只今モヤモヤ中!
その日はその雰囲気のままそこで解散と相成った。
いくつか会長に聞きたいこともあったのだが、優が去ったあと、会長も即座に帰宅の準備をしたので聞くに聞けなかった。
そしてその翌日である今日、俺は一人憂鬱な気持ちで登校していた。
優とはあれ以来、連絡は取っていない。
こっちから連絡することも考えはしたが、最後のあの言葉が引っかかってどうにもする事ができなかった。
だがやはり、同じクラスである以上いつまでも顔を合わせないというのは不可能で、その事実が俺の足を重くさせていた。
ガラガラガラといつもと変わらぬようにドアを開け教室に入る。
まだ登校には早い時間帯なので教室にいる人数はまばらだ。だいたいの人は友人と会話したり、スマホをいじったりし暇を潰している。
だが、そんな中において優は勉強という珍しい部類の暇つぶし(?)をしており、俺がそれを見つけるのは案外簡単だった。
「おはよ、優」
「ああ、透か。おはよう」
「っっ」
いつも通りに見える優の挨拶、だが優は明らかに俺のことを避けていた。
しかも、気まずくて避けているのではない。心を許さないよう、壁を作るようにして避けているのだ。
俺はそれがわかってしまう自分の付き合いの長さを後悔した。
・・・もしかしなくても原因は昨日のことだろう。
何が優の怒りに触れたのかは分からない(というかそもそも優に避けられたことが今まで一回もない)が、避けられている以上むやみにこちらから近づくわけにもいかない。しかし、ずっとこの関係のままというのも嫌だ。
俺はそのままモヤモヤした気持ちを抱えたまま、朝の時間を終えた。
それからいくばか経ち、時間は5時間目の休み時間、俺が心のなかにあるもやもやを考えないよう、机に突っ伏し昼寝を決行していると不意に肩をトンッと押された。
「透くーん。起きてるー?」
「・・・なんだ、お前か。鈴音。」
「女の子に対して、お前かって酷くない?私これでも可愛い方だと思うんだけどなあ。」
俺が振り返るとそこには短い髪を肩にゆったりと流した俺の幼馴染がいた。
顔は幼馴染の色眼鏡をかけなくても十分可愛らしく、その明るい性格も相まって男女ともに人気がある。噂では校舎裏に呼び出されたことも何回かあるとかないとか。
まあそんなでも俺にとってはただの幼馴染、俺はいつもどおりの口調で軽口を返す。
「てかなんでわざわざ俺を起こしたんだよ。何か用でもあるのか?」
俺は少しジトッとした目で鈴音を見つめる。昼寝中に起こされたのでこのくらいは許されるだろう。
すると俺の幼馴染は少しムスッとした顔でこちらを見てきた。
「どうもこうもないよ。一体優と何があったの?」
「・・・そんなにわかりやすかったか?」
俺と優はいつも一緒にいるというわけではない。だからまさか気づかれないだろうと思っていたが、もしかして顔にでも出ていたのだろうか?
すると鈴音は首を振って否定を示す。
「いや、正直言って私以外にはわからないと思うよ。優はあんまそういうの表に出さないし、透はそもそも人付き合いがよくないから・・・。」
「悪かったな、根暗で。」
「そういうことじゃないって・・・もう、根はいいのにそんなんじゃモテないよ。」
「あいにく俺にはそんな予定はないんだ。」
「そう・・・、なら良し。」
「何がいいんだよ。」
「ふふ、ナイショ」
・・・はあ、鈴音のこういうところは本当に慣れない。
俺は内心ため息し、頭をかく。
「で、結局なにがあったの?」
「・・・なんにも無いよ。」
「うそ。目がそれてる。」
・・・女子って怖い。
これからは気をつけよう。
「本当になにもないんだってば。少なくとも俺は何が優の癇に障ったのかわからない。」
「ふーん。一応信じるよ。でもずっとこのままは私が困るから早く仲直りしてよね。」
「はいはい。」
鈴音はほっぺを膨らまし、ムーっとした表情を作る。
「とりあえず、こっちは眠いんだ。要件が終わったなら眠らせてくれ。」
「はあ、ほんとそういうとこだよ。」
「何が?」
「知ーらないっ」
「はぁ?」
鈴音はそのまま何も言わずに立ち去ってしまう。
・・・とりあえず寝るか。
俺はまた机に突っ伏した。
「・・・はあ」
あれから残りの授業を終え、放課後。俺は重たい足を引きずって生徒会室へと歩みを進めていた。
昨日のこともあって生徒会室に入るのはやや気が引ける。
とはいえ行かない訳にもいかないので、俺は観念したようにゆっくりと生徒会室の扉を開ける。
「おおやっと来たか。」
こちらに真っ先に気づいて声をかけたのは文庫本を読みながらくつろいでいる生徒会長。
それから海星先輩も気づいたのか、やっほーと手を振ってくれる。
俺はそれに短い挨拶で返すと、そこら辺にある手頃な椅子に座った。
「ん?優は来ていないんですか?」
珍しいな、優が俺より遅れるなんて。
「ああ、ついさっき今日はもう帰るとだけ言って去っていったぞ。」
「え?」
「まあ今日なにかあるわけではないしな。今は邂逅以外の仕事もないし、あいつも少し疲れているんだろう・・・ってお前何をしてーー」
会長の声がどんどん遠ざかっていく。気づいたら俺は走り出していた。
バタンと生徒会室の扉が閉まり、会長の声が完全にシャットアウトされる。
そのまま俺はいつもの帰り道を必死に走っていく。
五分ほど走ると、優が一人で帰っているのが見えた。
「はぁ、はぁ・・・やっと見つけた。」
「と、透!?」
優もこっちに気づいたのか、驚いて振り返っている。
「一体何のようだよ。」
優は怪訝そうに眉を寄せ、こちらを見ている。
まあ、正直今は俺と会いたくはなかっただろうな。
だが、俺はどうしても優に尋ねないといけない事がある。
「いや何、お前に質問があったんだ」
「何だよ」
「優、お前なんで今日生徒会を休んだんだよ」
「っっ」
「お前が今日の朝からずっと俺を避けていたのは知っている。だが、俺の知っている優はたった一回のことで自分の職場から離れたりしないはずだ。」
「うるさい・・・」
「なにか昔にあったのか?」
「うるさい・・・」
「もしそうだったら相談にのるぞ?」
「うるさいって言ってるだろっっ」
「!?」
「それを透が知って何になる?いちいち僕の機嫌を損ねないでくれっ」
「あ、ああゴメンな」
「・・・こっちも言い過ぎた。だけど、もうそのことには触れないでくれ。・・・透のことを嫌いにはなりたくない。」
「・・・わかった。」
「ならいいんだ。じゃ、さようなら。」
「ああ」
優はそう言うとすぐにまた前を向いて去っていった。
・・・正直、俺も今思えば図々しかったとはいえ、あんなにも優が起こるとは思わなかった。
おそらく、俺が生徒会に関わる前にも優になにかあったのだろう。
だが俺はそこで考えることをやめた。
優の言う通り、このことに俺が介入したとしてもなにかできるとは限らない。むしろ、優の機嫌を損ねてマイナスになる可能性のほうが高いだろう。
それにこれは優の問題なのだ。
俺はそう自分に言い聞かせて、来た道を戻っていった。
俺は、後に俺がこの決断を後悔することになるとはまだ夢にも思わなかった。
明日から少し長野に旅行に行ってきます。明日からの数日間は投稿できないので、どうぞよろしくお願いします。