7.同乗
「私の馬車に乗ってどこか行かないか、って言いました?」
キラキラ美青年はため息をついた。
「王都へ行くのなら私の馬車に乗って行かないか、と言ったんだ」
何、この人。身なりはいいけど、本当は人買い商人とかじゃないよね。
「さっき初めて会った私たちに、どうして、そんな提案をしてくれるのかわかりませんが」
本当は喉から手が出るくらいOKしたいのよ。
でも、この人の事知らないし。
「私も王都へ帰るところだし、馬車には私1人だから、君たちが同乗しても問題ないよ。
それに先ほどは私の従者が失礼をしたし」
罪滅ぼし、罪滅ぼしなんですね。
もう、笑みが隠せない。
「それじゃ、王都までよろしくお願いします」
アリスが横で心配そうに見ているけど、親指を立て合図する。
キラキラ美青年は、それではこちらへと言って、商会の裏手に停めてあった馬車に案内してくれた。
家紋が付いていない普通の馬車だ。
やはりこの人、商人かな。
アリスと二人で、人さまの馬車に乗り込む。
外見は普通だったけど、中はすごーく豪華。
座席絹張りだし、キラキラだし、クッションふかふかだし。
ん、この人、何者?
馬車が動き出すと、キラキラ美青年が話しかけてきた。
「自己紹介もまだだったね。
私はマティス、マティス・クレメント。
王都で仕事をしている。よろしく」
「私はルナでこちらがアリス。(心の)姉妹です。王都へ仕事を探しに行きます」
ウソはついてない。
「アリスさんがお姉さんでルナさんが妹さんかな?
さっきはアリスさんがルナさんをお嬢様と呼んでいたけど」
冷や汗どばーーーーーーー。
「可愛い妹なのでお嬢様と呼んでいます」
アリスがナイスフォロー。
グッジョブ、アリス。
「ふーん、
で、二人の姓は?」
あっ、これまだ考えてなかった。
「サン、サンです」
「サン?」
「はい、ルナ・サンです。だから紛らわしいので、ルナ、アリスと呼び捨てで結構です」
アリスの肩が震えている。堪えろーーー。
「じゃあ、私もマティスでいいよ」
「あの、マティスは商人ですか?
それとも貴族?」
クレメントなんて貴族名聞いたことないけど、王国の貴族なんて掃いて捨てるほどいるからね。
「うーん、まぁ、どっちもかな」
曖昧だけど、まっいいか。
どうせ王都に着くまでの縁だし。
あー、でも一応念押し。
「あの、マティス、私たち姉妹、実はワケありで。家族に虐待されていたので逃げて来たんです。だから、私たちを乗せた事はここだけの話にして頂けるとありがたいのですけど」
ちょっと令嬢モードでお願いしてみる。
「それは構わないけど、大丈夫なの?」
「多分」
あのユナが簡単に諦めるとは思えないけど、
上手く王都に隠れるしかない。
「それで王都では何の仕事につくつもり?」
質問大魔王だな、この人。
「それは、秘密です」
マティスがニヤリと笑うので、ちょっとムキになってしまう。
「変な職業想像したでしょ。違うから」
マティスが私の顔をジッと見つめる。
恥ずかしいから、ヤメテ。
「もし、その魔法の力を使おうと言うなら、
相談に乗るよ。というか、それほどの力があるなら、私の庇護が無いと危険だと思うよ」
はい?
何でこの人、私の魔法の事知ってるの?
何かヤバイことになっちゃた?