14 交流イベント 野郎たち(?)のひととき 1
この一週間で、ネル、アミナ、イングリット、クローディア、エスメラルダのそれぞれと交流できて色々な意味で関係を深められたと思う。
なら、あとは開拓作業に向けてまっすぐにという・・・・・わけではないんだよね。
女性陣を労わった?のなら、しっかりと男性陣の方も労わらないとね。
「ということで、日々のお仕事ご苦労様!乾杯!!」
「「「乾杯!!」」」
2人っきりってなると男同士でもなんか気まずい噂を流されそうというジュデスの提案により、ジュデス、シャリア、ゲンジロウ、そして俺の4人での飲み会となった。
「本当によろしいのですか、御屋形様」
「良いって、良いって。今日は3人が普段頑張ってくれていることに対するお礼だから。今日は俺が腕によりをかけて料理を振る舞うぞ!」
といっても、一緒に飲み食いするのではなく。
俺が鉄板の前に立ち料理を作るというスタイルで、3人に食べて貰う。
酒も料理も全部俺が用意することに、ゲンジロウは恐縮しているようだ。
「そうだよ、ゲンジロウさん。リベルタが料理を振る舞うって言うんだ。それを遠慮する方が失礼だ」
「そうだぞ♪それに、これは僕たちの正式な報酬だよ。受け取らない方がまずいって」
「ううむ、そういうことなら」
それに対して、ジュデスとシャリアは全力で楽しむ気満々。
料理を食べるために空腹にしてきて、この宴会を楽しむつもりだという気概が伝わってくる。
俺としては素直に、楽しんでくれている方が嬉しい。
「それじゃ、調理を始めるから先にこれでも摘まんでいてくれ、酒は欲しかったら遠慮なくいってくれ」
「わかり申した」
「今日は一杯飲むぞ!!」
「頑張った分はしっかりと飲んでおかないとな」
その2人に触発されて、ゲンジロウも肩の力が抜けた。
俺は最初の一杯目に飲んだ果実水のコップを脇に置いて、お通しで和え物を配る。
3人には駆け付けの一杯ということでエールを振る舞っているが、用意したのは精霊たちに頼んで作ってもらった上物だ。
3人揃って目を見開き、一気に飲み干しているのを見てすでにもう次の一杯を配り終えている。
「いやぁ!こんな美味いエール飲んだことがないよ!」
「本当に!冒険者をやっていた時にエールはよく飲んでいたけど、これを味わったらもう元に戻れない」
「うむ、東の方ではあまり出回っている酒ではなかったので、飲んだ機会は少ないでござるが、その時飲んだものと比べると雲泥の差でありますな」
「樽で用意してあるから、どんどん飲んでくれ。後はゲンジロウには東の方から取り寄せた清酒もあるし、御庭番衆にも差し入れで届けてあるから」
「なんと!」
魔道具で熱した鉄板の上では、大きいステーキ肉を焼き始め、その隣に設置した鍋では揚げ物を始める。この3人はとにもかくにも体を動かす連中だ。
お上品な料理よりもがっつりとした料理の方が食べたいだろう。
「えー、ゲンジロウさんだけ?」
「そうだそうだ!!平等にしろ!」
ゲンジロウが飲みたいであろう清酒は、南の大陸だと貴重だ。
そこは、東の大陸の港を確保した公爵閣下に頼んで融通してもらった。
もちろん、ジュデスとシャリアにも好みの酒を用意してある。
「わかってるわかってる。公爵閣下に頼んで上物のワインを手に入れてあるし、エンターテイナーたちにも差し入れしてあるから」
「さすが!わかってる」
「もう、僕惚れちゃいそうだよ」
その対応に満足気に頷く2人。和え物を頬張りながら酒が進み、どんどんジョッキが空いていく。
洗い物をどうするのかといえば、それも魔道具で食洗器みたいのを作ってあるのでそこに放り込めば勝手にジョッキが洗われ、乾いて出てくる。
精霊たちも武器とかばかりじゃなくて、俺の教えるこういう前世の文明社会の便利な家電製品を、魔道具で工夫して再現することを楽しんでいるようで、喜んで引き受けてくれる。
