒビが入ったんだよ。


 いや~よかったよかった。この場はなんとか収まった。たぶん。


 さて、ちょっとセシリアの様子でも見てこようかな。とりあえずこの場から離れたいし。



「おい、ちょっと待て」



 おっさん、肩をガシッと掴まれた。


「えっと、副隊長。なんでしょう……?」


 やべぇ……やっぱ俺が壊したのか……いやでもそんなわけ……


「さっきの一撃、思いっきり振ったのか?」


 んん? なんか思ってたのと違う質問きた。


「まあそうだな」


 正直なところ、全力というものは状況で大きく変わる。

 一番わかりやすいのは、強大な障害と対峙しているときだ。


 俺で言うなら、ごく稀に出てくる強めの魔物。

 そしてなにより……オヤジだな。


 だから先ほどの一撃は、平時での全力と言えば全力なのだろう。


「ふん、あいまいな回答だな。では質問を変える。

 さっきの一撃は、昨日模擬戦であたしに放とうとした一撃なのか?」


「ああ、それは違う」


 リンナが言ってるのは、ひとつの木刀(エンドブレイド)のことだろう。


 それは違う。


 あれを使う時は、俺がそう判断した時だけだ。


「…………わかった。引き続き訓練に励め」


 そう言うと、リンナは俺から離れて行った。

 なんだったんだろうか? とにかくクビではないようで良かった。


 ふぅ……にしても昨日から心臓に悪いことが続く。

 聖女とおなじく、この学園自体もデリケートなんだろうか。普段通りにしてるだけなんだけどな。

 おっさん感覚がズレてるとなると、今後も苦労しそうだな。



「あの、マシーカ先生」


 おっさんが冷や汗をかいていると、天使が現れた。

 おお、我が聖女セシリアたん。見てるだけで乱れていたおっさんの心が安らぐ。


 分厚い教科書片手に、マシーカ先生にあれこれ質問する美少女。

 ひとしきり確認が終わったのか、また聖女組のところへ戻り熱心に詠唱したり、教科書を熱心に読み返したりしている。


 俺が聖女組の様子を見ていると、マシーカ先生が声をかけてきた。


「聖女たちはぁ~~聖騎士との連携訓練ですね~」


 ある聖女は聖騎士の攻撃後に、【浄化】を詠唱している。

 壁を作っている聖女もいるな。あれは【結界】か。


「【浄化】したり~【結界】を構築したり~各々得意な分野を伸ばす子もいれば~苦手分野を訓練する子などいろいろです~」


 なるほど、たしかにみんなそれぞれの訓練だな。

 俺の目に緑色の眩い光が入ってきた。あれは聖女マルナか。


「あれは~~【治癒】ですねぇ~~彼女の得意な魔法ですよぉ~」


 へぇ、あれが治癒か……


「にしても、聖女マルナは随分辛そうな顔をしてるな。昼飯に変なものでも食ったのか」

「【治癒】は一般回復魔法よりも高度な魔法ですぅ~~ただし魔力の消費量もおおきいのですよ~聖女マルナは魔法発動は優れていますが、魔力量はまだまだですから~~」


 なるほど成長過程ということか。まあ、みんな学生なんだから当たり前だ。


 さて、俺の聖女さまは……


 俺の天使に視線を向ける。


 セシリアは……【浄化】だな。あの子は【浄化】にこだわりがあるからな。


 彼女の近くに魔法陣が形成されはじめる。

 俺が森でみたのと同じ光景だ。


 彼女の「浄化(ピュリフィケーション)!」という言葉とともに

 淡くて白と黒がいりまじったようなまだらな光がじわじわと広がっていき……


 ―――そこで光は四散して、魔法陣も消滅した。


「またですの、セシリアさん! あなた何回失敗する気ですの! ワタクシのを見てなさい!」


 ガックリ項垂れるセシリアに激を入れたのは、アレシーナ……だっけか。


 その聖女アレシーナは、セシリアの前でいとも簡単に【浄化】を使って見せた。


「すげぇな、あの子。なんかすごい速度で魔法を発動したぞ」

「はい~~、聖女アレシーナは【浄化】以外にも【結界】【治癒】も同等レベルで使いこなしますよ~」

「へぇ~~全部つかえんのか」

「そうですねぇ~普通はなにか得意なものに偏りがちですがぁ~彼女は均等に訓練を重ねているようですねぇ~オールラウンダーってやつです~~」

「それってすごいんだよな?」

「もちろんですぅ~~彼女はこのまま力を伸ばせばぁ~おそらくあらゆる場面で活躍の機会がありますよぉ~~でも~~」


 でも?

