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 今から始める、生徒会革命術!   作者: 放課後デイズ
4/6

只今掃除中!

「ただいまです」

「ああ、おかえり透」

俺が生徒会室に帰ると、優も返事を返す。

ふう、あとこれを三往復か。正直かなりきついな。

中途半端に残して明日に持ち込むのも良くないし、正直なところできれば今日だけでごみ袋を出し終わりたい。

「よいしょっと」

俺はまたゴミ袋を持ってゴミ捨て場に向かう。

二往復目が終わって戻ってくると、海星先輩がオレンジジュースを俺に差し出してきた。

「はい、お疲れ様」



「え、あ、ありがとうございます。すいません払わせってしまって。いくらしましたか?」

俺がそういって財布を取り出すと、海星先輩が焦ったように胸の前で手をぶんぶん振った。かわいい。

「いやいいっていいって。こっちこそ掃除を任せちゃってごめんね。これはその御礼。だから遠慮しないで?」

「え、でも・・・」

俺がそこまで言うと、海星先輩は俺の顔をピッと指で指す。

「いーい?こういうのは遠慮せず受け取るのが後輩の役目だよ?ほら、先輩を立てると思って、ね?」

「・・・わかりました、ありがたく受け取ります」

「それでよし、よくできました〜」

そういって海星先輩は俺の頭をよしよしと撫でる。

「あの、先輩?俺も一応高一なのでそれは・・・」

「えー」

すると海星先輩は明らかにしょぼんとする。

ゔ、良心の呵責がっ。

「・・・いえ、なんでもないです」

そう、桐谷は負けたのだ。言い訳はしない。笑うなら笑えっ。

俺は目を手で抑え、歯をくいしばり、羞恥心に必死に堪えた。

ふと周りの反応が気になり、俺は手の隙間から他のひとを探してみる。

すると、優がこっちに目を背けて笑いをこらえていた。

よし、あとで優は締めよう。

俺がそう決意を固めると、会長が不意に口を開いた。

「おい、琴美。そのくらいにしてやれ。そんなんだから他の生徒にも誤解を生むんだぞ」

「え〜、あとちょっとだけ〜」

「だめだ」

「けち〜」

「けちは関係ないだろ」

「じゃあブス」

「・・・喧嘩を売ってるのか?」

「うわーん、達也がいじめる〜」



「はあ、なんでそんなことになるんだ・・・」

・・・会長、大変そうだな。

久しぶりに他人に同情したかもしれない。

そして俺はそのまま、ゴミの処理を忘れて明日に持ち込んでしまった。

はあ、なんでこんなことに・・・。




生徒会に来るようになって5日目、優がデータ整理が終わったのか、最近生徒会室の外で何かをすることが多くなっていた。

「優って今何をやっているんだ?」

俺はちょうど生徒会室に帰ってきた優に質問してみる。

優は俺が質問した理由に心当たりがあったのか、ああと言って続ける。

「そろそろ仕事が先生から渡されるはずの頃なんだけど、それまでは本当に仕事がないからね。それまで目安箱の提出ボックスの確認とか用紙の補充、あとは生徒会機関誌のネタになりそうなことの収集をしてるんだよ」

「生徒会機関誌?」

目安箱は確か、生徒の意見を収集するために設置された箱のはずだが、生徒会機関誌というものには全く覚えがない。

この学校にそんなものあったか?

「あー、『誠実』っていったほうがわかりやすいかな?」

「あっそれのことか!」

『誠実』ならば俺も知っている。確か二ヶ月に一回ほどの頻度で発行されているこの学校内限定の新聞みたいなものだったはずだ。その内容は様々で、新興部活の部員の勧誘から学校の直近のイベントについて語っている号もあった。

確かに言われてみれば生徒会関連の内容が多かった気もしなくもない。

「すまん、正直今まであんま意識してこなかったからわからなかった」

「いやいいよ、そもそも『誠実』っていってもわからない人もいるし、そういう意味では透はまだいいほうだよ」

「というかあれって生徒会が作ってたんだな」

「そうだよ、っていっても結構作るのに時間がかかるけどね」

そうなのか、口には出さないが少し意外だ。

『誠実』はいつも良くて裏表の二ページ、時々表だけの一ページって感じだったからそんなに時間がかかるもののイメージがなかったの



だ。

少し驚いている俺に気づいたのか、優は苦笑して口を開いた。

「僕が最初にお試しでつくってみたら一ヶ月はかかったよ」

「まじかよ」

優は情報の授業でも他よりスラスラと課題をこなしていたから、そんな優が一ヶ月かかるとなると本当に大変なのだろう。

「そもそも使っているアプリが違うしね。」

「へ〜」

「Publisherってわかる?」

「インや全く?」

即答した俺に、まあそりゃそうだよねと苦笑した優が続ける。

「僕も生徒会に入るまでその存在すら知らなかったし、多分それが当たり前の反応だよ。なんでもOfficial(PowerPoint・Word・Excelのこと)とはまた別の、発行物を作る用のアプリらしいからね。」

