30 EX 次代の神 15
カウントダウン!
書籍第二巻とコミカライズ一巻発売まで残り8日!!
「「「「・・・・・」」」」
最近やたら騒がしい、天上の庭園。
そんな場所が今日は少し、静かだ。
いや、正確に言えば強制的に静かになっている。
「これは、ふざけているのか?」
天上の庭園に設置された、ガチャ。
リベルタの試練で馬鹿をやらかした神々に働かせて、ガチャを回すための資金を用意できたのなら回すのは自然の流れ。
興味本位で回し、ガチャマシンから出て来た代物を見てケフェリの表情から感情が抜け落ちる。
マシンは無駄にギミックが凝っていて、ガチャを回せば、青、緑、赤、銀、金、そして虹と六段階で前兆の光が出るとガチャの説明書に書かれていて、さらにはファンファーレや、シークレット演出もあるという。派手な説明書を片手にしたケフェリがさっそく回してみたのだ。
回数は十回。
現在進行形で、あくせくとリベルタに迷惑をかけた償いで働いている三柱の神々の涙と汗が主成分の資金を投入した結果。
「これは、なんでしょうか?眼鏡に鼻とひげがついていますが、変装用の道具でしょうか?」
「さぁ?でもそんなの付けてたら目立つよね。神力を感じるから、たぶん誰かが作った奴だと思うけど。僕としてはこっちの方が気になるけどな。綺麗な人形だけど、絶対これ呪われているよね?」
メーテルが、ガチャのトイカプセルから取り出された品を取り出ししみじみと眺めている。
それは宴会の時とか、身内のパーティーとかでふざけるとき用のパーティーグッズだと知らないからこそ、純粋に首を傾げている。
そんな品物よりも、アカムが気になったのは禍々しい気配を発する洋風の少女の人形。
この程度の呪いで神がどうにかなるわけでもないので、ツンツンとアカムが人形の頬をつつけば、必死に目線を逸らす人形がそこにいる。
しかし、相手は戦いを司る神、その逸らす目線の先に回り込み、目線を合わせる。
「うーむ、これはどこかで見たような気がするのである。はて、どこで見たのか?」
そんな隣で、トイカプセルには物理的に入らないだろうというレベルで巨大な絵画を眺めているゴルドスは、黄色い夏に咲く花の絵を見ている。
見る人が見れば、とても有名な画家が描いた絵とそっくりとのタッチであるのがわかるが、ここは異世界。
ゴルドスの見覚えは、漫画の世界の話なので確信が持てない。
「えっと、これが、これで、これが。あれぇ?」
そしてそんなゴルドスの隣で、首を傾げているのは神々がふざけて作った知恵の輪を必死に解くパッフル。
それが人間が作ったような、まだ物理的に解けると判断できそうな物であれば、神である彼女がこんなに疑問符を頭上に散りばめないだろう。
いくつものリングが、複雑に絡み合い、一見するとすべて繋がっているよう見える物体。
神でも解くのに困る知恵の輪。
そしてここまでの代物はまだ、マシなのだ。
「・・・・・」
無言で、ケフェリがゴミ箱に叩きつけるように捨てたのは神の手によって作られた渾身のバニースーツ。
女性が着れば、それはきっと華やかな絵になっただろう。
布地や、縫製にもこだわりが見られ、さらに、ズレ防止にサイズの自動調整、自動洗浄に、自動修復、耐久性向上と、リベルタが見たらふざけてはいるが、装備としての性能が馬鹿みたいに高いと目頭を押さえるだろう一品。
神の手によってつくられているから当然と言えば当然だが、刺繍のロゴを見てそれは男神が作った物だとわかれば、女神であるケフェリはゴミを見る目で焼却炉に叩き込んだ
そして、さらに別のアイテムを手に取る。
「あ、それ魔道具になってるよ」
「む、確かに。珍しい形の魔道具であるな」
「打撃武器でしょうか?」
「それにしては小さくないですかぁ?それに色合いも戦うって感じがしませんねぇ」
それは持ち手があり、その先に少し小さめの円柱が取り付けられている。
