1 砂漠から
新章突入!!
そしていろいろと思い出を語っていただきありがとうございます!!
私がやった作品が出ていて、またやりたいなと思ってしまいました。
とりあえず、今はペルソナ5Rに専念していますが(笑)
この作品、時間が溶けますねぇ
今日も今日とて、せっせと執務室で書類作業だ。
カリカリという音ではなく、ポンポンと細かく叩くような音を響かせて、この街で俺だけが使うことを許される純金製の決裁印。
それを軽快に書類に捺していく。
フライハイトに居るときは、特別な用事がない限り午前中はだいたい執務室にいる。
もちろん休みなしに働いているわけではないが、仕事というのは放っておくと溜まるものだからだ。
「リベルタ様、次はこちらの書類のご確認を」
「わかった」
今日も今日とて、俺専属の秘書の役割をしてくれているイングリットが、山のような書類を俺の前に置く。
「えっと?商店街組からの意見書か。えっと、ジンクさんが代表ね」
早速一枚目を手に取り中身を読むと、その書類に代表者の名前が書かれていた。
ジンクさんは、王都から来てくれた商人であり、俺のパーティーメンバーの豪運狐娘ことネルの父親である。
最近は商人と言うよりも、このフライハイトの財務関係を取り仕切る幹部となってくれているが、当人はいずれ商人に戻るつもり満々。
「商人ギルドの介入前に、商人によるこのフライハイトの互助会を新設、か。もちろん了承っと」
そのジンクさんから申請された内容は前々から言っていた、商人ギルドの進出に対しての対抗策だ。
この世界の商取引の権益を支配している商人ギルドが、冒険者ギルドが作られるのに合わせてこの街に入ってくるのは火を見るよりも明らかだ。
その対抗策として、土地の売買の禁止、税関連の整理、金融法の整備などジンクさんが奔走してくれている。
傍らには赤毛のおさげを揺らしたネルが一緒にいるのも最近ではよく見る光景だ。
商人になると言うのなら、こういう仕事は勉強になるのは間違いない。
ということで、今は絶賛ジンクさんの元で勉強中というわけだ。
一日顔を合わせないってことはまずないし、休みの日は一緒にいることもある。
その時にどういう勉強をしてどんなことを学んだか教えてくれる。
勤勉な彼女が、人間的にどんどん成長していくのがわかるのを楽しんでいる大人の気持ちの自分がいるのもまた事実。
「次は、ドンたちからか。溶鉱炉の方が完成したから、稼働するための火入れの日取りの連絡の件か」
「あの魔力汚染の被害を回復させるために、あの土地の土を丸々入れ替えると言った時はどうするのかと思いましたが、まさか溶鉱炉の材料にするとは思いませんでしたわ」
きっと立派な商人に育ってくれると信じつつ、俺の脳裏に浮かぶ商人像とネルの目指す商人像の差には触れないでおいて、決裁印を押したのなら次の書類に手を伸ばす。
そのドンからの書類を読むと執務室で一緒に書類作業をしていたエスメラルダが反応し、彼女も手元の書類仕事の手を止めて顔を上げた。
「ピンチはチャンスってね。魔力汚染っていうのは珍しいケースだけど、発想を変えればそれは有益な資源に変わるんだよ」
「そういう発想ができるのはリベルタが知っているからですわ。普通なら、魔力が散るのを待つしかありませんわ」
その内容は、つい数か月前に起きた事件にまつわることだ。
邪霊ドーラスの襲来。精霊としての役割を放棄し、私利私欲に走った大精霊の末路。
こっちの戦力を見誤り、過信で身を滅ぼした邪霊がこの街を襲ったのは偶然ではない。
この街を作って初めて人為的に行われた悪意ある侵略行為なのは間違いない。
相手は大方予想がつくし、報復も確定。
となればもちろんその被害を逆に利用してやることを考慮して動くと決断するのもまた定め。
「魔力がふんだんに籠った土だよ?利用しないでどうするんだよ」
「制作に適していないはずの土でレンガを作ると言った時のドンさんたちの顔を思い出してください」
