12 交流イベント 破壊僧 1
最近の女性陣の俺への接し方が、やけに距離感が近い。
だけど、そんなことをしていたら、普通なら距離感を詰めてきた女性同士の仲が険悪になったり、嫌な雰囲気が流れたりするのではないだろうか?
なのに、ネルもアミナもイングリットも仲違いするような雰囲気でもなく、仲良く普通に会話している。
それだけを見るならお互いに表情を取り繕っているようにも見えなくはないが。
「アミナの髪型可愛いわね!」
「いいでしょう!」
「私もやってもらおうかしら」
「やってもらいなよ!!」
ネルとアミナは普通に髪形のことに触れている。
うーん、親友の二人だから大丈夫ということか?
傍から見て、悪い雰囲気にはなっていないことに一安心しつつも、その二人のもとにイングリットが通りかかるとちょっと緊張してしまう。
「あ!イングリットさん!昨日はどうだった?」
アミナさん、普通にその話題に触れるのね。
「はい、ご協力ありがとうございました。勇気をだしてよかったと思っております」
「よかったわね」
「はい、ネル様」
・・・・・普通に和気あいあいとこの三日間について女性陣で話し合ってるなぁ。
修羅場が欲しいと思っているわけではないのだが、それでも良好に関係が築けているのもなんだか怖い。
「なるほど、そういう理由で私に会いに来たのですか」
「まことに恐縮でありますが、相談に乗ってください」
その恐怖感を素直に相談できる相手、クローディアの元に足を運んだ。
元々今日はクローディアのところに行く予定だった。
しかし、前日までの三人と違って先に相談事を持ち込んだことが申し訳ないので、先に俺のお手製の焼菓子を渡しておいている。
サクサクとクッキーを食べているクローディアは、俺がこういう相談を持ち込んでくることがわかっていたのか、一緒に出したお茶を一口飲んでからおもむろに答えてくれた。
「簡単なことです。身内で争う理由がないのに加えて、今後増えるだろう外部からの女性に対応するために協力した方が自分たちのためになると理解しているからですね」
「????????」
その答えを俺は一瞬理解できなかった。
いや、言葉の意味はわかるのだが、本当に合っているか確信が持てなかった。
「あなたを中心とした身内の女性コミュニティ、いわばハーレムを作った方が今後の生活に都合が良いと、私たちの間ですでに話し合いが済んでいるのです」
「・・・・・マジですか?」
しかし、核心を突く形で俺に確信をクローディアは与えてくれた。
「むしろ、貴方がそうならないと思っていたことに私は驚いています」
「いや、だって、ええ?」
ハーレムなんて幻想だ。
複数の女性に好意をばらまき、複数の女性と交際する男なんて女性から見たら嫌悪すべきクズの象徴なのではないかと、元日本人の俺は思ってしまう。
自分の方だけを見てくれない男なんて、女性からしたら冷める対象なのではないのか?
