祝1周年記念小説家なろう限定SS FBOクリスマスイベント 『逆襲のトナカイ』
応援の言葉9割!残りは気合と根性で迎えた一周年!!
皆様。メリークリスマス!!
さて、諸君。クリスマスとゲーム、これは切っても切れない関係性があると俺は思う。
FBOというソロ推奨をしているゲームであっても、ネットに繋がっているVRMMOという環境下で活動している段階で、クリスマス商戦という戦場からは逃げることは叶わない。
クリスマス限定の装備、イベント、スキン、そしてキャラと様々な方法で課金を要求してくるのがクリスマスのネットゲーム界隈だと思う。
さて、今日はそんなFBOでのクリスマス商戦のことについて語ろうではないか。
うすぼんやりとした意識の中で、そんなことを思っている段階でこれは夢の中だろうなと判断できた。
前に見た子供のころの夢とは違う。
FBOに触れて、幾年か経過したころの記憶だなと、サンタクローススキンを装着したプレイヤーたちの姿を見て理解した。
ああ、これはあの狂気のクリスマスイベントだなと。
『カカカカ!そろいもそろってクリスマスだというのにネットゲームの世界にいるのかよ』
独特な笑いをしている、大きな杖を持つイケおじは半田さんか。
懐かしい、杖を持っているのに物理アタッカーっていう、魔力を上げて物理で殴るというおかしなスタイルのプレイヤーだった。
中身は株で大儲けしている勝ち組だと言っていたが、その勝ち組がクリスマス真っ盛りにネトゲしているのは矛盾しているなと思った。
『半田、お前が言うな』
そんな半田さんにツッコミを入れるのが、釘バットというネタ武器を愛用するマッシャーさんか。
ああ、この人も懐かしい。
元甲子園球児だと言って、某関西球団の熱烈なファンだ。
だったら野球ゲームの方をやった方がいいのではと思うかもしれないが、この人VR野球ゲームのプロ選手ってことで、FBOは気分転換かつトレーニングだってプレイしていたんだよな。
『ロンリークリスマスよりはマシだ』
ああ、このバリトンボイスの七三分けアバターは忘れもしない。
眼鏡をクイッと上げる仕草が、男のもっともかっこいい仕草だと豪語する、変人プレイヤーの執事さんだ。
うん、出会った当初『セバスチャンじゃないのかよ!?』ってツッコミ入れたくらいに変わった名前だったな。
サポートが上手い人だったなぁ。
『女っ気ゼロだけどな!!』
そんな3人と一緒にいたのがリベルタと名乗ってプレイしていた俺だ。
サンタクロースコスチュームに鎌槍を抱えた、この変わり者集団の中ではまだ普通よりの変人を自称していた過去の俺。
『『『それは言うな』』』
仲良くネットクリスマスを過ごしている段階で、当然ここにいる4人は交際相手はいなかったけどな。
たしか、この時期は気が合ってちょくちょくこの面子でパーティーを組んでいたんだよ。
同じゲームを愛するもの同士というよりは、人間として妙に波長が合ったんだよな。
FBOのイベントは他のありふれたゲームとは違い、一捻りされたかなりマニアックで特殊なケースが多い。
そしてこのクリスマスイベントも例外ではない。
大体のゲームで華やかなイベントが用意されている中で、FBOは一味違うクリスマスを用意し、それにこうして約束なしでも集結できるのは、やはり気が合うからという一言でしかない。
『カカカカ!さて、さて、今年も随分とトナカイ狩ったなぁ』
『まったく、来る日も来る日もトナカイばかりって、メインのサンタがどこにもいやしねぇ!クリスマスってイベントならミニスカサンタくらい用意しろってんだ。花が無さすぎるぞ』
『マッシャーさん、そういうのをお求めなら集会所に行けばたくさんいますよ』
『全員NPCだけどね!』
『執事!リベルタ!マッシャー!おしゃべりはそこら辺にしておけ、始まるぞ!!』
FBOではお馴染みのクリスマスイベント、反逆のトナカイ。
毎年毎年、大量の荷物を運ばされ、報酬は子供の笑顔というプライスレス。
終わらぬ配達作業に堪忍袋の緒が切れたトナカイたちが反旗を翻し、サンタたちの住居を襲撃するというのがこのイベントのストーリーだ。
『おー、来た来た』
『今年は物理タイプのトナカイは随分と筋肉が仕上がってるな』
『なんというか、年々濃くなっていますよね。制作者たちが人並みのクリスマスを過ごせないっていう哀愁と怨念、そして殺意が。というか前哨戦がだるすぎですよこのクエスト』