「きちんと解決案も出したじゃないか」
魔力汚染というのは、強大な力を持った精霊が何らかの要因でその生命を終わらせ、その場の土地に過剰な魔力を宿してしまうことを指す。
過ぎたるは猶及ばざるが如し、過剰な魔力を含んだ土地は植物は育たず、その土地に住む生き物にも悪影響を及ぼし、その土地だけではなく周囲の土地にも悪影響を与える。
その解決手段は本来であれば、自然の浄化作用に任せて数十年、邪霊ドーラスクラスになれば百年単位でもとの平均値の魔力に戻るのを待つしかないのだが、そこは知恵の女神の使徒を自認する俺こと、リベルタさんだ。
「錬金術を使えるようにしたクリエイトゴーレムで耐火レンガを作るという発想は普通思いつきませんわ」
「いやぁ、火属性の邪霊で良かった良かった。闇属性も入ってたけど、溶鉱炉に使うなら問題ないね!」
火属性の邪霊ドーラスの魔力が籠った土は高品質な耐火レンガを作るのに絶好の素材だ。
レンガを作るためには、それを作るために適した土というのがあるが、そこは素材加工という分野において無類の強さを誇る錬金術の出番だ。
「今さらですけど、湖ができるほど広い土地を掘り返すのはどう考えても非常識ですわね。リベルタでない限り誰もやろうとは思いませんわ」
「まぁ、このフライハイトを作るために山を崩したりしているからね。実績は十分だよねぇ」
あとは作っておいた工事用のゴーレムたちが大活躍だよ。
魔力汚染の影響で遠隔操作がしづらかったけど、それでも人力作業と比べれば雲泥の差がでるくらい作業効率はいい。
「作った溶鉱炉のおかげで、高品質の高級金属がどんどん作れるからパーシーたちの工房の職人たちも良い笑顔を浮かべてたね」
「あとは職人精霊の方々も喜んでおられましたね。最初は精霊の亡骸とも言える魔力を含んだ土を建築物にすることに反対されると思いましたが」
「普通に、許可出してくれたよね。むしろ闇さんとか気にしなくていいって言ってくれたし、次女さんに至ってはドンドン使ってって言ってたよな」
そんな代物を取り扱うにあたって、一応、元同胞の精霊でありこの街に住む住人ならぬ、住精霊と化し、まとめ役になった闇さんと色々と成果物を提供してくれる次女さんには、魔力汚染の土を使っていいか確認はした。
結果は、大して気にせず、あっさりと使っていいと言ってくれた。
むしろあのまま放置される方が精霊的には困るみたいだ。
精霊にとって魔力汚染地域は毒沼と変わらないらしく、処理して元に戻すのがかなり大変だとか。
俺があっさりと解決してくれる方が助かるとのことだ。
おかげで、高純度の火属性の魔力を含んで超高熱に強い耐火レンガを作れたから、俺からしたら万々歳の結果になったと言える。
ダンジョンから鉱石を大量に確保して、その溶鉱炉に放り込めば一段と魔力のこもった強化された精錬素材ができるというわけだが、これを作るのって地味に大変なんだよ。
レンガ一つ一つに込める魔力が膨大だから、その分作る難易度が高い。
今回の事件は、禍を転じて福と為すを地で行ったわけだ。
棚ぼた的展開で、この街の設備がまた一つ強化されたわけだ。
「まぁ、想像以上に汚染範囲が広かったから予定よりだいぶ掘ったけど」
「同時作業で、冒険者の街を建設するためにフライハイトの隣接地を整地することで生まれた土を穴を埋めるために使えて良かったですわね」
「街の下水工事は必須だからね、地下空間を作るとなるとどうしても土の処理問題は出るからね」
「そちらの街の城壁の工事も順調ですわ。ですが、周囲の土地から素材を集めてギリギリですわね」
それを作るために、問題がないわけではないがそれも許容範囲内だ。
「フライハイトと同規模って言うのは難しいけど、それでも他所の街と比べたらだいぶ立派な城壁は作るよ。それならコスト削減になるし、防衛面でも安心だ」
「それは、冒険者の街を拠点としての反乱を想定して?」