水玉模様が描かれ、そして角がとられ、安全面に配慮されているという観点で、武器には向かない構造なのは確か。
それを見て首を傾げる神々を前にケフェリがそっとその魔道具を振るうと何やら子供が喜びそうな音が響き、その響きに合わせて、心を安らげるような魔力が流れる。
「・・・・・」
「ええと、子供が喜びそうな魔道具で良かったね!」
「愚か者!!北の!そこに触れるでない!」
子供をあやす道具、所謂『ガラガラ』。子供、それも赤子がいる家庭であれば喜ばれるかもしれないが、独身ならぬ独神のケフェリの手元にあるのは何たる皮肉か。
アカムが無理をして場を和ませようとしたが、ゴルドスが触らぬ神に祟りなしといわんばかりに止めに入った。
それくらい今のケフェリから表情というのは抜け落ちている。
神というのは長い年月を生きている存在。そしてその年月の中には当然だが恋人同士になり、そのまま結婚する神々も存在する。
そして当然だが、子供を産む女神も存在する。
そんな神々の中で、ケフェリ、メーテル、パッフルの女神三柱がその手の経験はどうなのかといえば、全員独神だ。
そして愛の女神のはずのパッフルまでもが、どういう意図でこの魔道具が作られたか察した瞬間に目が死んでいる。
憎しみを籠めているのではない。
虚無に満ちた眼差しを向けているのだ。
触れてはいけない、とすぐに察したゴルドスがアカムの肩を掴み止めたが、吐いた唾は飲み込めない。
三柱が爆発するのではと、恐る恐る見ていたが、ケフェリがそっと手に持ったものを机の上に置いて安どのため息を吐く。
しかし爆弾はまだ残っている。
「・・・・・」
「南の、無言で鞭を持つのは止めるのである。さすがに何か言って欲しいのである」
「東の、さすがにそれに対して何か言うのは無理があるんじゃないかな?ほら、西のとかパッフルがゴミを見る目でガチャ筐体を見てるよ」
次に出てきた物は、鞭だ。
それも、武器で使う物ではなく、ちょっと特殊なプレイで使う系統の代物だ。
このガチャの中身を入れた奴らは馬鹿なのかと、男神二柱は冷や汗が止まらない。
「このままでは壊されるのである」
「いや、こんな空気になるならいっそのこと僕が壊そうか?というか、さすがにこんなこの場の空気を読めていない内容だと、僕がこれを作った奴をボコボコにしたいんだけど」
女神三柱の圧を感じ続けるのは、さすがに理不尽だと思いつつ、まだ怒りを抑えている女神たちの堪忍袋がはじけないことを切実に祈りつつ。
次の物に手を伸ばし、トイカプセルを開けるケフェリを見守る。
こんな冷や汗の流れるドキドキは求めていなかったと、もっと楽しく興奮できるモノだと思っていたと、アカムとゴルドスは内心で文句を言う。
漫画を読む気にもなれず、滴る冷や汗を拭いながらそれを見守る。
「その時は吾輩も協力するのである」
カプセルを手に取り、きゅっと横に捻るだけの動作がこれほどまでに怖いと思ったことはない。
そして次に何が出てくるのか。
「箱?」
「綺麗な包装用紙であるな」
それは掌の上に乗る程度の、小さく綺麗にラッピングされた箱だ。
もしかして当たりか?とアカムとゴルドスは安堵しかけたが。
「いや、待って。じゃあなんで光が青なの?当たりなら、もっといい色でいいはず」
「・・・・・もしや」
その割に、出て来たガチャの光が低ランクだったことに気づき、アカムが焦り、ゴルドスも気づき焦る。
「ふん」
そしてそれはケフェリも気づいていて、冷めた目でその包装を解くとそこからスプリングで飛び出すような形で道化の人形がケタケタと笑いながら飛び出してきた。
所謂、びっくり箱だ。
「「・・・・・」」
作って入れた神は別として、面白いと欠片も思えない空気でこれをやられると女神たちだけではなく、男神二柱からも腹の底から怒りがふつふつと湧き始めた。
