3話 眠り続ける少女
夜になっても少女は目を覚まさない。
魔物の毒にやられたようでもない。熱もないようだ。呼吸も普通だ。
魔力の枯渇か?
少女の額に手を当て、魔力を探っていく。
…特に多くはないが、魔力は感じられる。枯渇はしていないようだ。疲れているのだろう。自然に目を覚ますのを待つしかない。
仕方がない。暖炉の前に藁を敷いて寝るか。
羊用の寝藁を小屋の裏の家畜小屋から一抱え持ち、台所に敷く。
…初めてここに来た時はその辺の落ち葉やら草を刈って集めて寝床にしたものだ。一晩くらいなんてことはない。
◇◇◇
少女を拾って2日目。
まだ目を覚まさない。
一人で暮らす小屋に、人を入れたのは初めてだ。
それも子供とはいえ、女。
落ち着かない。
俺も女との経験が無いわけではないが、この数年、この小屋で一人で暮らしている。
俺を利用しようとすり寄ってくる女にはうんざりだったし、貴族の令嬢たちの作り笑いや香水の匂いは身震いがするほど嫌いだ。鬱憤が溜まれば魔物を狩って晴らせばいい。ここにはいくらでも魔物がいる。
朝食を食べ、寝室へ行く。
スツールに座って眠る少女を眺める。
怪我がないか調べるために背中を触ったが、それは治療目的だ。
とりあえず自分が持っている中で一番こぎれいなシャツを着せたが、多少肌を見たのは致し方なかった。
…柔らかくて真っ白な肌をしていた。しみひとつないすべすべした柔らかい…。
……!何を考えているんだ!相手は子供じゃないか。
いや、言い訳をする必要もない。助けてやったんだからな。
……下着…。新しいものなんてない。俺のを履かせる訳にはいかんからな。
眠る少女の顔にかかる髪を指で流す。
まっすぐな長い白銀の髪、金色の長いまつ毛、薄いピンクの唇、白く柔らかい頬。眼の色はどんなだろうか。翠ならこの銀髪といい女神リーアデールのようだろう。
美と愛の女神リーアデール……。
大人になったらさぞ美人になるだろう。
柔らかそうな淡いピンク色の唇へ指を伸ばしかけ、手を止める。
……目が覚めたら、一度街へ降りて着るものを調達するか。家族の元へ帰すにしても裸っていうわけにはいくまい。そうだな、そうしよう。
立ち上がり、すやすやと眠る少女を残し部屋を後にした。
お読みいただきありがとうございました。
ノアは純朴な20代の男の子です。
女神リーアデールはこの世界の美と愛の女神様で、広く信仰されています。銀髪に緑色の目の女神様として描かれます。




