13 交流イベント 魔王お嬢様 1
もうすぐ一周年だ!!
気合を入れます!!
あとクローディアさんのキャライメージが意外とついていなかったことに焦りました。
イメージキャラとか伝えた方がいいんですかね?(汗)
「ついに私の番ですわ!!」
「うん、そうなんですけど」
「誘われてばかりでは、少々芸がないかと思いまして私の方から誘いに来ました。リベルタ、遊びませんか?」
この四日間パーティーメンバーと一人ずつデート?してきたが、最後の1人となったエスメラルダ嬢は、俺が身支度を整えたタイミングで俺の部屋の扉をノックし、扉を開けたところで準備万端で登場してきた。
普段使いの戦闘用装備ではなく、貴族の女性が普段着るドレスを簡素にした、避暑地で寛ぐときに着るリゾートドレスのような装い。
歩くことを前提にした格好で現れたエスメラルダ嬢は、前日まで四日間の俺の行動を見て自分からやってきたのだ。
「ということは、何かやりたいことが?」
このバイタリティ溢れる行動に、やってみたいことがあるのかと思ったのだが。
「ありませんわ!!リベルタと一緒にいることしか考えておりませんでしたわ!!」
「素直ですね」
「あなたに伝える気持ちは、隠さないと誓っておりますから」
まさかのノープラン。
行動が先走って全力疾走に身を任せている彼女の様子は、最初のハイテンションでなんとなく察していた。
「了解です」
一瞬、犬耳が生え彼女の背後で尻尾がぶんぶんと振られている幻想が見えたけど、気にせず話を進める。
貴族令嬢であるエスメラルダ嬢とのデートとなると何か特別なことをするべきなのかもしれないが、平民の俺の考えるような「特別」は、貴族の特権を持つ彼女にとってはありふれたものなのではないかと思う。
となれば、上流社会のお茶会とかパーティーの経験豊富な彼女の好奇心を満たせて、なおかつ新鮮味があることの方がいいような気がする。
あと、気を付けるのは――。
「?」
何をしてくれるのか楽しみにしてくれている彼女に向けて、しっかりと「デート」であることを忘れないことだろうな。
昨日クローディアさんから色々と話を聞いて、彼女がハーレム計画の主導者であることは知っているのだが、本日はそこを追求することはしない。
むしろ、こんなキラキラした目でこちらを見ている彼女にそこを指摘すると、シュンとなって、幻想で見えた犬耳がぺたんと伏せられて悲しそうな目をしそうな予感がするので、指摘できないと言い換えてもいい。
「とりあえず、外に行きますか」
「ええ!」
ちらりと見た彼女の足元は、ヒールがあって長時間歩くのは不向きな靴なうえに、格好もドレスだ。
この時点で、運動系はNGになり、さらに汚れるようなこともできなくなった。
日本だったら、映画館に行ったり、ドライブしたり、ショッピングモールで買い物したりと色々と選択肢が出るのだけろうけど、この世界では、ましてや開拓地では現状どれもできない。
となれば、何かできることがあるかといえば――一応、俺も準備はしている。
ネルとのことがあってから、デートが終わった後の寝る前に、この世界でもできるデートプランを考えていたのだ。
それが実現したのは今のところアミナのヘアチェンジ&メイクアップだけだ。
なので、俺がエスコートするのはエスメラルダ嬢で2人目ということになる。
「どこに行きますの?」
「建設中の娯楽施設ですね」
向かう先は、この村の中で建設途中の建物だ。
この村にはとにもかくにも娯楽がない。
「娯楽施設・・・・・劇団でもありますの?」
「舞台があっても、劇団員がいませんね~」
「皆でやったら楽しそうではありませんか。リベルタなら演技もできそうですわ」
「そっちの経験はあまりないですねぇ」
娯楽がないということは、ストレスの発散の場が少ないということだ。
娼館の誘致もその一環ではあるが、あちらは開場するのにかなり慎重にならないといけないし、まだ手も付けていない。
「あまりということは、やったことがあるのですね」
「あるにはありますよ。ただ、宴会芸レベルですけどね」
それに、娼館では女性たちが楽しめない。
老若男女問わず、誰もが楽しめる娯楽施設が必要だ。
他の都市や国がどうなっているかは知らない。
だけど、俺が作る町では、皆が楽しめる施設を作る。
幸い、FBOではゲームシステムの高い自由度を活かして、遊園地を作ったりとか娯楽施設を建設しているプレイヤーは数多いた。
中には某夢の国をガチ再現してアカウントが凍結された奴もいたが・・・・・。
さすがに今の俺たちではオリジナルの遊園地は作れない。
だけど、心から楽しめる施設なら作ることができる。
「この建物ですの?」
