【初配信】カミっちチャンネル開設!!
どこか神秘的な雰囲気を醸す楕円形の壺、テディベア並びに何かのマスコットを模した彫刻、様々な素材で作られたと推測できる剣、それらが複数並ぶ棚を背に1人の人物が佇む。
「どうもー!はじめまして、カミっちです!カミっちは配信者としていろんなことに挑戦していく予定ですが、工作や実験が好きなのでそれを楽しんでいる姿を見てもらえたらなぁ、と思っています!どうぞよろしく!!」
カミっちを名乗る中性的で美しい顔立ちの人物は手を前に突き出し、足の短い机から身を乗り出して挨拶をする。
「今回はカミっちの記念すべき初投稿ということでなんと!」
(ドン)
カミっちがそこで言葉を区切ると太鼓の音が1回鳴る。
「なんと!!」
(ドドン)
同様に言葉を区切ると太鼓の音が2回鳴る。
「『やってみた系企画』豪華3本立てでーす!!!」
(パララパッパパー)
(パチパチパチパチ)
拍手の音とラッパの音が鳴る。
「そして!最初の企画は〜」
カミっちが両手を前にかざす。
「はっ!」
突如机の上に赤を基調としたデザインのカップ焼きそばが現れる。
「ほいっ!!」
同様に湯気が立つやかんが現れる。
「せやー!!!」
同様に砂時計が現れる。
「はい!"激辛焼きそば食べてみた"です!イェーイ!」
(バ〜〜ン)
ドラの音が鳴る。
「それでは早速作っていきましょう!」
カミっちはカップ焼きそばの包装を破って容器を取り出し、ふたを3分の1程開いてソースとかやくをを取り出す。
「かやくを入れまーす」
カミっちがかやくを容器に入れる。
「お湯を入れまーす」
カミっちが容器の中にお湯を注ぐ。
「3分待ちまーす」
カミっちが砂時計を反対にする。
「3分飛ばしまーす」
砂時計の砂が全て落ちる。
「お湯を捨ててきまーす」
カミっちが部屋から出る。
「捨ててきましたー」
カミっちが部屋に戻ってくる。
「ソースを入れてきまーす…….うわっ、なんか赤い……」
カミっちは容器にソースを入れ、ソースの色に少し驚く。
「あとは混ぜて………完成でーす!!」
(パララパッパパー)
カミっちが混ぜたカップ焼きそばをカメラに向けると、ラッパの音が鳴る。
「では早速食べていきます!!」
(カーン)
ゴングの音が鳴る。
「……実はカミっち、辛いの苦手なんですよね……うわっ、今なんか肌がひりついた気がする……水準備しとこ……」
カミっちは麺に顔を近づけると顔をしかめ、容器の横に手のひらを向ける。するとその先に透明なコップと銀色の光沢のあるポットが現れる。
「じゃ、じゃあ、3、2、1でいきます」
カミっちはそう言い、麺を睨め付ける。
「3、2、1っ……あーやっぱ無理ぃ!」
カミっちは箸を置き、体をそらせて上を見上げる。
「いや、ほんとすいません……次こそっ、次こそは絶対いくんで」
カミっちは再度麺を持ち上げ顔に近づける。
「では、いきます!3、2、い、ち……かっっっらぁあああああああああ!?」
カミっちは麺を食べるとそのあまりの辛さに口から火を吹く。
「み、水!水をっ!!」
カミっちはコップに水を注がず、ポットから直接口の中に水を流し込む。
「ひぃ、ひぃ……君たちはなんてもの作ってんのさ……壁ちょっと焦げちゃったよ……」
カミっちが若干潤んだ目を座らせてぼやく。
「ちょっとリアクションを誇張しようと思っただけなのに散々だよ……罰が当たったのかなぁ?」
カミっちが項垂れながらそう言って首を傾げる。
「………」
カミっちがチラリとカップ焼きそばを見る。
「まぁ…そのぉ……残りの麺は後から美味しくいただきます……あ、そうそう」
カミっちはカップ焼きそばを画面の外に置き、話題を逸らそす。
「この配信はアーカイブ残すつもりです………だからなんだって話ですよね、ホントすいません!あれはちょっと作戦を練って時間をかけないと完食無理そうなんでもう次いきます!」
カミっちが強引に次の企画に移る。
「次の企画は"スライム作ってみた"です!!」
カミっちが2つ目の企画を発表する。
「まず準備するのは、材料を混ぜるためのボウルとへらです!今回は抱きしめられるくらいのサイズのスライムを作る予定なのでボウルは大きめのものを用意します!」
カミっちはどこからともなく拳ほどの大きさの巾着袋を取り出すとその中からボウルとへらを取り出す。
「次に水と洗濯のりです!これがスライムの本体になります!水はさっきのポットの水を使おうと思います!このポットはこの巾着袋と同じく容量に限りがないので足りなくなる心配はありません!ちなみに巾着袋は取り出しパターンのマンネリ対策です!」
カミっちが巾着袋から洗濯のりを取り出す。
「次に魂です!これでスライムに命を込めます!」
カミっちが巾着袋から白いモヤの様なものを取り出す。