「バミューダからはそれを考慮した設計だとは聞いているよ。俺もその点に関しては考えすぎかもしれないけど、将来のことを考えるとそうした方が良いって思ったよ」
その許容範囲の中に、将来的思惑も混じっているとなると苦笑するしかないが、そういう立場になったのならそういうことも考えていかないとダメだよな。
俺の苦笑を見て、エスメラルダも同じように笑い、立ち上がってこちらに近寄ってくる。
「リベルタ、こちらがフライハイトに併設する形で作りました冒険者街の工事進捗ですわ」
「ありがとう」
彼女の片手にした書類には、さっきまで話していた冒険者の街を作っているドンたちがやっている仕事内容が書かれている。
俺のゲーム知識を利用するためにも時間というのはいくらあっても足りないのだから、この世界は本当に色々とやれることが多い。
このフライハイトという街の長になってから、色々と細かいことをやってくれる人は増えたけど、確認と最終的な取り決めは俺がやっている。
冒険者ギルドを作るということが決まったのならそれをどこに作るか、そして冒険者をどういう扱いにするか。
「公共施設、病院、神殿、訓練場、そして冒険者ギルドの建物に、宿屋街、飲食店街に・・・・・」
最初は第二城壁内の学園と併設する敷地に作るかと考えたが、さすがにそれは治安面であまりよろしくないということで、外部の人間と接触できる土地をこの際だから新設しようということになった。
わかりやすく言えば長崎の出島のようなものだ。
この街、フライハイトに入れる人間は制限し、管理できる状況を維持した方が良いとバミューダが言った。
選民思想的な構図に見られかねない行動であっても、現状この街が抱え込む知識という名の財産を下手に外に出さないためには必要な措置だと言われれば納得しかない。
仲間として抱え込むとしたらまだいいけど、そうじゃない人間に教えたら大変なことになるのは目に見えている。
その点を踏まえるとバミューダの提案した、外部の第三者が活動できる施設を作り、そこしか出入りできないようにするのはいい案なのかもしれない。
「うん、順調だな。ここしばらく平和だから、その反動で何かが起きそうな予感さえなければ最高なんだけど」
「そういうことを言うと、何か起きますわよ。ねぇ、イングリットさん」
「すでに、冒険者ギルドとの交渉でいろいろと起きておりますが。それ以外のことでしょうか?」
「あー、期待の新人って言ってもさすがに若手をギルドマスターにするっていう条件は厳しかったね。まぁ、無理やり通したけど」
そんなことでひとときの平穏を享受しながらの書類仕事を進めていると、扉に近づく気配を感じる。
「この気配は・・・・・御庭番衆?」
「リベルタ」
「リベルタ様」
「えっ、俺の所為!?」
それは普段この時間帯には近づかない御庭番衆の手の者の気配だ。
ゲンジロウではないが、この気配の持ち主は城門の警備に当たっている御庭番衆だ。
予定外の人物が近づいていることに、エスメラルダとイングリットから疑わしげな視線を向けられるがさすがにフラグ回収には早すぎる。
そんなやり取りをしている間に、御庭番衆は部屋の前にたどり着き、この執務室を警護している御庭番衆から中に入れても良いかと尋ねられて俺は許可を出す。
「失礼します。御屋形様、城門の方に来客の方がいらっしゃったのですが」
そして入ってきた御庭番衆はやはり、城門を警備している人物だった。
「来客?今日はそんな予定なかったと思うんだけど。商人ギルド?それともどこかの貴族?」
そして伝えて来た内容は、ほのかにトラブルの匂いを感じるような言葉。
また貴族たちがちょっかいかけて来たかと身構えたが。
「いえ、西の大陸からの使者の方です。クラリス・ノーランド様からの使者だと名乗っておりました。書状も預かっています」
「なに?」
予想外の人物から使者が来て、俺は目を見開くのであった。
砂漠の大陸の英雄が一体全体何の用なのだろうか?




