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お友だちになってくれる?



 出発してから半日、太陽が真上にある頃、休憩しようと旅の一行は止まった。

 

 わたしもみんなと一緒に歩きたかったが、この中でも一番幼いようで、どうしてももたついてしまう。

 テオがおぶってくれたり、他の人たちも代わる代わるわたしも一緒に進めるよう手伝ってくれた。


 テオと一緒にポリッジを食べていると、アメリアが隣に座った。


「テオ、ここの先に川があるわ。あなた、汚れた服を洗いたいって言ってたでしょ。ミアは、私が見ているから洗っていらっしゃい」


 テオは、一瞬、驚いた顔をしたが、アメリアに説得されると、すぐに戻るから、と教えられた川の方へ走って行った。


 どこにあんな力があるのか。

 感心していると、隣に座ったアメリアがそっとわたしに囁いた。


「ミア、驚かないで聞いてね」


 その言葉を聞いて、わたしは全身が硬直した。


 まさか。


「あなたはここではないところから、来たのね」


 わたしは思わず、お椀を落としそうになった。

 アメリアが空になったお椀をそっと取った。


「大丈夫よ。大丈夫だから、聞いて」


 と言った。


「驚かせてごめんね。私は他の人たちと違うから。見えてしまうの。あなたは、私と同じくらいの年だったのじゃない? 女の人が見えるわ。けれど、その姿はほとんど消えかけている」


 わたしはあまりのことで、足ががくがくと震えた。

 ドレンテだったわたしが見えている。そして、その姿が消えかけている。

 ううん。それよりも、追い出されるのだろうか。ここを追い出されたら、生きていけない。


「たちゅけて……。おいだちゃないで」


 懇願すると、アメリアはハッと意表を突かれた顔をした。


「違うのよ。そういう意味じゃないのよ」


 アメリアは、わたしを抱き寄せて膝に乗せた。


「あなたは大事な人よ。決して見放したりしない。信じて」


 わたしは両手をぎゅっと握り合わせた。手はまだ震えている。


「ミア。私たちは今、生きているのが奇跡という環境にいる。だから、今すぐあなたにそれを伝える必要があったの」


 アメリアは苦しそうに言った。


「いつ、誰に襲われてもおかしくない。それはゴーレかも知れないし、見知らぬ人間かも知れない。私たちは今しか生きられない。それくらい過酷な世界にあなたはいるのよ」


 今しか生きられない。過酷な世界。


「だから、私を信じて。そうだわ、ミア。まずは、私とお友だちになってくれる?」

「ともたち?」

「ええ。私はあなたのような人を待っていたの」


 どういう事だろう。


「私は救世主である証を持って生まれた」

「あかし?」

「ええ」


 そう言って、アメリアはイタズラっぽく笑った。


「テオが戻ってきたわ。今度、見せてあげるね」

「アメリア姫っ」


 走って戻ってきたテオの手には、わたしが着ていたワンピースがあった。

 きれいに洗ってくれている。


「テオ、私たちお友だちになったのよ」

「え?」


 テオがキョトンとした。


「アメリア姫と友だち?」

「ええ」

 

 アメリアが私にウインクして、笑った。

 アメリアがわたしの事をわかってくれている。

 それだけで、ここにいていいのだという気持ちになった。


「ともたち。あたち、アメリアのともたちになったの」


 テオに伝えようとしたが、うまく話せなかった。

 もどかしさもあったけど、あんぐりしているテオを見て思わず笑ってしまった。


「ありあと。テオ。おようふくあらってくれて、ありあとう」

 

 そう言うと、テオが顔を赤くしてうん、と言った。


「アメリア姫、ありがとう」


 とポツリと言った。



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