「むぅ、シャリア殿は本当に男であるか?間近で見ても本当にわからないでござるな」
「それな、俺もたまにあれ?シャリアって女だっけ?て間違いそうになる」
お酒を飲み始めると色々と雰囲気が変わる。
まだ飲み始めで致命的な変化はないけど、それでも多少陽気になる。
口の滑りが良くなったゲンジロウが、シャリアの方を見て、彼が妙な色気を出し始めていることに困惑し、性別を確認するくらいだ。
「そうそう、僕って男なのにエンターテイナーの仲間と一緒に着替えようとすると、みんな顔をそむけるよね」
「お前って奴は!自分が周りの女よりも美人なのを理解しろ!メンバーから新しい扉が開きそうだって相談を受ける俺の身にもなれ!」
「可愛くてごめんね♪」
軽い冗談が飛び交いつつ、酒を飲んでいれば場はドンドン盛り上がる。
「ほい、一品目。ハイホーンブルのステーキだ。岩塩は振ってあるけど足りなかったらこっちのソースをかけてくれ」
「クラス6のモンスターのお肉が普通に出て来たな」
「御屋形様が用意する料理であるから、当然とは思うであるが、これが当たり前だと思って良いモノか」
「わかる!もう、元の生活には戻れないよね!ここでの生活が良すぎて。公爵家で両親と再会させて貰えたけど、すぐにこっちに帰って来ちゃったもん」
「お前の場合、女性の格好の方が落ち着くからすぐに戻ってきただけだろ」
「それもある!」
テンションが上がるにつれて会話の中身がぶっちゃけるような内容になる。
「はい、2品目鶏のから揚げだ」
「あー、これエールが進むやつだ」
「むぅ、米の酒ともよく合う」
「アハハハ!お酒が進むぅ!」
トンと皿の音を響かせて、置いたのは大皿に山盛りとなった唐揚げだ。
「脂っこい物が続いたから、冷やしトマトときゅうりの浅漬けもおいておくな」
「わかってるぅ!!」
「おいシャリア、酔ってるのか?」
「酔ってます!!というか、今酔わずいつ酔うのか!!」
「服を着崩すな!お前の肌が見えるとヤバいんだよ!!」
「むぅ、これが仲間を惑わす色香か。男だというのになんと恐ろしい」
シャリアは思った以上に酔いやすいようで、笑い上戸の気を見せ始めている。
ただ意識が朦朧とするようなそぶりがないことから、酒類には一定の強さはあるようだ。
レベルで強化されているからぶっ倒れる心配はないと思うけど、レベルというのは色々と不思議だ。
身体の能力が総合的に高くなって、デバフ攻撃に対する抵抗力も上がっているはずなのに、こうやって酒に酔うことができる。
酔いは一種のバッドステータスとも言っていい。
なのに、楽しむために酔うことができる。
そのロジックはFBOでは飲酒という行為はできたけど、酔いはしなかったから解明できていない。
機会があれば調べてみたいなぁ。
そんなことを思いつつ、次から次へと調理を進めるとだんだんと3人の腹も膨れ、次第に食事よりも飲酒の方がメインになっていく。
「はぁ、本当に冒険者時代の生活がなんだって話だよぉ」
「わかる、本当にわかる!俺だって末席とはいえ貴族だっていうのに、今の生活の方が断然いい!ある程度村が発展したら家族全員こっちに呼ぶ!」
「本当にその通りで!拙者もこっちに来てから厚遇してくださる御屋形様には感謝しかない!」
そして一緒に酒を飲めばより一層、仲良くなれる。
酒を飲んで暑いのか、肩がはだけ目に毒なほどに色気を振りまくシャリアの背中を叩き同意するジュデス、ゲンジロウも大きく頷いている。
酔っ払いが3人完成。
「家族はいつ頃呼べそうなの?僕のところは公爵閣下のお世話になってるけど、こっちである程度建物が建ち始めたら呼ぶつもりだよぉ」
「拙者の方は来週くらいには迎えに行く予定でござる。本当だったら、ジンク殿たちと一緒に来られれば良かったのでござるが、拙者たちの一族が東の大陸から移住するのにも準備が必要でござって」