無言でケフェリがゴミ箱にびっくり箱を捨てるのを見て、最後のトイカプセルに手を伸ばす。
そんなタイミングで、この庭園の扉の方に気配が近寄ってくる。
「珍しいですね」
「そうですねぇ」
その気配を感じ取ったのは、この場にいる神々全員。
虚無のような眼を取りやめ、入り口の扉がノックされたことを確認すると全員で頷き入ることを許可した。
「失礼します」
入ってきたのは顔の無い翼を持った存在。
神に仕え、天界と地上を繋ぐ代行者、天使。
その存在が片手に書類を持って、入ってきた。
彼らは、とある条件を満たすことによってここに来ることができる。
「何か用か?」
その天使に向かって、神は理不尽に怒りをぶつけることはない。
ここまでのガチャの惨状で怒りを抱えていることは事実であるが、それにこの天使は関わり合いの無いことだ。
ケフェリが代表し、いつも通りのぶっきらぼうな口調で話しかけると、天使は頭を下げ、そして持ってきた書類を差し出した。
「この度は、このクエストを皆様方の使徒に発行して良い物か許可を頂きたく参りました」
それは天界から、下界にいる英雄たちに贈られるクエスト。
「ふむ、それなりに溜まったか」
「いいですね、これはチャンスになります」
「うむ、吾輩の使徒も積極的に参加してほしい物であるな」
天界からの試練として、神々が合法で使徒たちを強化できるチャンス。
限度はあるが報酬を乗せることもできるゆえに、さっきまで機嫌が悪かったケフェリも少し気分を持ち直した。
それを見てホッとするアカムとゴルドス。
メーテルも乗り気でその紙の束を受け取って中身を確認し始める。
「あらかじめ、こちらの方で依頼を厳選させていただきました。特に、世界の運営上やっておいた方が良い内容に関しましては、優先順位を上にさせていただきました」
このクエストは普段、天使たちがやっている仕事を英雄たちに外注という形で世界の運営をよりよくこなす意味もある。
天界からすれば、仕事が減って嬉しい、英雄からしたらすごいアイテムが貰えてうれしいということになる。
「私は、問題ない」
「ええ、私もよろしいかと」
「吾輩もいいのである」
「僕もいいよ」
「私も、いいですよぉ」
そして何より、天使が真面目に選んだ仕事故に変な事案が混じるということはない。
それゆえに神々も安心して判を押すことができる。
神印をそれぞれ取り出し、書類に押す。
それによってこのクエストが下界に放出されることを許諾したことになる。
「感謝します。続きましてこのクエストの成功報酬に関しましてどのようにするかお聞きしたいのですがよろしいでしょうか?」
そしてこのクエストは、この場にいる神々がどのような報酬を出すか決めることになる。
流石に神界のアイテムを直接出すことはできないが、天使たちに手配させ、下界では入手しづらいアイテムを用意することはできる。
「吾輩は古代の武具のレシピを一枚出すのである」
「じゃぁ、僕は少し珍しいスキルスクロールを用意するよ」
「では、私は少し手に入りにくいモンスターの卵を用意しましょうか」
といっても、さすがにすべて天使に任せるわけではない。
こうやって、神々が自前で持っているのならそれを提供することもある。
「私はぁ、この地図をお願いしますねぇ」
ゴルドス、アカム、メーテル、そしてパッフルとそれぞれ報酬を提示し、それを天使は受け取る。
「ケフェリ様はいかがいたしましょう」
「私は」
そして最後に残ったケフェリはどうするかと天使が問いかけると、そういえば最後のトイカプセルを開けていないことを思い出し、どうせなら開けてから答えるかとケフェリは無造作にトイカプセルを開ける。
「ほう」
そしてそこから出たものを見て、初めてケフェリは笑みを浮かべる。
「私はこれを報酬に回す。問題ないな?」
内容的には問題ない品が出たためそれを報酬として天使に渡すのであった。