その施設建設に関しては俺が主導で動いていて、ネルたちもこの施設の概要は知らない。
知っているのは、建設に携わっている作業員とジンクさんだけだ。
内容を先に知っていると出会いの驚きが半減してしまうという理由で、内輪でコツコツと作っているのだ。
即席で作っている建物だから、装飾はほぼなし。ネタバレ防止のためにしっかりと防音だけはしてある。
「舞台ですの」
「ええ、そうです」
そこに用意されたのは、小さな舞台。
建物の大きさ的に、収容人数は二十人も収まればいいかなという程度の小さな劇場。
さっき、エスメラルダ嬢に「劇団」と言われて思わずドキリとしてしまったのは内緒だ。
あまりの勘の良さに苦笑してしまいそうになった。
「エスメラルダさん、手を」
「はい」
この劇場にいる人間は、俺と彼女だけ。
劇団員もいなければ、舞台を説明する座長もいない。
そんな舞台の席に、俺はエスメラルダ嬢の手を引き、一番見やすい席へと案内する。
彼女が座ったのを確認すると、俺は隣に座らず、舞台の方に歩いた。
そして舞台の上に立つと、俺は背筋を伸ばし笑顔を浮かべる。
「さぁさぁ!この開拓村の最初の舞台にお越しいただき、誠にありがとうございます!!」
ここで羞恥心は一気に捨て去る。
堂々と胸を張り、声を張り上げ、この初演を盛り上げていく。
「今宵お見せするのは、摩訶不思議なるゴーレムたちが繰り広げる舞台の一幕。どうぞ心ゆくまでお楽しみください!!」
そしてレヴェランスと呼ばれる、公演の最後にするようなお辞儀を見せて、俺は舞台袖に移動する。
その舞台袖に待機しているのはコマンダーゴーレム。
元々、精霊たちを楽しませるための手段として考案していたが、村の人たちの娯楽として活用できるのではと思い、ここに一機配置していたのだ。
といってもこいつは試験機。闇さんが作ってくれたプロトタイプで、少し使い込まれている感があるが、使う分には問題ない。
指をほぐし、サイドテーブルを兼ねた操作端末を引き出す。
さらに追加装備したマイクを顔の前に持っていき、準備は完了だ。
さてさて、随分と昔に友人たちとやったのだが、どこまで感覚を取り戻せるか。
『これは、昔々の物語――』
ゲーム内の宴会芸でできればいいなと、ふざけ半分、残りは全力で身に着けた一芸だ。
見せる相手はエスメラルダ嬢。
ならばこの演目しかないと、用意していた台本の中から一冊を選択し、ナレーションを開始した。
童話ならこの世界にも似たようなものがある。
だけど、ここはあえてFBO時代に友人と一緒に作り上げたオリジナル作品をチョイスした。
その友人は、毎年夏冬の祭典に参加し、それだけで生計を立てられるほどの実力者。
そんな彼が、ふざけ半分ながら全力で監修した舞台劇だ。
内容は至ってシンプル。
幼馴染同士の、青春ラブコメというやつだ。
タイトルは、そのまま『幼馴染』。
当時の流行りの漫画やアニメを見続けていた友人が「幼馴染が負けすぎだろ!!!」とガチギレして、「幼馴染が勝つストーリーを作ってやる」と息巻いてできた、シンプルなタイトルの作品だ。
この舞台はネタで何度も練習したから、大まかなストーリーやセリフは頭に入っている。
女性受けも良さそうだし、人によっては男でも楽しめる内容だ。
無難といえば無難だが、この世界にはない新鮮な物語になるはずだ。
台本も再現し、舞台装置も用意した。
おもむろに舞台の上に現れる二体のゴーレム。造形は闇さんと雷三姉妹が全力でこだわったものだ。
俺たちが「三頭身ゴーレム」と呼んでいるそれは、戦闘能力こそないが、人間らしい精密な動きとアクションが取れる舞台用ゴーレムだ。
芯の部分にゴーレムユニットを使い、表面にスライム素材を用いることで、体型や顔の造形を自由に変えられる特徴を持っている。
『とある町にいた、一人の少年と一人の少女の物語だ』
声色を安定させ、ゆっくりとしたテンポで物語を紡ぐ。手元では忙しなくコマンダーゴーレムに細かな指示を出し、舞台上のゴーレムを動かし続ける。
おおざっぱな指示だけなら大変ではないが、細かな演技となると本当に忙しい。
今はまだ主役の二体だけの操作で済んでいるから余裕はあるが、この先登場人物が増えれば、操作する数も増えるし、いくつもの役を演じ分けなければならない。
三頭身ゴーレムの機能を使い回し、衣装チェンジやフェイスチェンジまでこなすとなると、脳がフル稼働状態だ。
昔、ふざけ半分で友人たちとやった「一人舞台」という荒業を身に着けておいて本当に良かった。
舞台袖からは、観客席が見えるようになっている。
じっと舞台を見つめるエスメラルダ嬢の表情は真剣そのものだ。
楽しんでもらえるかどうかは、これからの演出に掛かっている。