「そんなのがあるんだな」

「うん、Wordと似てるんだけど細かいところが全くと言っていいほど違うから、最初は結構戸惑ったよ」

「ちなみに、今の『誠実』はお前がつくってるのか?」

俺が興味本位でそう聞くと、優はいやいや、と片手を振る。

「僕じゃあ先輩にクオリティに圧倒的に負けるから、僕はまだ一度も正式なものはつくってないよ」

「え、じゃあさっき言ってたのは何なんだ?」

「ああ、あれは僕が勝手に先輩方のまねごとをしてみたってだけ。ちょうどその頃もひましてたし、来年度の事を考えると、ある程度はPublisherに慣れておかないとなって思って」

「優は偉いな」

俺は優に惜しみない賞賛を送る。こんなことは誰彼とできることではない。

だが、優にとってはそうでもないのか、歯切れの悪そうな顔をする。

「そうでもないよ。結局は結果が大事なんだから」

「そうか?それでも、その結果につながることを自分で見つけてするってのは誰にでもできることじゃないぞ。だから誇ってもいいと俺は思うけどな」

「そう、なのかな・・・」

「おう、俺が言うんだから間違いない」



そこまで言うと、優は参ったなと言って苦笑する。

「透には勝てる気がしないや」

「いやいや、何いってんだ?俺ごときが優に勝てるわけないじゃないか」

「うーん、僕はそう思わないけどね」

「はあ?」

「さて、じゃあ他にすることもあるし、ちょっと行ってくるね」

「お、じゃあ俺に手伝えることはあるか?」

「いいよ、それより透は今掃除中でしょ。というかそうでなくても、これは僕が勝手に動いてることだから、行き違いを避けるためにもどっちかといえば単独のほうが都合がいいんだよ。だから大丈夫。」

「そうか、まあ気を張りすぎないようにな」

「わかってるって、心配性だなあ。じゃあ、行ってくるね」

「おう」

閉じられる扉。

静かになった生徒会室で俺はうっしと腕まくりをする。

よーし、俺も掃除を頑張るか。




それからまた数日後、俺は今、素晴らしい達成感に身を包まれていた。

「ついに、終わった・・・。」

そう、俺は今この瞬間、あの魔窟とも思えた汚部屋を掃除し終えたのだ。

「おー、お疲れ様ー。あんなに汚かったのにすごいね。」

勉強が一段落ついたのか、海星先輩がこちらによってくる。

「せっかく来てもらっているんだから本当はいっぱい手伝いたかったんだけど・・・。」

「いえいえ、皆さん今は忙しいんですから任せてください。」

会長もこちらの様子に気づいたのか、椅子に座ったまま体だけをこちらに向けてきた。

「いや、それでも申し訳ない。・・・そうだな、今度都合がついたらなにか奢ろう。」

「ええっ、いいんですか!」



なんと、会長が何やら魅力的な提案をしてきた。

乗るしかない、このビックウェーブに!

「ああ、と言ってもあとそろそろしたら生徒会指導部の方から仕事が回ってくる時期だし、その前には中間テストもある。都合がつくのが一体いつになるのかは分からないけどな。」

「それでも嬉しいです。ありがとうございます!」

「ああ。ん、そうだ。テスト後に来るはずの仕事の件が終わったら少しの間は暇ができるし、どうせなら小鳥遊達も誘ってみんなでサイゼにでも行くか。」

「あ、いいね。じゃあ会長、皆の分の会計よろしく〜。」

「琴美は自腹だぞ。」

「えーケチー」

「君は散財するタイプでもないし、お金には困ってないだろう?そのくらい自分でなんとかしてくれ。」

「女子は何かと入り用なんですー。」

「わかったわかった。まあ、それとこれとは別だがな。」

「ブー」

「っとそうだ、小鳥遊もそれでいいか?」

会長はちょうど出ていこうとしていた優の方を向くと質問を投げかける。

「ええ、どうぞご自由に。」

優はそのままドアを開け、生徒会室から出ていった。

ん?優にしてはやけに塩対応だな。

「・・・わかった。じゃあ春休み前後は何もすることはないだろうし、そのあたりに行くか」

「オッケー!」

・・・まあ流石に気にしすぎか。

「そうですね。楽しみにしています。」

それから少しして優が帰ってくると、ちょうどいい時間だったので、俺たちはそこで解散と相成った。

皆さんいかがお過ごしでしょうか?私は年末年始の予定がぎっしりタイプなので、これからの投稿とか諸々がとても危ういです。宿題が終わっていない人は今のうちに危機感を持っておいてもいいかもしれません。皆さんがんばりましょう!

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