まぁ、ハーレムが現実にないかと言われれば、世界を見渡せばあると答えることはできる。
「いいですか、リベルタ。あなたが彼女たちに与えたものは計り知れない価値のある物だとまず理解しなさい。そしてあなたは出会ってから真摯に彼女たちと向き合っている。ネルさんとアミナさんには夢を与え、イングリットさんの心に寄り添い、やれることは全部やっています」
しかし、それが俺に該当するかと誰が思うか。
呆れたとため息を吐くクローディアの言葉をなんとなく他人事のように聞きつつ現状把握に努める。
「始めは、ネルさんとアミナさんを引き連れて冒険をしていたからてっきりそのような意図があってパーティーを組んでいると思っていましたが、あなたにはそのような雰囲気はなさそうでしたし、むしろあなたはその手のことを避けているのかと言わんばかりに冒険のことばかりに集中していました」
はっきりと言わないと理解しないだろうというクローディアの言外の叱責によって、思わず背筋を伸ばしてしまう。
「かといって、彼女たちをただの戦力としてだけ見ているわけではないんですよね。交流はしっかりとしていましたし、やりたいことやりたくないことを把握して、プライベートも大切にしている。そしてしっかりと女性として喜びそうなことを用意している・・・・・これを無自覚にやっている」
どこのスケコマシ?と思うようなクローディアの語る人物像の対象は俺だ。
じっと前を見つめ、その視線の先に座っているのは俺だ。
「・・・・・」
「いま、大したことをしたつもりはないって思いましたね」
「・・・・・思いました」
自分の行動を振り返っても、俺はできることしかやっていない。
そして、仲間として一緒にいてくれるならと、エンジョイするために知恵を貸したに過ぎない。
「ある意味で、女性に対して無欲だった。それゆえにこの結果がついて来たんでしょうね」
その態度に対してわかっています、あなたはそういう人物ですと、諦めのようなため息を吐いてティーカップに手を伸ばしたクローディアは、ひとまずお茶を飲んで落ち着くようだ。
「でも、なんでいきなり積極的に?前までこんなことありませんでしたよね」
「そのきっかけもあなたですよ」
「?????」
一息入れて落ち着いたクローディアによって、ネルたちに好意を向けられた理由はわかった。
思い返してみれば、彼女たちの人生を良い方向に変えれば好意の一つや二つ抱くかと納得し、ましてや多感な時期にそれをやれば慕われてもおかしくはないかと納得できた。
だが、もし仮にそうだとしても、それだったらもっと前から好意を表に出してきてもおかしくはないのでは?
そう思って、その疑問をぶつけてみれば「何を言っているんだ」とクローディアは半眼になった。
「先日、私に娼婦のことに関して相談に来たではないですか」
「はい、行きましたね。この開拓村はいずれ街になって大勢の人が移民してくると思いますんで、その手のことは管理した方がいいかなって」
「その判断は間違っていませんから、私も真剣に相談に乗りましたしあなたの考えに賛同しました。ですが、考えてもみて下さい」
「はい」
「惚れている異性が、恋人がおらず、そして成長するにつれてその手の誘惑にも興味を持つようになります」
「はい」
「そして、知らぬうちに知らぬ異性とそういう関係になったと考えて落ち着けますか?」
「・・・・・落ち着けませんね」
「そういうことです」
うん、前にクローディアに娼婦に関して相談してたよ。
そしてその件に関して、この開拓村にそういう女性が来ることと管理するということに関して、女性陣との仲介をお願いしたよ。
そりゃネルたちの耳にも入るよね。
むしろ、そういう話を進めている俺をよく軽蔑しなかったよ。
「取られる前に囲んでしまえと、彼女たちは考えたようです」
「なるほど?」
「理解できているようには見えませんね」
「いや、途中までは理解できました。誰かに取られたくない、だから積極的になろう。ここまではわかるんです」
「はい、理解してもらって何よりです」
「でもなんでハーレムに?」
さて、話は戻るが、話の展開的に俺がそういう商売をしている女性を誘致しようと考えていることに対して焦りを抱いた。
なので思いを伝えてきた。ここまでは理解できた。
「その提案はエスメラルダさんですね」
「エスメラルダさんが?」
だからこそ、なぜにハーレムを女性側が目指す?
そこって男の発想じゃないのか?