この物語のベースはざっくりと言えば、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』だ。
悲劇となる物語を、コミカルにして、作者がこだわったすれ違いによる勘違いを解消することによってテンポを良くした。
バッドエンドは決して許さないという意志が見え隠れする作品だ。
それは本家の良さを削ぐことにもなるため、人によって好き嫌いは分かれるだろうが、ハッピーエンドを好む人にはたまらない物語だ。
すれ違いそうなところでギリギリで駆け付けたヒーローによってヒロインは救われ、再会を喜び抱き合い、そして顔を近づけたところで物語は終わる。
同人作品ということもあり、演目としては45分ほどの小品だ。
『少年と少女は、その後いつまでも幸せに暮らしました』
最多の操作シーンではゴーレムを十体いっぺんに操らなければならず、指が攣るかと思った。
しかし、その努力はたった一人の拍手によって報われる。
締めくくりのナレーションと共に演目が終了した瞬間、拍手が鳴り響いた。
「素晴らしいですわ!!こんな舞台、見たことがありません!!」
「楽しんでもらえて何よりです」
スタンディングオベーションと言うには観客が少なすぎるが、それでも彼女がこれほど笑顔になってくれたのなら、頑張った甲斐があったというものだ。
「ええ!本当に素晴らしいですわ!!」
「わぷ!?」
見たことのない物語は、やはり人を惹きつける。
舞台から降りてきた俺に、感極まったエスメラルダ嬢が正面から飛びつくように抱き着いてきた。彼女の柔らかな膨らみに、俺の顔が覆われてしまう。
「最後の方は、もしかしてあの二人が結ばれないのかもと思わせる演出が最高ですわ!!けれど、その後にしっかりと結ばれる!」
興奮しているのが伝わってくる。
感想を聞けて嬉しい反面、どうしても顔に当たる感触ばかりが気になってしまう。
「あ、ごめんなさい。私ったら」
「いえいえ、それだけ楽しんでくれたということですから」
興奮が収まるまで、どれくらいかかっただろうか。
ハッとして恐る恐る離れたエスメラルダ嬢の顔は、真っ赤に染まっていた。
あの柔らかさがなくなるのは少し寂しいが、いつまでもそうしているわけにもいかない。
「それで、次はどうします?少し休憩したら、また別の演目もできますけど」
恥ずかしさをごまかすように、次の話を振ってみる。
「あの、リベルタ」
「はい、何ですか?」
「私とあなた、それなりに長い付き合いになりますわね」
「そうですね」
だが、エスメラルダ嬢はその話には乗らず、少し言いづらそうに言葉を選びながら何かを伝えようとしていた。
何だろうと首を傾げて待っていると。
「こうして抱き着いても、あなたが嫌がらないくらいには仲がよくなったと思いますの」
「ええと」
「嫌でしたの!?」
「嫌じゃないです!はい、むしろ嬉しかったというか」
答えにくい質問に悩んでいると、ショックを受けたような表情をされ、慌てて肯定することになった。彼女が何を目指しているのか掴めない。
「そうですの。嬉しかったのですね」
俺の返事を聞いてはにかむような笑顔を浮かべられると、さらにどう反応していいか分からなくなる。
「・・・・・でしたら、もう私たちは『仲良し』ですわ!!」
「ええと、元々仲良くしていたつもりですが」
「でしたら、もう敬語は使わないでくださいまし!ネルさんやアミナさんのように、砕けた感じで話しかけて欲しいですわ!」
結局何が言いたかったのかと思えば、彼女の要求はそれだった。
「それは……」
「だめ、ですの?」
元々貴族であり、肉体年齢的には年上だったから敬語を使っていた。
その言葉遣いに距離感を感じていたのだろうか。
勇気をもって踏み込んできた彼女の願い。
不安げに涙目になられたら、ほとんどの男は白旗を上げてしまうだろう。
俺もその一人だ。
「・・・・・わかったよ、エスメラルダ。これでいいか?」
「はい!リベルタ!」
「そっちは砕けないんだな」
「元より、私はずっとこの口調ですもの」
ここまで仲良くなって敬語を外しても、無礼ととられることはないだろう。
そう思って口調を崩した俺を見て、パァっと明るい笑顔を浮かべるエスメラルダ。
そんな彼女との距離は今日、確かに縮まった。
「確かにそうだな。それで、この後どうする?さっきも言ったけど、少し休めば別の演目もできるけど」
「私も舞台をやってみたいですわ!」
何かを一緒にやるにも、言葉使いで壁を作ってはいけない。
そう心に決めた一日は、文化祭のようなノリで一緒に演劇の練習をするようにゴーレムを動かして、更けていくのであった。