「大変だねぇ。まぁ、うちも爵位の返上とか色々あるから時間がかかってるんだよねぇ。さすがに貴族のままじゃ領地を放り出してこの土地に住むわけにはいかないし」
共通して話せることがあるから、話題が途切れることはない。
俺は食器を片付けながら、酒を提供していて少し手空きになり始めている。
そして、ちょうど良い話題になった。
「ちょっといいか」
「はい!拙者は御屋形様の話はいつでも聞きますぞ!!」
「そこまで勢いよく聞かなくても大丈夫だけど、そっちの2人は」
「「うぇーい!!!言ってみなって!!」」
「エンターテイナー乗りが出ているぞ」
家族を連れてくることとは関係ないとは言えないが、そこまで関係することではない。
しかしこの3人の家族を連れてくるとなると、利用する可能性がある話だ。
「歓楽街のことに関して、相談したくてね」
「かんらくがい・・・・・」
「エッチなお店だ!!」
「もう、リベルタ君も男の子!」
「はいはい、酔っ払いながらでもいいから、話を聞いてな。ある意味男同士でしかも素面じゃ話せない内容なんだから」
クローディアに相談して、一応これからできる開拓町に歓楽街を設置することは決定した。
「まぁ、必要であるのはわかっておりますな」
「必要だよねぇ」
「わかるぅ」
少しだけゲンジロウの酔いが覚め、ゆっくりと舐めるようなペースで酒を飲み始めている。
シャリアも、冒険者時代の記憶を思い出したのか少し目が座った。
ジュデスだけは、酔いを残したままだからか、ふらふらと頭を揺らしながら話を聞いている。
「歓楽街っていうとやっぱり裏みたいな感じの人が入り込みやすいじゃん?だからいっそのことこっちで管理しようって発想になってるんだよ」
「拙者たちは治安維持ということで関係してきそうですな」
「あー、そうだねぇ。裏関係ってなると僕たちもかなぁ?」
「そういう話なら、酒の席じゃなくてよくないかぁ?」
真面目な話という流れになり、酔ってする物じゃないと空気がシリアスなものになり始めている。
「ああ、いや、作ることじゃなくて普通に皆が知る歓楽街のことを教えて欲しいんだよ。俺は、歓楽街のこと知らないから」
ただ、そういう町作りのことではなく。この世界の歓楽街のことを知りたかったのだ。
こればっかりは女性たちに聞くわけにいかないし、真面目な空気で聞くわけにも行かない。
「ああ!そう言えばリベルタは子供だった!」
「え、行ったことないの?」
「なるほど!そいうことでしたら拙者の戦歴を語るのもやぶさかではありませんな!」
こっちの世界のシモ事情を把握して、良い環境を用意するには猥談も必要なのだ。
知らないで俺の勝手な考えで歓楽街をこさえてしまうと、問題が多発する未来しか見えない。
流石に俺の知る日本式の歓楽街をこの世界に爆誕させるわけにはいかないよなぁ。
衛生面とか治安関係で妥協できないところはあるし、領主である俺からのサポート面を充実させる必要があると思う。
ムフフと鼻息を荒くしているゲンジロウは見た目硬派なのに、意外とそういうところに行く機会は多かったのか?
それとシャリア、意外だと目を見開くのは良いけど、俺、子供、そういう場所には行けないからね?
一番失礼なのは、ジュデスだよな。
まるで俺がそういう界隈に行くのが当たり前のように思っていたというリアクションだぞ。
そこから始まる猥談。
「え!?東の大陸ってそういう感じなのか!?」
「南の方はそういう感じなのだな」
「僕が行ったなかで一番良かったのは西の方にあった歓楽街で」
「「詳しく」」
男って、結局こういうことで盛り上がるんだよね。
そういう話に寛容な女性なら、問題ないかもしれないけど、やっぱり男同士だからそういう話ができるんだよね。
まぁ、一番詳しいのはやはり冒険者として世界を渡り歩いていたシャリアということで、女装男子が歓楽街を語るという不思議な光景を見続けることにはなるのであった。