「最後に粉末状の魔石です!これを混ぜると魔法が使えるスライムになります!」
カミっちが巾着袋から鮮やかな光沢のある黒い粉を取り出す。
「では作って行きましょう!ではまず最初に水と洗濯のりを1対1の割合でボウルに入れて混ぜていきまーす」
カミっちが水と洗濯のりを混ぜる。
「次に粉末状の魔石を入れていきまーす」
カミっちが粉末状の魔石もボウルに入れて混ぜる。
「最後にに魂を入れてあげれば………完成でーす!」
カミっちがボウルの中に魂を入れると先程までドロドロだったはずの液体がゼリー状になり形を維持できる様になる。
「ボウルから取り出して……わー!かわいいー!さぁおいで、ってばかっ」
カミっちがボウルからスライムを取り出すと突然スライムが電撃を飛ばしそれが後ろの棚に当たる。
「うわあああ!やばいやばいやばい、あ、それはマジでまずい!……お…危な………れ……フか……っと……衝……い………も」
ー現在この端末にインターネットに接続されていませんー
*
「……い、おーい、あっ、つかながった?」
カミっちが画面に向かって手を振る。
「そのー、みなさん大丈夫でした?え?原因不明の電波障害?あ、それは大変でしたねぇ、こっちはそのあいだにスライムをちょっと改造しておきました」
カミっちの膝の上にスライムが乗っている。
「スライムの魂に"自身はモンスターマスターを目指すカミっちのパートナーで互いに切磋琢磨し、辛い時は支え合いながら前に進み只今、カミっちの巧みな回避指示もあって3人目のジムリーダーを突破"って記憶を植え付けたから無闇に攻撃はしません!最高のスライム……いや、最高の相棒ができました!」
カミっちは体をよじ登ってきたスライムを肩にのせて親指を立てる。
「では最後の企画に移ろうと思います!あ、その前にごめんスラ太郎、ちょっとあっちで待っててねー」
カミっちがスライムを画面の外に置く
「……あ、それは食べちゃダメ、スラ太郎ちょっと待っ……」
部屋にスライムの破片と赤黒い色をした麺が飛び散る
「…… あっ、スラ太郎は大丈夫です。魂はバックアップもあるし体もすぐ作れるんで……。最後の企画は部屋が汚れるからあらかじめ準備をする予定だったけどもう掃除しないといけないくらい散らかってしまったのでこのまま最後の企画にいきます!」
カミっちは少しやけくそ気味で進行を続ける。
「最後の企画は"メントスコーラに挑戦してみた"です!!」
カミっちが最後の企画を発表する。
「もちろんただのメントスコーラじゃありません!使うのは……よいしょっ………はいっ!この壺と……ほいっ!この"繧ケ繝医Φ繝。"です!」
カミっちは後ろの棚から慎重に壺を持ってきて机に置き、力強く握った拳の中から白い円板状の物質を取り出す。
「この壺の中にはなんと、皆さんのいる宇宙が入っています!そしてその中にこの"繧ケ繝医Φ繝。"を入れると壺の中のダークマターと反応して急激に膨張するというわけです!」
カミっちが実験の概要を説明する。
「では、いきます!」
カミっちが壺の蓋を開け、その上に"繧ケ繝医Φ繝。"を構える。
「3!2!1!ーーーー」
カミっちが"繧ケ繝医Φ繝。"から手を離す。
*
「えー、皆さんに残念なお知らせが2つあります」
カミっちがカメラの前で姿勢を正す。
「まず1つ目はダークマターと"繧ケ繝医Φ繝。"の反応についてなんですが、壺の容量がポットや巾着袋と同様に限りないため絵面がとても地味になってしまいました……」
カミっちが1つ目のお知らせをする。
「次に2つ目なんですが、ダークマターと"繧ケ繝医Φ繝。"が反応した時点で地球上の文明が滅んでしまうため反応の瞬間が放送できませんでした。本当に申し訳ございません……」
カミっちが2つ目のお知らせをして深々と頭を下げる。
「……はい?あぁ、なぜ地球が滅んだのにこの動画が視聴できてるかというと……えー、なんて説明したらいいだろう?」
カミっちが視聴者にもわかるような説明を考える。
「じゃあ、"皆さんのいるその世界が5分前にできた"と言ったらわかります?………あ、よかった!そうです、皆さんの言うところの世界5分前仮説みたいな感じです!まぁ、バックアップは取ってありましたからね!スラ太郎と同じ要領です!ね〜、スラ太郎〜」
画面の外からスラ太郎が飛び跳ねてカミっちの肩にのる。
「というわけで今回の動画は以上になります!」
カミっちが動画の締めを始める。
「あ、描写はもういいよ」
「え?あぁ、そっちの世界には関係ない話なんで気にしなくて大丈夫です!」
「今回、初めて動画を投稿しましたがカミっちとしてはなかなか良かったのではないかなぁと思います!………色々失敗しちゃったけど」
「もしよろしければ、高評価、チャンネル登録のほうをよろしくお願いします!」
「では、皆さん!さよーならー」