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5話 ここはどこ、わたしは誰

ふと目が覚めたら、まるで雑誌のモデルさんのような白人の若者がわたしを見ていた。


わたしはベッドに寝ていて、彼はスツールに座ってわたしを見ている。


黒髪に深い青の瞳、日に焼けた肌。鼻筋がすっと通って精悍な顔立ち。肩くらいまでの髪を後ろで一つに結わえて、着古したシャツに作業着のようなズボンをはいている。めくりあげた袖から出ている腕は太くて鍛えられているのがわかる。襟のボタンをかなり外していて、がっしりとした胸筋が覗いている。


……こんな子、アメリカでの知り合いにもいなかったよね……?いたら絶対覚えてる。


お互い言葉もなく見つめ合うこと、多分数分。


はたと我に返って部屋を見回す。


あれ、わたし……?


ログハウス…?小屋と言っていいような木造の建物の中のようだ。寝ていたのはとても固いベッドで、毛布もごわごわした粗末なものだ。身体を起こして青年に尋ねた。


「あの、すみません?ここ、どこですか?わたし、どうしたんでしょうか?」


尋ねるけれど、返事がない。外人さん日本語通じない?


「Where am I ? What happened to me ?」


わたしの問いかけに、青年ははっとして答えた。


「ああ…ここは俺の小屋だ。泉で倒れている君を見つけて、連れてきた。」

「あ、良かった。言葉が通じるんですね。えっと、ご面倒をおかけいたしました。あの、泉って泉市ですか?」

「いずみし…?暗黒の森の泉だ。」

「あんこく…の森?テーマパークのアトラクション?あなたはそこのレンジャーさん?ここは森のレンジャーさんのログハウス?」

「れんじゃー…?ろぐはうす?」


…泉市は知ってるけど泉市に森があるテーマパークなんてあるの?いや、わたしテーマパークとか行ってないし。?だって、あれ?わたし家にいたんじゃ。


混乱しながら毛布をめくりかけて下半身の違和感に気づく。


…えっ、パンツはいてない?!!!


「きゃあああ!!いや~~!!」


叫びながら毛布を頭からかぶった。


「あっ、いや!!すまん!あっ、いや、俺、何も!!」


ガターン!という派手な音とともに、青年が部屋を飛び出していく気配があった。



◇◇◇



青年が慌てて部屋から飛び出したあと。


パニックから少し戻ってきた。


…っていうか。

頭から被った毛布の中で自分を見てみると、着ているものは男物のシャツだけどまるで寝間着みたいに膝まである。下着は着ていないけど、違和感とかはない。痛いところもないし怪我もしていない。


テーマパークの森で遭難?して、レンジャーさんに助けてもらって詰所のログハウスで寝かせてもらっていた…?隣市の泉市に森があるような公園があったかしら…?


確か、今朝はいつものように、にゃんこ達のトイレ砂を取り換えてゴミを捨てに行って、それから朝ごはんを食べて…


それで…?出かけてないよね。


…おかしい。


ゆっくりと毛布から顔を出して、青年がいないのを確かめる。


小さな手持ちランプ一つの部屋は薄暗い。ベッドから下りて、ランプの近くへ行って自分の身体を改めて見てみる。


髪が白い。かつら……?引っ張ってみれば痛い。自分の毛だ。かつらじゃない。それにすごく長くなってる。背中の真ん中位だったのに。


…もしかしてすごい事故に巻き込まれたとか?その事故の後遺症で白くなったとか?こんなに長くなるまで意識が無かったとすると1年以上昏睡してたとか…?


記憶喪失…?


嫌な汗が出てくる。


鏡がないか見回すけど、ない。質素なお部屋で、ベッドの他には青年が座っていたスツールと、チェストが一つ。窓もガラスではなく板張りのものだ。サッシではなくて、つっかい棒で開けておくもの。本当に小屋と言う感じ。このベッドも手作りみたいだしマットレスじゃない。


手に違和感があるのに気づく。すべすべの、指が細くて短い、可愛らしい手。記憶にある自分の手じゃない。後遺症で白髪になったけど、手は若返った?そんなばかな。顔をペタペタしてみるけど、よくわからない。でも違和感がある。


シャツの中をのぞき込んで絶句する。


…胸が…ない。


いやいや、これよりあったし。ボン!じゃなかったけど、それでもこれよりはあった。昏睡してる間に痩せてしぼんだ?ていうか、へこんだ?身体に丸みがない。薄暗いから良くわからないけど、肌の色がすごく白い。日焼けしてない部分は白かったけど、この白さじゃない。


ナニコレ!?



お読みいただきありがとうございました。

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