半田さんの声に従って各々の武器を構える。
俺が掌を額にかざして遠くを見れば、砂煙ならぬ雪煙を巻き上げて走ってくるトナカイがいる。
前哨戦を終えて登場するボスだ。
ただ、サイズがヤバい。
某機動戦士のサイズ感で、2足歩行で走る筋肉モリモリのトナカイが目を真っ赤にして俺たちにめがけて走ってくる。
『リア充死すべし!ブラック労働反対!俺たちだって聖夜にデートしたいんだ!!』
そして叫びながら戦闘が始まったが、クラス10まで育成された俺たちにとって最高難易度とは言え、クラス9程度のイベントボス『バーサークリンディア』を倒すことは難しくない。
『ネタとしては面白いんだけど、ゲームとしてはクソなセリフだよな』
『いや、ネタとしてもギリギリじゃないか?』
『倒すのに罪悪感というか、共感するから倒しにくいっていうか』
『この前、SNSで炎上してたな。トナカイに同情するって』
もっとまじめにイベントストーリーを考えればいいのにと思いつつ、行動パターンからわかる初動に反応して俺たちは戦闘に入る。
『まずは脛に一撃!!』
『一夜で千件の配達なんて無理だろ!!』
半田さんの一撃で、バーサークリンディアが悲痛な叫びをあげる。
ただ、叫ぶ内容が悲しすぎるけど。
『崩れたら後頭部からスマッシュ!!』
『仕事している俺たちの前でいちゃつくな!!』
膝をついたところに、マッシャーさんが後方から釘バットで強襲。
ゲームの運営スタッフの叫びをそのまま収録したと言われるセリフのダメージボイス。
『からの、チェーンマジックバインド』
『アットホームな職場だって言ったじゃないか!!』
倒れ込んだところで、魔法の鎖がバーサークリンディアを拘束する。
それを聞いて、攻撃を止めるプレイヤーもいるらしいが、俺たちは躊躇なく攻撃していく。
『首狩り』
『・・・・・』
台詞を言わせる前に倒してしまえば問題ない。
俺のとどめの一撃で、バーサークリンディアは討伐完了。
『はぁ、他のルートの難易度は普通なんだけど、なんで一番素材収集効率がいい難易度ヘルは精神的に攻撃してくるんだよ。普通にステータスアップとモーション変えればいいだけだろうに』
『カカカ、俺たちが強くなりすぎて普通に強いモンスターを用意しても攻略しちまうから苦渋の決断だって、噂になっているぞ』
『あとは、仕事が多すぎて新モーションを追加する予算も余裕もないって聞いていますね』
『畜生!』
クリスマスイベントの素材周回。
効率重視なら、一番素材の多い難易度を周回した方がいい。
だけど、そう簡単に攻略させないように運営が考えた精神攻撃にマッシャーさんは苦情を入れ、半田さんが苦笑しながら返事をする。
『リベルタ出ましたか?』
『出てないですね。さすがドロップ率0.03%』
そして倒したバーサークリンディアから出た金色の宝箱を開けて中身を確認するが、欲しい素材は出ていない。
『くそぉ!!!今日の零時にイベント終了なんだぞ!!このままだと限定NPC用の装備がコンプできないじゃねぇか!!』
『マッシャーさんが周回さぼってるからですよ』
『仕方ねぇだろ!!年末は色々とイベントが多いから試合の数も多いんだよ!!』
『そんなタイミングで推し声優がやる限定NPC装備ですからね。とれなかったらかなりやばいですよね』
『しかもマッシャーさんの性癖にドストライクのミニスカサンタコス』
『おいリベルタ!お前も好みじゃないとは言わせねぇぞ!!それとむっつり執事!自分は関係ないとかすました顔してるが、ここにいるメンバーの中で一番早く集めているの知っているからな!!』
これもゲームあるあるなのだろう。
物欲センサーがしっかりと仕事をして、社会人の時間を削る。
一緒にプレイして効率を少しでも上げようと努力している光景。
そしてゲーマー同士のくだらない会話。
ああ、本当に懐かしい。
しかし、これも時間切れのようだ。
懐かしい記憶、懐かしい思い出。
それは夢の中だからこそ、鮮明に見えているのかもしれない。
会話がよく聞き取れなくなってきた。
それはすなわち、この夢から覚めるということ。
まだ見ていたいという気持ちもある。
だけど、いつまでも見ていていい景色でもない。
まぁ、また機会があれば見ることができるだろうさ。
騒がしかった夢から覚める。
きっとこの懐かしくも楽しかった夢が、サンタクロースからのクリスマスプレゼントなのだろうさ。