 マシーカ先生が、一呼吸おいて再び口をひらく。


「ひとつのことを極めた聖女には~~敵わないかもしれません~~」


 なるほど。俺で言うなら木刀に加えて弓や魔法など全部が使えるか、それとも木刀一本を極めるかの違いか。


「まあ~~聖女といってもいろいろですぅ~~みんな活躍の場はありますよぉ~~」


 そっかそっか。

 ここは学園だからな。みんな未来に向かって頑張っているようで、おっさんも心が洗われるようだ。


 そこへ再び我が天使セシリアが、マシーカ先生のもとでなにやら質問をしにきた。

 めちゃくちゃメモりまくってる……この子はものすごく熱心だな。もう努力の権化みたいな。


 ふたたび訓練に戻り、四苦八苦する様子のセシリア。


 あまりうまくいかないらしい。


 そんなセシリアを見ながらマシーカ先生が声を漏らす。


「セシリアさん~~とても一生懸命ですね~~」

「ああ、そのとおりだな」

「彼女~~魔法陣知識も学園でトップクラスになるぐらい勉強してますよぉ~~魔力量もじゅうぶんですしねぇ~」

「そうなのか、さすがセシリアだ」

「でも~~複雑な魔法陣を形成してしまって~~知識を詰め込みすぎなのかもしれないですねぇ~~」


 てことは、いきなり難しいことをやりすぎてるのか?


「基礎の魔法陣を教えてやったらどうだ?」

「とっくのむかしに教えてますよぉ~~魔法陣の形成はぁ個人のセンスが大きく影響しますぅ~彼女はそのことを理解しているようですから~不足分を知識で補おうとしているのかもしれません~」


 そっか。なかなかに難しいもんだな。魔法陣のセンスと言われてもピンとこん。

 いや、そもそもおっさん魔法使えんし。


 足りない頭をウンウンうらせていたら、べつで唸ってるのがいる。


「クゥうう…………」


 うなってるのは、聖女マルナか。


「あれは何をやってるんだ?」

「あれは~~魔力錬成ですねぇ~~」

「まりょくれんせい?」

「魔力を練り込む訓練ですぅ~ああやって全身からひたすら魔力を練り込み続けるんですぅ~」

「ほうほう、基礎練みたいなものか」

「そうですよぉ~~ずっと続けていればぁ~魔力量が少しばかり増えますぅ~~」


 ようは木刀の素振りみたいなもんだな。


「他のみんなはやっていないようだが?」

「みなさんはすでにある程度魔力量がありますから~~魔法を使う訓練でも魔力量は微増しますしぃ~わざわざ魔力錬成はしませんねぇ~」


 聖女マルナの魔力量はみんなと比べても、かなり少ないらしい。

 だから基礎練も欠かさずしているのだとか。


「なあ、マシーカ先生。この魔力錬成は、魔法におけるすべての基礎なんだよな?」

「そうですよぉ~~」

「誰がやっても、問題ない訓練って理解で合っているか?」

「……? もちろん~マイナスにはならないですよぉ~~時間は無駄にするかもしれないですけどねぇ~~」


 そうか。



 ならばやってみる価値はあるな。



 授業が終わり、俺はへこみ気味のセシリアに声をかける。


「ボクレンさん……【加護】の件、黙っていてごめんなさい……」

「なにを謝るんだ? 俺はセシリアからじゅうぶん【加護】をもらっているぞ」

「ありがとうございます……でも、それはボクレンさんが今まで積み上げてきた結果です。私がいてもいなくても……」


 こりゃ、かなりまいっているな。朝の元気なセシリアはどこかにいってしまったようだ。

 俺は綺麗な翡翠色の瞳をじっと見ながら言った。


「違うぞ、セシリア。俺はおまえの聖騎士だ」


 返事はなく、少しだけ頷いた少女。


「まだ追加で【加護】をくれるというのなら、あとでもらう。でもセシリアはまだ学生なんだろ?」


「……はい」


「学生は学んで訓練して成長するんだぞ」


 そう、ここは学園だ。


 出来ないものを出来るようにする、そのきっかけを学ぶ場所だ。

 はじめから全て出来ているなら学園に通う意味がない。



「とまあ、おっさんの小言を聞かされても退屈だったな。

 さて、ここからが本題だ―――


 セシリア。明日から俺と朝練しないか?」



 キョトンした顔で俺を見るセシリア。


「朝練? ですか?」


「そうだ、詳しい事は明日の朝にでも話す。まあ、軽めに身体を動かす程度の気持ちで来てくれたらいい」


 少し不思議な顔をしたセシリアだったが、快く「はい!」と言ってくれた。



 そして、数時間後。

 すべての授業が終わり。聖女たちは、女子寮へと戻って行く。もちろんセシリアもだ。



 そう、夜がきたのである。


 女子寮は警備も万全だし。男の聖騎士であるおっさんが入ることもできない。

 つまりは、夜はきほん自由時間だ。


 おっさんが夜にすることは、一択である。


 明日の朝からセシリアとの朝練だから、ほどほどにするが……


 さあ~~エール飲みにいくぞ。

 シュワシュワの酒をグッと飲んでから、寝る。


 王都にはどんなお店があるんだろうか。


 やべぇ……もうワクワクするぜ。



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