そう思うのは俺だけじゃないはず。
だが、発案者はエスメラルダ嬢だった。
「彼女は貴族ゆえにそういう発想が生まれてくるのでしょうね。優秀な血筋を残すために複数の女性を囲う。まぁ、私が知る貴族の大半の家庭では女性同士の関係がだいぶ荒れていますが」
「だめじゃないですか」
「中には上手くやっている家庭もありますよ。貴族の大半は当主が色々と女性を連れてきて、本妻をないがしろにして好き勝手にやるから荒れます。ですが、貴方の場合は女性が率先して囲うようにしていますので、そういう問題にはならないと私は考えます」
貴族らしい発想といえばそれまでだが、ある意味でネルたちと上手くやろうという考えなのだろうか。
クローディアがこの話をしているということは、反対しているというわけでもなさそう。
知らぬは俺だけ、欠点を強いてあげるのなら俺の意志が介在しないことなのだけど、少なからず俺は彼女たちに好意を抱いている自覚はある。
故に、その欠点も無きに等しい。
「女性同士が納得しているから、問題ない。おとぎ話のような話ですね」
「珍しいですけど、ないわけじゃないですし、極端に珍しいというわけでもないですよ。ただ、相応の苦労と覚悟はいりますけど」
あとは俺が受け入れるかどうかという話と、今後もしっかりと好意を向け続ける覚悟が必要というわけだ。
「司祭としての教えですか?」
「愛を司る女神パッフル様は、自由恋愛主義なので色々な愛の形を認めてますよ。一夫多妻の逆の多夫一妻というのもありです。ただ、不倫に関しては厳罰に処すようです。貴族の結婚の際にはパッフル様に宣誓して愛を誓いあいますので、不倫にならないようにしっかりと囲ってから手を出すようです」
「となると、クローディアさんとしては俺たちのパーティーがハーレムになるということは有りということですか」
「そう解釈してくださっていいですね」
その点に関しては、俺が気合を入れればいいだけのことと割り切りつつ、俺も乾き始めた喉を潤すためにお茶を一口。
ほろ苦いお茶の味は俺の思考を冷静にさせてくれる。
そこでふと一つの疑問を抱く。
「・・・・・その発想のパーティー構成だと、傍から見ればクローディアさんも俺に好意があってハーレムの一員だと思われるのでは?」
「ゴホッ!?」
そしてその疑問を思わず口にしてしまったら、クローディアは咽てしまった。
気管にお茶が入ってしまい、口元を覆って咳払い。
慌てているクローディアの姿など滅多にないので、中々珍しい光景だ。
「なんで、そんな発想になるのですか。私とあなたは親と子では済まないほどの年の差があるのですよ?普通に見れば、そんなことを考える輩はいません!」
「いや、年齢差はそうですけど、見た目は十分にクローディアさんは若いじゃないですか。見た目的には大人の女性のクローディアさんが子供の俺に恋心を抱いているという光景になりますけど、俺が小人族だと解釈されるとなくはない光景ってことになりません?」
「それは、そうですけど!!見た目ならこんな傷だらけの女に興味を持つ男性など」
「え、俺、普通に素敵だと思いますし、ありですけど」
「っ!!あなたという人は!!」
クローディアは年齢と外見のことを気にしているようだけど、彼女の見た目はこの世界の女性からしたら歳がいっているように見えるかもしれないが、日本人の価値観を持っている俺からすれば十二分に異性として惹かれる年齢だ。
レベルがこの世界の人間の中でも突出して上がり、湧き出す活力が肉体の老いを遠ざけ若さを取り戻し、さらにはこの世界の魔法の化粧品を使って肌の手入れをしている彼女は若く見積もれば二十代後半、普通に見ても三十代半ばには届かないような見た目だ。
体中に走る戦いの傷跡の所為で嫌悪感を抱く人もいるかもしれないが、俺はそういうキャラが好きだった。
そこに男女差はなく、カッコいいと思えたんだ。
まぁ、こういう傷って当人が気にするかしないかという話だから、俺が気にしなくても当人がダメだというパターンもあるからなぁ。
「そうでした。あなたはそういう人でした!」
「その言い方、あんまりいい意味で使ってませんよね」
「変える必要がないという意味では、良い意味ですよ!!」
「なんか、すみません」
そういうパターンで怒らせてしまったかと思って謝ったが、彼女は気にしていないと言って、その後も相談という名の雑談に興じるのであった。




