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ルナティック メモリーズ  作者: うたかた
忌憶の章
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自殺

私は母子家庭だった。

父親のことは覚えていない。

気がついたら母親とともに義理の祖父と母方の祖母のところに引き取られていた。

ただ、その環境はとても良いとは言い難い状態だ。

周囲の人間はことあるごとに言う。

「血の繋がりのない子供を引き取るなんて可愛そうね」

義理の祖父にそう言ってさもあわれそうに。

私にはさもやっかい者を見るような目を向けて。

「自分の孫でもないのに世話になって厚かましいと思わないのか?」

祖母は醜い顔を私にむける。

私はなにも言い返す言葉もない。

彼にとっては私は寄生虫と同じだろう。

百害あって一利なし。

「あんたは本来なら中絶するはずだったのに、あのバカが妊娠してるのに気づかなかったばっかりに」

聞いた話ではあったが、母親は何故か妊婦のような腹をしていたそうだ。

理由は知らない。

母親が妊娠してるのに気づいたのは中絶するのには間に合わない時期だったと。

私は生まれて来ないほうが誰にとっても幸せだったことだろう。

「今からでもいいから死ねばいいのに」

祖母は忌々しげにつぶやく。

「おっと、そうだ。いいことを思いついた」

祖母は柱に縄をくくりつける。

その先は輪っかになっていて首をつるにはちょうどよさそうだ。

「さあ、できた。死ね」

祖母はそれを指さして嗤う。

私は躊躇いなく、輪っかをつかんで首を吊ろうとした。

「本当にやるやつがあるかい。死ぬんならよそでやんな」

ちょっと焦った様子で私を引っ叩いた。

死ねというから、死のうとしたのに。

「本当に気味の悪い。死ぬときには保険に入ってからやるんだよ。なんの価値もないあんたに金なんかかけたくないけど」

私を見下す祖母は、私の死を望みつつ、嘆息した。

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